お嬢様になるべく全寮制の女子高校に入学した主人公が、同級生の憧れの的である女性の秘密を偶然知ってしまい、一度は断った格闘ゲームへ再びのめり込んでいくお嬢様格ゲーコメディ。深月綾は庶民ながらとある事情でお嬢様を目指すべく、全寮制の黒美女子学院に特待生として入学した。お嬢様ばかりの空間に慣れず四苦八苦していた綾は、ある日史料室で禁止されている格ゲーに勤しむ同級生の憧れの存在、白百合様の姿を目撃してしまう。誰にも話さないと約束した綾だったが、白百合様から熱い視線を向けられるのだった。
格ゲーというジャンルにおいて、女性のプレイヤーが断然多いというわけではない。格ゲーはキャラクターを操作するためには決められたコマンドを瞬時に入力するなど、的確な状況判断と正確な操作が要求される。操作性が高いゲームを得意とするプレイヤー自体、数が多いわけではない。そもそもゲームに馴染みのなさそうなお嬢様ともなると、格ゲーは遠い世界のように思える。ところが、お嬢様学校で生粋の格ゲーマーが出会ってしまった。綾は一般家庭で育った生粋の庶民だが、白百合様こと夜絵美緒は容姿も立ち居振る舞いも生粋のお嬢様がごとき人物である。だが、そこには年相応の格ゲーマー少女が居るだけで、皆が憧れるお嬢様の姿はない。夢中になれるものがある時、瞳の輝きは増すものだ。格ゲーをするお嬢様たちの瞳も、きらきらと光り輝いている。
日本初のプロ・ゲーマーとなった梅原大吾を主人公に、格闘ゲームにのめり込み頂点を目指していく格ゲーマーたちの格ゲー青春物語。ヌキこと大貫晋也は格ゲーのセンスに優れており、仲間内や身近なゲームセンターでは負けなし状態。遊びとして嗜んでいたヌキだったが、とある大会でウメハラこと梅原大吾と対戦して負けてしまう。遊び仲間と共にウメハラ対策を講じ二度目の戦いに挑んだヌキだったが、そこでも大敗を喫したことで、格ゲーに対して本気になっていくのだった。
eスポーツとは、コンピューターゲームを使用したスポーツ競技である。ゲームと言えばインドアという印象が強いが、動体視力や反射神経が優れていなければ勝てないものもある。身体を最大限に使用するわけではないが、人間の能力の限界に挑戦しているわけだ。eスポーツは主に海外で盛んで、近年日本でも注目度が上がっている。梅原大吾は実在する格ゲーマーであり、日本で初めてのプロ・ゲーマーだ。2010年に「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス認定されるなど、逸話に事欠かない。本作はそんなウメハラを主人公に、様々な格ゲーマーたちが登場する。熱い戦いはもちろんだが、格ゲー好きにたまらないのは、実在する格闘ゲームが登場するところだろう。プレイしたことがない人でもキャラクターが戦う姿とプレイヤーの真剣な表情に引き込まれてしまう。格ゲーマーたちの青春には、静かだけれど熱いものが秘められている。
1990年代の対戦型格闘ゲームを軸に、ライバルとなった格ゲーマー少年少女の戦いと成長を描いた格闘ゲームラブコメディ。1991年、社会に混乱が起きる中「豪指のハルオ」と自称し格闘ゲームの実力を誇っていた小学6年生、矢口春雄は得意とするゲームで7連敗を喫してしまった。春雄を負かした相手を見ると、そこにはクラスメイトのお嬢様・大野晶(おおのあきら)の姿が。自身のプライドを傷つけ、居場所を荒らされたと感じた春雄は、格闘ゲームにおけるタブーを駆使し、晶に勝負を挑むのだった。2018年、2019年にテレビアニメ化。
対戦型格闘ゲームは1984年に誕生したが、ブームのきっかけとなったのは1991年に登場したカプコンのゲーム『ストリートファイターⅡ』だ。詳しくなくてもタイトルや、登場キャラクターの名前を見聞きしたことがあるだろう。多くのゲームファンをゲームセンターに釘付けにし、後の格ゲー作品の基本となっている。物語の始まりは1991年、まさしく『ストⅡ』が大流行していた時期だ。主人公の春雄は、小学校では「盛り場」としてゲームセンターへの入店が禁止されているため、隣町までわざわざ遠征にやってきている。そこでクラスメイトの晶に大敗を喫する。春雄はゲーム内でも禁じ手と言われる技を駆使し、なんとか価値をもぎ取ろうとするのだが、勉強や運動で劣等感を感じる春雄が、唯一得意とするゲームでの勝利にこだわる姿は決してスマートではない。それでも、反則スレスレでも勝ちたいと、人間を勝利に貪欲にさせるそんな力が格ゲーにはあるのだろう。
主人公がプロ・ゲーマーを目指す少女と仲良くなり、格闘ゲームをしながら自身やゲームというものに向き合っていく青春物語。高校に入学したばかりの主人公・揺篭みのるは、格闘家の父から引退の前に家族でラスベガスに引っ越そうと言い出され困惑していた。日本での自分の生活を捨てられないと悩んでいたところ、下校途中、偶然同じ学校の制服を着た少女がビルの地下に下りていく姿を目撃し、反射的に後を追う。その先にはゲームセンターがあるのだった。
みのるはおっとりとして控えめな性格の持ち主で、ゲーマーでもオタクでもない。偶然見かけた同じ学校の少女、四条の後を追ってゲームセンターに入るのだが、子どもの時以来一人で入ったのは初めて。そんな彼女を魅了したのが、eゲームの大会映像だ。画面に登場するのは作中のオリジナル格ゲーだが、人々が熱狂する姿は現実のものと変わらない。勝利を収めたのは女性で、みのるは格ゲーの「女性でも男性に勝てる」というところに興味を持った。格闘家の父を見ていれば、女性と男性の体格や力の差を理解できるし、勝てないものであるという認識も刷り込まれるだろう。けれど格ゲーの魅力は、プレイヤーの性別に左右されないところだ。四条はプロ・ゲーマーを目指しているが、みのるは全くの初心者。格ゲーの基本を描いているので、初心者にもわかりやすい。
天才ピアニストの少年が、偶然見た動画をきっかけに対戦型格闘ゲームの存在を知り引き込まれていく成長物語。天才ピアニストとして注目を集めていた森宮フランソワは、演奏会の途中で指を負傷しピアノが弾けなくなってしまう。音楽漬けの日々を送ってきたため、日常生活に無気力になっていたフランソワだったが、ある日動画サイトに自分そっくりな顔のキャラクターが出てくる格ゲー映像を発見する。それがゲームだと突き止めたフランソワは、ゲームセンターへ赴くのだった。
格ゲーは主にボタンとレバー操作で技を繰り出す。プロのゲーマーになるとどう操作しているのか目視することすら難しく、スポーツと捉えられるのも納得するだろう。主人公のフランソワことフランは元々ピアニストであり、ピアノも鍵盤の上を縦横無尽に指が走る。技巧を凝らした曲など指がどの鍵盤を押さえているのかわからないこともあるから、そういった意味では格ゲーマーとなる素養はあったのだろう。初挑戦でゲーマーをうならせるほどの技を繰り出せるのだから、意外な才能が開花したともいえる。本作に登場するゲームは一風変わっており、プレイヤーの顔をスキャンし、自分自身がゲームのキャラクターとなることができる。自分で自分を操作するというのはなかなか奇妙な体験だが、ハードな運動や試合をしなくても、誰よりも強くなったような錯覚に陥るだろう。実用されるか云々はさておき、ゲーム自体の魅力の一つとなるのは間違いない。