貧しい世界で出会った明るい少女と無垢な殺し屋の青年の物語。その世界は金持ちの住む「街」と貧しいながらも活気溢れる「畑」、食糧も資材もあるがまともな人間が暮らしていない「森」に分かれていた。「畑」で母と食堂を切り盛りする高岡キヨコは、ある日手に蜘蛛の入れ墨をした青年の小辰と出会う。小辰は「森」から来た殺し屋だった。
本作は「街」「畑」「森」に分かれた独特の世界。中でも「森」は資材の面では豊かであるが、まともな人間は暮らしていない。だがキヨコは「森」の人間と取引があったり、彼らがキヨコの店の常連だったりと繋がりはある。「森」に存在する荒磯精肉店で雇われ店長をしている中田もそのひとりで、彼がキヨコに食事の世話を頼んだ青年が小辰であった。小辰は蜘蛛の入れ墨をした「よるくも」と呼ばれる殺し屋。しかし彼は一般的な教育を受けておらず、痛覚がない。森では子どもが人体実験用に「虫」として売られ、生き残った子を中田が組織のために育てていた。小辰も「虫」であり、中田から守り神として「蜘蛛」の入れ墨と「よるくも」の名を授かったのだった。
美少女の姿をした蜘蛛の神と、その従者となった男子高校生が活躍するホラーバトル。男子高校生の神田太郎は幼い頃、大きな蜘蛛を埋葬したことがあった。だがその蜘蛛は、蜘蛛の神である「南久阿」の従者で、太郎は自覚なくその宿主となっていた。ある日、太郎の前に南久阿が現れ、彼が「太郎丸」の宿主になったこと、そのために南久阿と共に日本を脅かす「渡来神」との戦う運命にあることを告げるのだった。
本作は筆者の代表作『怪物王女』に登場した蜘蛛の神である南久阿を主人公にしたスピンオフ作品。普段の南久阿はセーラー服姿の女子中学生。だがその正体は古より生きる蜘蛛の神で、神の姿となる時は長い黒髪が蜘蛛の足のように変化する。彼女の敵は日本乗っ取りを計画する侵略者「渡来神」だ。渡来神は日本の神たちに憑依し、神を「荒神」へと変貌させ天変地異を起こさせてしまう。南久阿の従者だった巨大蜘蛛の太郎丸は戦いで瀕死となったところを幼い頃の神田太郎に発見され、太郎丸を死んでいると思った彼は土に埋めて弔った。それがきっかけで太郎丸の力と魂が太郎に宿ったのである。太郎は仲間の獣人の銀子と共に、南久阿の元で渡来神と戦うことになるのだった。
京極夏彦によるミステリー小説『百鬼夜行シリーズ』のコミカライズ作品。戦後まもない東京を連続殺人事件「目潰し魔」が騒がせる中で、聖ベルナール女学院の生徒である呉美由紀と渡辺小夜子は、復讐のために学園内で噂される「呪い」を追っていた。そこで彼女たちは悪魔「蜘蛛」と、それを崇拝する「蜘蛛の僕」の存在を知る。
『百鬼夜行シリーズ』は、古書店の店主兼拝み屋である「京極堂」こと中禅寺秋彦を主役に、怪奇入り混じる事件の顛末を描くシリーズで、本作は原作の第5弾をコミカライズした作品だ。物語の始まりの舞台となるのは千葉の某所にある名門、聖ベルナール女学院。そこで、世を騒がせる連続殺人鬼「目潰し魔」に学院の女性教師が両目をえぐられて殺害される事件が起きる。生徒たちの間ではその事件が学院の七不思議「黒い聖母」と「蜘蛛」の呪いによるものだと噂が広まり、それを機に次々と陰惨な殺人事件が相次いでいく。京極堂は事件に巻き込まれた知人の依頼を受けて、学院と地元の名家「織作家」に絡みつき、事件の中心で糸を引く「蜘蛛」の正体を暴きだす。
馬場翁が原作を手掛ける人気ライトノベルのコミカライズ作品。人間と魔族が争う異世界で強大な魔法が放たれ、その影響は次元を超えてとある高校の教室を吹き飛ばした。その場にいた者の多くが異世界で人間に転生する中、ひとりの女子高生が「蜘蛛」のモンスターに転生してしまった。メンタルの強い彼女は過酷な世界を生き延びるために知恵を使い、スキルを磨いて成長していく。
主人公の「私」は家庭内や学校でも孤立気味の女子高生。そんな彼女が異世界にダンジョン内に生息する蜘蛛のモンスターとして転生してしまう。しかもその個体はとても貧弱で、ダンジョン内では次々と強いモンスターの捕食対象として狙われる。だが、そんな過酷な状況の中、彼女は生き延びるという目標のために必死の試行錯誤を繰り返していく。同じ時期に産まれたきょうだい蜘蛛や、襲ってくるモンスターを倒し、どんなにまずくても食べてレベルアップ。さらに糸を使って自らの住まいであり、敵を仕留めるための巣を作り上げていくのだった。だが、そんな巣も強敵によって破られてしまうことも。だが彼女は持ち前のスキルとタフな精神で乗り越えていくのだった。
マーベル・コミック『スパイダーマン』の日本版アレンジ&翻訳作品。科学者を目指すごく普通の高校生だった小森ユウは、放射能制御装置の実験中に蜘蛛に噛まれ、特殊な能力に目覚める。自作した様々なアイテムとコスチュームを着用し、正義のヒーロー「スパイダーマン」として活動する。だがそんな彼は人間社会の生み出す闇に身も心ものまれていく。
本作は劇画作家・池上遼一によるマーベル・コミック『スパイダーマン』の翻訳作品で、日本版としてストーリーに大幅なアレンジが加えられている。原作となるアメリカ版の主人公は「ピーター・パーカー」という高校生だが、本作の主人公は日本の音羽高校に通う青年の小森ユウ。原作と共通するヴィラン(悪役)として、「エレクトロ」や「ミステリオ」といった面々が登場するが、こちらも設定には多くの独自要素が盛り込まれている。各話のストーリーは人の心や社会の闇に焦点を当てたシリアスな展開が中心。ユウがスパイダーマンとして活動する中で、民衆や社会から過剰な責務を求められたり、暴言を浴びせられたりして苦悩する場面も多い。やがて彼は、ヒーローという存在の理不尽さに絶望していく。