左目の上に切り傷のある素性も年齢も経歴不明のマスターを主人公に、夜中12時から営業する深夜食堂に集う個性豊かな人々が巻き起こす様々な人間模様を描いた人情系ヒューマンストーリー漫画。夜の帳が下り、遅くまで働いた人々が家路に就く時刻になると、新宿の裏通りに店を構えるめしやの看板に灯がともる。「深夜食堂」と呼ばれるその店の定番は豚汁定食だけだが、材料さえあれば、マスターが望む料理を何でも作ってくれる。2009年にはじめてテレビドラマ化、2015年に実写映画化、2016年web配信ドラマ化。
「めしや」とだけ書かれたのれんがかかったその店の営業時間は、深夜12時から朝の7時頃まで。今の店主が先代から20年前に譲り受けたその店は年中無休。「そんな時間に客が来るのか」と思う輩は多いが、「勝手に注文してくれれば、何でも作るよ」主義のマスターを慕う客で店は毎夜賑わっている。日頃は寡黙なマスターだが、正義感が強く理不尽なことが大嫌いだ。古客の剣崎竜が弟分のゲンと初めて店を訪れた時には「エスカルゴを作れ」と無茶ぶりをしたゲンに包丁で立ち向かおうとしたこともある。竜の注文した料理のおかげでその場は何とか収まり、その件があった後に竜はマスターの気心の知れた友人となった。一話完結のショートストーリー形式であり「赤ウインナーと卵焼き」や「ナポリタン」などマスターの作るどこか懐かしく心和む料理に客たちは舌鼓をうちながら、互いの身の上話に花を咲かせるのであった。
夜しか存在しない暗闇の世界を舞台に、夜とは真逆の存在があることを信じる少年が「朝」を求めてモンスターたちと戦いを繰り広げながら旅を続けていくSFフアドベンチャー漫画。どこまで行っても闇夜しかない世界で、アナグは「それがあれば夜が終わり、ランプよりも明るい光がどこにでも溢れる」という言葉を信じて旅を続けていた。暗闇の向こうに微かな灯りを見つけて歩み寄ろうとしたアナグの前に、巨大なモンスターのウデヘビが現れる。
「こいつ、すごい力だ」、ウデヘビと死闘を続けていたアナグは、危ないところを遺物を操る少女に救われる。「こんな所に一人でいちゃダメ! この辺りはウデヘビの縄張りなんだから」ティオと名乗る少女は狩人であり、アナグが見た光は彼女の持つ遺物から出たものだった。この世界には先人たちが遺したと言われる遺物が数多く存在し、その遺物からはランプの火の灯りとは異なる青白い光が放たれるのだった。アナグは旅をしながら旧世界や遺物について調べていたが、火の神を崇めるこの世界の人々たちにとって自分の手で作り出したモノではない遺物は「悪魔の道具」として忌み嫌われていた。遺物や旧世界についての知識を持つアナグに興味を抱いたティオは、自分の師匠であるラドガの元に連れていく。
頭に魚の缶詰を載せた野良猫が心の中で泣いている人々を探しながら、雨の日も風の日も雪の日も毎夜毎夜パトロールを続けるハートフルヒューマン8コマ漫画。「重郎、ここが岩手のイギリス海岸だ」「そら まっくろ」「だから星がたくさん見えるのだ」半纏を身にまとった大きな灰色猫の遠藤平蔵は、子猫の重郎を懐に入れて今宵も涙する人々を求めて夜廻りをする。平蔵は涙の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚が非常に優れていて、表情には出さない人の心の涙に敏感に反応するのだ。
「泣く子はいねが~今日も泣いてる子はいねが~」夜の街をパトロールしていた平蔵が反応したのは、自宅でブリ大根を煮ていた老婦人。「おまいさん、なぜ泣く」と尋ねた平蔵に彼女は「え? ブリ大根煮てただけよ」と答えた。ブリ大根をご馳走になった平蔵は余りの美味しさに「こんな んめえもの初めてだ~」と叫ぶ。それを見た彼女は「ありがと。50年ぶりにほめられたわ」と微笑んだ。平蔵には寂しさを抱えた彼女の心の涙が見えていたのだ。平蔵は悩みを抱えた人々にアドバイスをするわけでも、励ますわけでもない。ただ、そっと傍に寄り添うだけである。作者がツイッターに掲載したことで「平蔵の温かさに心癒やされる」と話題となり、書籍化された人気作品である。
睡魔の誘惑と闘いながら勉強を続ける女子高生と、彼女を何とか眠らせようと頑張る睡魔の少年とのコミカルでラブリーな日常を描いた学園ラブコメディ漫画。白石菜月(なつき)の両親はともに大学教授で姉もK大首席のエリート。菜月も高校で生徒会長を務め、成績もトップで先生や生徒たちから羨望の眼差しで見られていた。しかし、彼女がその成績を維持するために日夜どんな努力を重ねているのかを誰も知らない。テスト前日、菜月は睡魔と必死で闘いながら、徹夜で勉強をしているのだ。
菜月がいつもの通り睡魔と闘いながら勉強をしていると「辛いでしょう。苦しいでしょう。眠れば楽になれますよ」とどこからか優しい声が聞こえてきた。「まだ、眠るわけにはいかないんだ」。菜月が身体を起こした瞬間、後ろに一人の少年が現れた。睡魔の少年コディである。睡魔とは人を眠りに誘う悪魔。彼の使命は疲れているのに眠れない人や眠れないで困っている人に自然で優しい眠りを届けることだ。コディは「このままでは病気になってしまう」と心配するが、周囲の期待を裏切れない菜月は彼の意見を受け入れることが出来ない。すると「この手は努力を重ねた手。僕はこの手が大好きです」と菜月の手をぎゅっと握りしめるコディ。彼の可愛さと優しさにキュンキュンしてしまった菜月は興奮して逆に眠れなくなってしまうのだった。
些細な理由から不登校になってしまった中学生の男子が、夜中の散歩中に出会った吸血鬼の美少女の眷属になるために奮闘するホラー系ラブストーリー漫画。中学2年生の夜守(やもり)コウは同級生の女子からの告白を断ったことで他の女子から責められ、何もかもが面倒で嫌になり不登校になる。学校に行かないことで運動不足になったコウは不眠症になってしまい、夜中の散歩に出ることに。ネットの情報で不眠が酒で解消できると知ったコウは、公園にある自販機で酒を購入しようとする。
震える手で自販機ボタンを押そうとしたコウに、突然黒いフードを被った少女が「あれ? 君いくつ? ハタチ過ぎている様には見えないけどなぁ」と話しかけてきた。慌てて逃げようとしたコウに少女は「お前、眠れないんじゃないか?」と尋ね、「あたしが君を助けてやろう」と提案してきた。「人が夜更かしをする原因は、今日という日に満足していないからだ」と語る少女はコウに「夜は自由な時間だ。自分を解放しろ」とアドバイスする。女性嫌いのコウは一緒にいて嫌な気持ちにならない女がいることに驚き、そのまま七草ナズナと名乗る少女の家に行くことに。眠れない人間の相談に乗って悩みを解決してやりたいと願うナズナと添い寝することになったコウだったが、突如豹変したナズナに血を吸われてしまう。