孤独な殺し屋が可憐な女子高校生に純な恋心を募らせる姿を描いたハートフルギャグコメディ漫画。コードネーム「S」の名で殺し屋として暗躍している正太郎は、天涯孤独であるため任務を遂行するだけの日々を送っていた。しかし、ターゲットである女子高生・古川綺利(きり)の純粋さと可愛さに惚れて、彼女のボディガードへと転身。住み込みで働くことになった正太郎は、同じ屋根の下で綺利にときめく日々を送ることとなる。殺し屋が暴力団組長の一人娘と運命的に出会ったことで人生が色付いていくさまを描く。
本作はギャグ作品でありながら、主人公の正太郎とヒロインの綺利の恋模様というラブコメ要素もふんだんに盛り込まれており、恋愛漫画好きの人も十分楽しめる構成になっている。正太郎は赤ん坊の頃に物騒な組織に拾われ、愛情らしい愛情を知らずに育ってきた。しかし、ターゲットである古川綺利に一目惚れし、彼の人生は温かなものへと変わっていく。関東随一の暴力団「悪井代組」(わるいよぐみ)の組長の一人娘である綺利は命を狙われやすい立場にある。そのため正太郎は常に周囲に目を光らせ、四六時中彼女を守らねばならない。正太郎は殺し屋としての腕は超一流でも、恋愛感情に関しては全くの素人。初めて知る感情に翻弄される正太郎の姿に、ほんわかとした気持ちにさせられることだろう。
元OLがひょんなことから殺し屋を生業にして、日々を過ごしていく痛快ギャグ漫画。ブラック企業でOLとして働いていた西野カナコは、日々の残業やパワハラ上司に心底疲れ果てていた。限界を感じ、転職しようと受けた会社はまさかの殺し屋企業。殺し屋として何の訓練も受けてこなかったカナコだったが、意外にも適性があり、面接と入社テストを見事クリア。意図せず殺し屋になったはずが、OLとして働いていた時よりも遥かに待遇が良い殺し屋生活にカナコはハマっていくのだった。
殺し屋と聞くと男性のイメージが強いが、本作の主人公の殺し屋は元OLのカナコ。最初は殺し屋仲間から信用されず、邪魔者扱いされていたが、カナコは天性の才能を発揮し、殺し屋として徐々に周囲に存在感を示していく。ピンチに見える場面でも胸中では「ムリムリムリムリカタツムリ」などシュールなギャグを炸裂させており、余裕が感じられる。基本的に楽観主義者のカナコは、ブラック企業でOLとして心を殺して生きていくよりも、人の道を外れてでも雇用的には待遇の良い殺し屋の仕事で生きていく方が向いていたのかも知れない。カナコが天職を得て楽しげに生きている姿に、仕事で疲れている社会人の読者はパワーがもらえるはずだ。
暗殺組織に属しながらも、心優しい性格で殺し屋に向いていない男を中心に描いたギャグ4コマ漫画。善人で寡黙なジョージは殺しの依頼を受けてもいつも失敗ばかり。上司から厄介者扱いされ、謎のパンダやうさぎなどの刺客から命を狙われるようになってしまう。敵からの手裏剣や罠、とばっちりで割と大きなダメージを負ったとしても、意外と心身共にタフなジョージはどんなピンチも乗り越え、逞しく生きていくのだった。
本作はへなちょこの殺し屋のジョージを主体とした、ゆるふわな雰囲気を醸し出しているギャグコメディ作品だ。ジョージは動物好きで心優しく、非情に徹することを求められる殺し屋には向いていない。寡黙でほとんど台詞がないジョージの具体的な想いを知ることは難しいが、表情は豊かで感情が顔に出やすいタイプだ。胴が異常に長い胴長パンダ、忍者の格好をした忍者うさぎなど、愉快な姿の動物たちが登場するものの、実は彼らはジョージに向けられた刺客で、解りやすい罠を仕掛けてくる。可愛らしい絵柄とは対照的に、殺し屋を主体とした物騒なストーリーが展開されるというギャップも本作の魅力といえる。読み進める内に、不憫なジョージを応援したくなることだろう。
老紳士のような殺し屋とそのターゲットのやり取りを描いたコメディ漫画。殺し屋のヤシロは、ターゲットに対して直筆で手紙をおくり、殺しに行くことを事前に伝えるスタイルの殺し屋。入院中の少年、凶悪犯、ゆるキャラ好きの将軍など、ターゲットがどんな相手であろうとも自分のスタイルを貫き通している。そんなヤシロを追うのは文武両道で優秀な刑事・麻田真友(まだまとも)。礼儀正しい殺し屋ヤシロとターゲットが手紙を通じて交流を深めていく様子が描かれている。
本作の主人公であるヤシロは、高齢ながら腕の立つベテランで、ナイフでターゲットを瞬殺できる超一流の殺し屋だ。普通であれば殺し屋が打ち合わせするとなれば依頼主や上司だけだろうが、ヤシロが綿密に連絡を取り合っているのは殺す相手であるターゲット。意外とターゲットと心が通じ合うこともあり、ほのぼのとした文通に発展することもあるが、結局は殺しに行くことを前提としているため、関係性は複雑といえるだろう。そんなヤシロのライバルともいえる存在なのが、刑事の麻田だ。護衛していた八手(やって)市議をヤシロに殺され、ヤシロを捕まえることに執念を抱くようになる。殺す側と殺される側の、奇跡のような命のやり取りを描いた深みのあるコメディ作品だ。
「殺し」がつく依頼にこだわりを持つ殺し屋の日常を描いたギャグ漫画。主人公の佐々木竜一は、ホストのような風貌のイケメンの殺し屋。確かな腕を持つ超一流の殺し屋だが、「ねずみ殺し」「スズメバチ殺し」など人以外を対象にした殺しの依頼でも引き受けるため、近所では便利屋のように扱われている。クールなようでシュールな殺し屋の日常を、殺し屋に敵意を向けている女子高校生絡みの下ネタも織り交ぜながら描かれている。2013年にテレビアニメ化。
竜一は殺し屋としての腕は良いものの、思考回路が残念な青年。周囲からは「殺し屋さん」と呼ばれて親しまれ、害虫駆除から安楽死まで何でも引き受ける、憎めないキャラだ。依頼については「殺すこと」を絶対条件としており、逆に依頼以外ではプライベートでもゴキブリすら殺さないという徹底ぶり。女子高校生の台詞を「父の仇」から「乳の仇」へと脳内変換してしまうなど、勝手に勘違いをしてダメージを受けることも多々あり、弟子の少年がツッコミ役に回っている。クールな見た目に反してどこか抜けている竜一の周囲は賑やかで、イケメン好きの人にもギャグ作品が好きな人にもオススメしたい一冊だ。