月夜に忍ぶ!? 忍者漫画特集41 Pt.

「中秋の名月」という言葉もあるように、秋は月見の季節。そんな秋の月夜に相応しいのは、忍者たち。今回は、色んな意味で「忍ぶ者」である忍者を扱った漫画を紹介していこう。

「月夜に忍ぶ忍者」という言葉がもっとも相応しいキャラクター、それがカムイだ。「変移抜刀霞斬り」「飯綱落し」などの必殺忍術を駆使し、巧みな変装術で老若男女を問わず、様々な身分の人間に成りすます。まさに忍者の代名詞的な存在であり、本作が創り上げた忍者像は、後進の忍者漫画に大きな影響を与えている。「隠月」「他心通」「春花の術」など、恐るべき忍術を繰りだす刺客たちを相手にした、技と知恵の限りを尽くした死闘も読み応え満点だ。なお、カムイが登場する作品としては『カムイ伝』が先となるが、こちらはカムイが直接絡まないエピソードも多い。カムイの活躍を存分に楽しみたいなら、本作『カムイ外伝』の方が好適といえる。

主人公・あずみは、物心がつく前から厳しい武術鍛練にあけ暮れ、兄弟同然に育った仲間同士で、命をかけた壮絶な戦いをしいられるなど、凄絶極まる試練を経て一人前と認められた、生ける殺戮兵器だ。厳密には「忍者」ではないが、時代の陰に生きることを宿命づけられたあずみは、「忍ぶ者」という言葉に相応しい存在だろう。徳川幕府が治める天下太平の世を実現するため、育ての親・小幡月斎の指示の下、あずみは危険な暗殺任務を次々とこなしていく。だが、大阪城であずみの素性が知られて、囚われの身となったことをきっかけに、彼女の心には大きな疑念が目覚めることとなる。友を殺してまでなぜ生きるのか。自らの生きる意味を問うとき、あずみはどんな結論を出すのか、ぜひ自らの目で確かめてみてほしい。

本作に登場する忍者は、驚異の忍術を駆使する異能の超人集団だ。まるで骨がないかのように、手足を自在に伸縮させる小豆蠟斎。首をはねられても死なない、不死身の薬師寺天膳。相手の殺意をはね返し、死に至らしめる恐るべき「瞳術」の使い手である弦之介。忍者たちの能力は、人間離れしたレベルにあった。作画・せがわまさきの画力も相まって、彼らの戦いは見る者を圧倒する迫力に満ちている。そんな彼らは「月夜に忍ぶ」という表現からは、かけ離れた存在だ。しかし、主の命令とあれば、愛する者とさえ命を賭して戦わねばならない。その過酷な宿命は、やはり「忍ぶ者」。複雑な想いを抱えた、弦之介と朧の恋の結末を、ぜひ見届けてほしい。

本作の忍者は、主人公の千鳥だ。女忍者ではあるが、いわゆる「くノ一」のように女を武器にするタイプではない。小柄で子どものような外見ながら、その武力は超人的。武闘派揃いで知られる織田家中の武将たちですら、彼女の力には舌を巻くほどだ。本作の特徴のひとつは、主人公は千鳥であるものの、彼女よりも信長を含めた武将たちや、織田家中の面々が引き立てられている点にある。彼女の目を通じて、武将たちの知られざる一面や歴史の秘話などが、面白おかしく語られている。千鳥は狂言回しに近い立ち位置といえる。そういう意味では、主役なのに「忍ぶ者」といっても良いのかも知れない。

本作における忍者の「くノ一」は、色気を武器に男を籠絡するというテクニックに長けた、特殊な存在だ。「紅学園」は、そんなくノ一を養成するための学園である。男子禁制で、生徒だけでなく教師たちも全員女性。しかし、主人公・イチは、男としてはかなり小柄で、筋肉も少ない。しかも女性と見まがう美少年だったため、どうにか男と気づかれずに学園への潜入に成功する。つまり、男であることを「忍ぶ者」というわけだ。イチが周囲の人間に気付かれないかどうか、ドキドキしながらその行く末を見守りたくなる作品だ。続編に『クノイチノイチ!ノ弐』がある。