闇金融を経営し、どんな相手でもどこまででも取り立てにいく執念と手腕を持つ主人公が、支払いを逃れようとする客たちと戦いを繰り広げる経済オムニバスストーリー。坂上竜一は大阪のミナミでチンピラをしていた。ある日、兄貴分が代金を踏み倒そうとしたお客を殴り倒している現場に、萬田銀次郎がやってくる。銀次郎は暴力を止めると、お客に不足分の金を貸すと申し出るのだった。1992年より発売されているVシネマ版や1992年にはじめて実写映画化されるなど、メディアミクス多数。
「10日で1割利子が付く」高利の代名詞とも言うべき言葉で、「トイチ」と略されることも多い。トイチは違法であるうえ返済が困難だ。だがトイチであっても、借りる瞬間は地獄に仏と感じる人も少なくないだろう。冷静に考えれば危険だとわかるのだが、お客のほとんどが切羽詰まった状態だ。作中に登場する、飲酒代金を払えずチンピラに追いかけられたサラリーマンは、命の危機と金を借りることを強制的に秤にかけられて後者を選んでいる。明らかに冷静ではない、判断力が低下している場面を狙って契約を持ち掛けるのも、銀次郎の高利貸しとしての手腕なのだろう。お金を貸す瞬間の銀次郎は、思わず縋りつきたくなるほど気前が良く優しい。お金のことで悩んでいるとき、絶対に街中で出会いたくない存在だ。
超暴利闇金を舞台に、従業員と客の人間模様と社会の闇を描く社会派ヒューマンドラマ。金融会社「カウカウファイナンス」は、10日で5割という超暴利の闇金。高田は入社初日に「奴隷くん」と呼ばれるパチンコ依存症の主婦たちに遭遇する。その中の1人の返済が滞り、売春を強要したことから客に同情してしまう髙田だったが、丑嶋は、客を人間だと思うなと言い放つのだった。2010年にテレビドラマ化、2012年8月に実写映画が公開されるなど、映像化多数。
「カウカウファイナンス」は高利を通り越して超暴利な闇金である。10日で5割の利子が付く「トゴ」を基本に、パチンコ依存症である「奴隷くん」と呼ばれる主婦向けには1日3割の「ヒサン」でお金を貸している。社長の丑嶋の語る利息回収システムは、債務者からお金をむしり取ることを前提としたものだ。お金がある安心感を得られるのは一瞬で、待っているのは急速に膨らむ利息という地獄である。しかも、利用者はすでに街金融からも見放された多重債務者が多いという。さらなる闇へ落ちるさまを見せつけられるのは辛い。しかし、金融会社は慈善事業ではない。社会の闇には必ずお金が絡む。身近にある生活に必要なものでありながら、人を狂わすものであることを実感せずにはいられない。
中堅の消費者金融に転職し、支店長を任されることになった元エリート銀行員が、ノルマに追われ苦悩しながらも仕事に取り組んでいくお仕事ヒューマンドラマ。高木誠は銀行員だったが、中堅どころの消費者金融「ハッピーサポート」へ転職。入社半年で貸付、回収ともに成績が悪化している三本橋駅前支店長を任されることになる。成績を回復できなければ、高木に待っているのは降格。上司の矢のような催促の中、家族の日常を守るため、仕事に励むのだった。
消費者金融は、個人に向けて小口融資を行う貸金業者である。テレビCMが流れていることもあってかどこか身近な存在だ。高木が勤務する「ハッピーサポート」は、上場を狙っている中堅の消費者金融。闇金が暴利と違法行為で利益を出しているのに対し、法律を守って営業している街の消費者金融は利息だけで利益を出すのではなく、リピートしてもらうことで利益を増やすのだ。必要になるのは、丁寧で物腰の柔らかい接客と無理な返済にならないよう、サポートすることだろう。実際、返済が滞っている相手を脅すといった行為は禁止されているらしい。借りたものを返すのは当然だが経済的に苦しいからこそお金を借り、結果返済が滞る。金融会社社員の電話をかける苦悩に満ちた表情に、回収する側も辛いのだと胸が痛くなった。
消費者金融に加え、高利の金融業者に手を出した借金苦にあえぐバーテンダーの主人公が、窮地に陥りながらも道を切り開いていく成り上がり物語。服部常次朗(つねじろう)は雑居ビルの一角でバーを経営する24歳。しかし売り上げは思わしくなく、借金は膨らむばかり。街の消費者金融にも見放された常次朗は、毎日集金が訪れる高利の「日掛け屋」を利用する。しかし、日々の支払いに加え母親の入院費用の工面にも苦労する常次朗は、風俗の営業を考えるのだった。2006年7月に映画が公開された。
高利である日掛け屋は毎日集金に訪れる。日々の売り上げはその支払いでほぼ消えてしまう。加えて街の消費者金融へ利息を払っても元金は全然へらず、消費者金融を食わせるために働いているわけではない、と常次朗が憤る場面がある。常次朗のように、簡単に借りられるからこそ、返済地獄に陥るという例は少なくないだろう。身につまされるが、常次朗は搾取されるだけでは終わらない。見習うべきはメンタルの強さとバイタリティである。
名前を捨てた凄腕の魔術士が、仲間と共に旅をしながら過去と向き合い、大陸の運命を左右する事件に巻き込まれていく冒険ファンタジー。キエサルヒマ大陸南西部、トトカンタ市の宿屋で非合法の金貸し業を営む青年・オーフェンは、実は凄腕の魔術士。ある日客の1人であるボルカンに儲け話があると言われ、無理やり富豪の屋敷へ連れていかれる。そこで知らされたのは、その家の娘マリアベルとのお見合いだった。原作は秋田禎信の同名ライトノベル。1998年、2020年のテレビアニメ化他メディアミクス多数。
ファンタジー作品の中でも、金貸しキャラクターが登場することがある。つまりファンタジーであっても、貸金業は存在しているのだ。主人公の魔術士・オーフェンは宿屋で貸金業を営んでいる。三白眼の鋭い目つきに、取り立てが厳しそうだと想像してしまうが、回収できなければ意味はない。ゼロどころかマイナスである。実際のところ、あまり儲かってはいないようなのだ。理由は様々だが、オーフェンにとっては不幸が重なり、客にとっては幸運が重なった結果である。正直、足を洗った方が生活は安定しそうなのだが、そうもいかないらしい。オーフェンに借金があるボルカンは、富豪相手に結婚詐欺を行うという儲け話を持ってきた。完全に犯罪だが、乗っからないだけオーフェンは常識人だといえる。本業は貸金業ではないが、プラスに戻れるよう、温かく見守ろう。