とある少年を保護したことから、巨大組織との闘いに巻き込まれる男の生き様を描いたサイバーパンク・アクション。大戦をきっかけにのし上がった大企業・べリューレン社の「身体機能拡張技術」で、身体の一部が機械化された「拡張者(エクステンド)」と生身の人間が共存する時代。主人公・乾十三(いぬいじゅうぞう)もまた頭部がリボルバーと化した拡張者であるが、ある日彼の元に瀕死の少年が運ばれてくる。2019年・2020年にテレビアニメ化。
十三はその規格外の強さを武器に、暴走した拡張者を取り締まる「処理屋」として生計を立てていた。そんな彼の元に、傷だらけの少年を抱えた拡張者の男が突然現れ彼を預かってほしいと懇願する。少年はなんと行方不明になっていたべリューレン社CEOの息子・荒吐鉄朗(あらはばきてつろう)であり、社の実験体として虐待を受けていた。鉄朗は一旦は追っ手の元に渡るが、十三は再度闘いを挑み奪還することに成功。意識を取り戻した哲朗と相棒の技術者・メアリー・シュタインベルグと共に、べリューレン社と敵対することになる。闘いを通じて、十三の隠された過去や拡張者の謎が明かされてゆく展開は、スピード感に溢れ最後まで飽きさせない。十三をはじめ個性的な風貌の拡張者たちのバトルも見どころだ。
ごく普通の女子高生がひょんなことからサイボーグとなり、悪の組織と闘うアクション・ラブコメディ。主人公・各務藍(かがみあい)は、ルックスも良く異性にモテモテだが血の気が多いのがたまにキズの女子高生だ。ある日藍は、学校の帰りに交通事故に遭い即死状態となる。意識を取り戻した彼女が目覚めると、全裸でとあるマンションの一室に寝かされていた。藍は彼女を起こしにきたイケメン・狭霧屋凌(さぎりやしのぐ)を問いただすが、凌から重大な事実を知らされる。
彼は藍にビデオテープを見せる。そこに映っていたのは「ミスターX」なる謎の男であった。ミスターX曰く、自分たちは法で裁けない犯罪を取り締まる「特殊秘密警察機構」だとのこと。瀕死の彼女を大抜擢し、身体中に改造を施し「正義の味方」として生まれ変わらせたのだ。彼らの目的は世界征服を企む悪の組織「黒とかげ(ブラック・リザード)」の壊滅だった当初は反発する藍であったが運命には逆らえず闘うことに。バディを組む凌との間にも恋心が芽生えるが、彼は重大な秘密を抱えていた。正義感の強い藍と、イケメンだがスケベな凌の迷コンビぶりにクスリと笑わせられる。コメディタッチな前半とシリアスな後半との対比も小気味よく、安心して読み進められる一冊だ。
サイボーグと化した最強ビジネスマンが行く先々で奇跡を起こす、ビジネス・バトルアクション。主人公・山崎宅郎はNEO=SYSTEM社の派遣社員だ。しかし彼は、ただの派遣社員ではない。ある日山崎は、とある中堅スーパー・ワイワイマート社に「部長代理」の肩書きで入社する。入社するなり彼は、態度のなっていない若手社員を一喝。パソコン4台を操るマルチタスクと柔軟なアイディアで会社の業績をV字回復させるが、実は山崎には重大な秘密があった。
山崎はコンビニに似た形態のストアを次々と出店することにより、売上をアップさせる。しかし、ライバル企業・エックス・チェーン社の佐藤によって襲撃を受ける。なんと、彼らは機械の身体を持つ「企業戦士」だったのだ。激しい闘いの末山崎は佐藤を倒し、再び次の派遣先へと向かう。山崎の正体は、3年末に過労死したビジネスマン・尾崎達郎がサイボーグ化し復活した姿であった。妻子を残し、闘う企業戦士として功績を上げる彼であったが、すでに寿命が近づいていた。本作は平成バブル末期に描かれたこともあり、男女雇用格差や過労死などの社会問題が取り沙汰された世相をよく表している。作内で彼が提案したアイディア商品の中には現在販売されているものも多く、作者の慧眼にも驚かされる。
サイボーグとなった黒猫が、ガトリングガンを片手に所狭しと街を駆けめぐるドタバタ・バトルコメディ。雑種の黒猫・クロはフジ井家の老夫婦の元で飼われ、強盗などから家を守るボディガードとして暮らしていた。ある日クロは、近所に住む片思いのメス犬・プーリィに告白するため家を出る。道中クロは、どこからか放たれた大量の矢に刺され、プーリィもまた重傷を負う。瀕死の彼が目覚めた時、その身体はメタルボディと化していた。1999年にテレビアニメ化。
クロは兼ねてから彼に目をつけていた天才悪徳科学者・ドクター剛(ゴー)こと剛万太郎に捕まり、サイボーグとして改造されていた。世界征服を企むという彼にクロは激昂。腹に埋め込まれたガトリングガンをぶっ放す。クロは猫のぬいぐるみを被り命からがら逃亡するが、ドクター剛たちもまた彼を追ってさまざまな攻撃を仕掛ける。フジ井家の元へ戻ったクロだったが、ドクター剛や同じサイボーグ猫で永遠のライバルであるミー、クロを慕う人間たちを巻き込みハチャメチャなバトルを繰り広げるのであった。本作は、疾走感に溢れ破壊も辞さないバトルシーンが迫力満点だ。ギャグを織り交ぜつつも、悲惨なクロの生い立ちなどシリアスな展開も多く少年漫画のスケールを超えて楽しむことができる。
自我を持たない「鋼の人形」となった少女が、弟と共に人生を取り戻すため逃避行するSFバトルアクション。世は軍事大国・シュワルが猛威を振るう時代。場末の賭場は、自我を失いサイボーグ化された人間たちが闘う「闘犬(ドッグ・ファイト)」の見物に興じる者で溢れていた。そこにフラリと現れたのは、場にそぐわぬ少女・橘小夜子であった。警察の抜き打ち捜査が入り彼女は店の外へ逃げ出すが、更なる刺客が小夜子に襲い掛かるのであった。
小夜子を襲撃したのは、巨大軍事企業「アルビオン」の幹部・ヴェルター・マルセイユの手下であった。小夜子は銃弾を避け、半端ない力で次々と追っ手を殺害してゆく。彼女の正体は、闘犬で無類の強さを誇るも、自我を取り戻し逃亡した「白の13番」であった。このままでは脳が腐敗し1週間で死が迫る小夜子は、弟・橘建(たける)と共に医療艇「プロキオン」に乗り込み逃亡を続ける中で、生き延びる方法を模索してゆく。なぜ小夜子が脳だけが生かされた殺人マシーンとなったのか、姉弟に課せられた過酷な運命に心が痛む。しかし、戦闘を通じて出会った仲間たちの絆や淡い恋の描写もあり、小夜子がひとりの女性として人生を取り戻してゆくさまは感動必至だ。