高校受験に全て落ちた主人公がスパイ学校に入学し、エージェントとしての資質に目覚めていくスパイアクション。主人公・明石エイトは、受験した覚えのない中野高校から「特待生枠で合格した」との通知を受けて入学式に出席する。謎の少女・城戸あやめから、この学校が「エージェント(諜報員)を養成するためのスパイ学校」と聞き、いったんは入学を辞退した。しかし、校長・アララギから、亡くなった父親が元エリートエージェントだったことを知らされ、謎の多かった父親のことを知るために中野高校への入学を決意する。
世界中を飛び回っていたエイトの父親・明石閑真(しずま)は、自分がエージェントであることを家族に隠していた。そのため、亡くなった時も、仕事先での事故死として処理されていた。幼かったエイトに当時の記憶はほとんどないが、いつも温和な父親が、息子に危害を加えようとしたヤクザを一瞬で叩きのめした衝撃的な風景がいまだに脳裏に焼き付いていた。この記憶こそが、彼をスパイ学園に入学させたモチベーションとも言える。閑真の生き様を知りたい気持ちが日に日に募るエイト。エージェントとしての自覚を強めていくと共に、父親のエージェントナンバーが008(マルマルハチ)号だったと知り、自分に「エイト」と名付けたその思いに胸を熱くする。
社会主義国家だった旧ソ連と資本主義国家が対立していたスパイ全盛期時代を舞台に描かれた、少女漫画の枠を超えたスパイコメディ。時は、東西冷戦時代。金髪で容姿端麗な美術窃盗団「怪盗エロイカ」ことドリアン・レッド・グローリア伯爵、NATO軍事情報局に所属し、冷静沈着な硬派ぶりから「鉄のクラウス」の別名を持つ「エーベルバッハ少佐」、KGB所属のロシア敏腕エージェントこと「仔熊のミーシャ」。この3人を軸に、怪盗とスパイたちが、時に命を懸けて戦い、時に利害関係で繋がり合いながら攻防を繰り広げていく。
本作に登場するスパイは、スキンヘッドに黒いサングラス姿で、屈強な肉体を持つミーシャだ。東西冷戦という特殊な時代背景の下、彼には「エーベルバッハ少佐暗殺」という極秘任務が課される。一方、最初こそ少佐と対立関係にあったエロイカだが、次第に少佐に魅かれていく。少佐と手を組んで行動を共にするばかりか、時には嫉妬心から任務妨害に走る時も。しかし意外にも、連載当初の主人公は16歳の少女だった。だが、少佐の登場によって、少女漫画の枠を超えたスパイアクション作品へと変貌を遂げ、多くの男性ファンも獲得。魅力的な登場人物が多いことから「スピンオフ作品」も生まれている。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を代表作に持つ作者・秋本治が送る痛快スパイギャグコメディ。繰巣陣(くりすじん)は、国家特別工作機関(JST)に所属する超A級エージェントだったが、任務遂行中に瀕死の重傷を負い再起不能となった。命の灯が消えそうだった彼は、国家機関の手によって、同日の同時刻に亡くなった女性テニスプレーヤーの身体に脳移植される。こうして繰巣は、「心は男、身体は女」である「セクシー女スパイ・クリス」として甦る。
国家予算20億円を投じて育て上げられた繰巣は、36カ国の言語に堪能で、戦闘能力も超一流のトップスパイ。プレイボーイとしても鳴らしていたが、トラックと正面衝突して「女スパイ・クリス」に生まれ変わってからは、周囲からオカマ呼ばわりされたり、事情を知らない男たちから告白されたりと踏んだり蹴ったりの日々。一刻も早く男に戻りたいと思っているが、女スパイとしての活躍を望むJSTの局長からのらりくらりとかわされ、止むを得ずイタリアやギリシャなど世界を股に掛けた任務を遂行していく。実は、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のコミック背表紙や本編にも登場している本作。「セクシー女スパイ・クリス」と「両さん」こと両津勘吉(りょうつかんきち)の絡みも必見だ。
世界に通用するスパイ養成機関を創設し、「魔王」と呼ばれた謎の男を巡るスパイミステリー。昭和初期の日本陸軍内部に、世界と対等に渡り合うべく創設された特殊諜報部員養成機関の名は「D機関」。いわゆるスパイ養成所で、互いの素性を知らない民間人の訓練生を秘密裡に入学させ、スパイ教育と諜報活動を行っていた。しかし、陸軍の軍人たちは、自分たちを差し置いて民間人のみを採用するD機関が気に入らない。そこで、内部情報を探るべく、佐久間陸軍中尉を連絡係として派遣する。
50代半ばの無表情な鬼教官・結城中佐が、スパイ養成所「D機関」の創設者だ。かつては、「魔王」の異名を持ち、国際政治を闇で操っていた凄腕諜報員だった。しかし、敵国に潜入した際、仲間の裏切りによって捕まり、スパイ容疑者として拷問を受け、杖なしでは歩けない身体になる。陸軍から派遣された佐久間は、結城初めて会った時、その放たれる威圧感に圧倒され言葉を失う。また、陸軍のスパイとして派遣されたことも見抜かれていた。それに畳み掛けるように、案内役の三好少尉から、D機関では、軍人が重んじる「仲間」や「信頼」の通念は価値がないばかりか命とりになると告げられ困惑するばかり。そんなD機関で育成されたスパイたちが、世界の裏側での活動を開始する。
さまざまな惑星に人類が移住するようになった23世紀の未来を舞台に、特殊能力を持った女諜報部員が、相棒の黒猫と活躍するSFスパイコメディ。連合政府に所属する女性特殊諜報部員エイプリル・イーナスには、一風変わった能力がある。それは、「自分の周囲では、自然死を除いて人が死なない」というものだ。しかし、病気やケガを治すといったヒーリング能力や、危険を回避できる予知能力ではないため、周囲からは「無駄な能力」と評価されていた。
時は、恒星間移動が可能な時代となった2269年。かつて地球上で行われていたような列強国同士の勢力争いが激化する中、中立の姿勢を示す惑星・リスボンは、観光惑星として栄えると同時に、各国のスパイたちによる諜報活動の最前線となっていた。そんなせめぎ合いの中で、地球連合政府所属の女スパイ・イーナスは、「中立的立場の諜報活動」と称して、ある屋敷にメイドとして潜入。「周囲の人間が死なない」という自らの特殊能力を駆使して、他人を巻き込んだ危険な任務に挑む。一見すると、キス魔の女スパイ・イーナスが主人公のコメディタッチである本作。しかし、「宇宙にはコピーされた地球が存在する」というパラレルワールド的なSF要素も存分に詰め込まれた、シリアスなテーマをまとう作品でもある。