精神科を舞台に、心の病気に深く切り込む医療ストーリー漫画。元OLの新人看護師である夜野さんは、統合失調症をはじめとする様々な精神疾患を患った人々の声に耳を傾け、時に悩み苦しみながら、目には見えない心の痛みと向き合っていく。
主人公の夜野さんは、OLから転身した精神科の新人看護師。ある時、彼女は、先輩ナースである橘さんと一緒に、「虫が家に入ってくる」という妄想を訴える林さんの訪問介護におもむいた。当初は彼の妄想に戸惑う夜野さんだが、彼の世界を受け入れ、虫駆除のお手伝いをしていくうちに、林さんの心の内側を聞かせてもらえるようになる。そして夜野さんは、林さんの先が見えない将来への不安が、虫の症状として現れたのかもしれないと考えるのだった。おなじ「心の病気」と言っても、ひとりひとりがそれぞれの切実さを持ち、一般化できない「痛み」を抱えていることを温かみのある優しいタッチで描きだしている。
心療内科や精神科の症例を解説する異色の医療ギャグ漫画。ゆうメンタルクリニックで臨床心理士として勤務する心内療と、看護師の官越あすなは、超個性的な面々とともに「心の病気」を一話完結型で、わかりやすく取り上げていく。
もし自分が「心の病気」かもしれないと疑いを抱いても、心療内科や精神科にかかるべきなのかわからずに、受診を躊躇してしまう人がいるかもしれない。そんな時、心療内科の症例を親しみやすいギャグ漫画の形式で解説する本作は、とても頼もしくて実用的だ。主人公である心内療は、適応障害・うつ病・ED・社会不安障害といったテーマを、真面目にわかりやすく説明する。ところが、助手である看護師の官越あすなは、その説明に対し肩の力が抜けるような絶え間ないボケを連発。過度な不安を煽ることなく、軽い気持ちで「心の病気」を知ることができる医療漫画だ。
精神科を専門とするクリニックを舞台にした医療ストーリー漫画。主人公の弱井幸之助は、精神科が特別なところとして遠ざけられており、先進国でも最悪レベルの自殺率に苦しむ日本の現状を変えたいと願う精神科医。彼は誰にも言えない精神疾患に悩む患者の心を包み込むように、クリニックを訪れるひとりひとりと向き合っていく。
本作の大きな特徴は、まさか自分が「心の病気」と関係するとは思ってなかった患者たちの不安や怖れ、そして快復までの過程を丁寧に描きだしているところだ。雑誌編集者の北野薫子は、徹夜で仕事をこなす超多忙な日々を送っていたが、ある日突然呼吸困難に陥り電車で倒れてしまう。原因不明の症状に不安を抱いた彼女が訪れたのが、弱井幸之助の新宿ひだまりクリニックだった。弱井は彼女の不安に寄り添いながら、その症状がパニック障害であると伝える。その病名を知った北野は、つきものが落ちたように安心した笑顔でクリニックをあとにするのだった。精神科は特別な場所ではなく、心が辛くなりすぎる前にもっと気軽に訪れていい場所というメッセージを伝える作品だ。
うつ病をテーマにしたドキュメンタリー漫画。うつ病脱出に成功した人々に、自分自身もうつの経験者である本書の著者がインタビュー。大槻ケンヂ、宮内悠介、内田樹などの有名人から、編集者、OLなど多彩な顔ぶれが登場する。
本作で描かれる「心の病気」はうつ病。著者である田中圭一は、手塚治虫風の絵柄で下ネタギャグを展開することで知られる漫画家だ。彼は2000年代に入ってから、10年近くもうつ病に悩まされてきたという。営業成績の不振から自己嫌悪に陥り、絶え間なく押し寄せる不安感や、脳が「濁った寒天」に包まれたような無感動といった症状に苦しむ。そんな「うつトンネル」をさまよう彼の光明となったのは、ある一冊の本だった。本に載っていた、朝目覚めた時に自分を褒める方法を試してみたところ彼のうつ病は少しずつ快方へと向かう。田中をはじめ様々な人の「うつヌケ」体験を知ることができる、心の不調を感じた時に一読をおすすめしたい作品だ。
うつ病をテーマにしたノンフィクション・エッセイ漫画。漫画家である細川貂々の夫は、勤め先の大幅な人員整理で激務に駆られたことが原因となり、うつ病を発症してしまう。そんな夫の1年半にわたる闘病生活が、妻の手によってかわいらしく読みやすいタッチで描かれる。
誰もが一度は耳にしたことがある、代表的な精神疾患「うつ病」。身近なようでいて、漠然としたイメージから誤解されがちなうつ病の実態を、かわいい絵柄で読みやすく仕上げたエッセイ漫画が本作だ。細川貂々の夫はもともと明るいプラス思考の持ち主で、どうして夫がうつ病になったのかと、貂々は疑問を抱いていた。だが調べてみると、うつ病は精神的に弱い人がなる気持ちの問題ではなく、精神伝達物質セロトニンの減少を原因として誰でもなりうる「心の病気」なのだと知る。うつ病が「なまけているだけ」という誤解に気づく話や、焦りは禁物の治療生活、憂鬱に感染しない気分の変え方など、身近な人がうつ病になったときの心得がぎっしり詰まった一冊だ。