カッコイイ飛行機が描かれる漫画
105 Pt.

昔から飛行機を操縦するパイロットは、子どもたちの憧れの職業の１つ。最先端テクノロジーの塊である戦闘機は、恐ろしい兵器であるが、ある種の美しさに満ちている。今回はそんな飛行機が活躍する漫画をピックアップ。

本作の舞台は、中東地域にある架空の国家・アスラン王国。この国では、国王兄弟の確執により、激しい内戦が繰り広げられている。親友の裏切りで傭兵部隊の一員となった主人公・風間真が配属されたのは、作戦地区名「エリア88」と呼ばれる戦争の最前線だ。彼はこの地で、傭兵部隊の戦闘機パイロットとして、明日をも知れない戦いの日々を送ることとなる。本作の特徴の1つは、登場する戦闘機がバラエティ豊かなこと。通常の戦闘機部隊は、任務毎に機種が統一されている。ところが真の所属する部隊では、傭兵個人が自分の好みで戦闘機を購入する。そのため、部隊にはメーカーばかりか、生産国すら異なる多彩な戦闘機が配備されている。真が駆る機種も、F-8Eクルセイダー、F-5EタイガーII、クフィール、サーブ35ドラケンと、実に様々だ。そんな本作は、まさに飛行機が活躍する漫画の筆頭格だ。

本作の舞台は、現代の日本をモデルにした世界だが、大きな違いが1つある。それは、自家用飛行機が現代日本よりもずっと一般的な乗り物で、女子高校生が通学手段に用いている点だ。その感覚は、現代のバイクに近い。実際、本作には暴走族のような「不良飛行団」も登場する。ちなみに女子高校生たちが通学に使っているのは、第二次大戦中に使用された戦闘機が中心だ。彼女たちは各校毎に、戦闘機部隊を編制。自由に通学できる飛行経路を確保するため、互いの制空権を巡って争っている。主人公・羽衣マキは、田舎育ちで、中学時代から飛行機で通学していた。そしてマキは、いつしか「飛行機と対話する能力」を身につける。そんなマキが、口は悪いが頼もしい相棒である戦闘機・紫電改と共に、制空権争いに身を投じていく。実にユニークな設定の飛行機が活躍する漫画だ。

物語は、主人公・坂上陸が、航空自衛隊の飛行準備課程に入るところから幕を開ける。準備課程はA、B、Cの3班に別れており、陸はC班所属。A・B班は、防衛大学出身者で固められたエリートコース。一方、C班は、高校卒業後に航空学生（航学）として学んだ者と、4年制の一般大学出身者の寄り合い所帯。階級も、航学組は3等空曹だが、大卒組は3等空尉とバラバラだ。ちなみに陸は航学組で、共に学んだ大安菜緒、村田光次郎とは良きライバルだ。しかし、大卒組の1人である笹木隆之は、陸たちをあからさまに格下扱い。C班はスタートから波乱含みだ。そんな環境で、座学は苦手だが天性の飛行適性を持つ陸は、次第に頭角を現していく。リアルに徹した物語は読み応え十分。飛行機の活躍と共に、主人公・陸の成長ぶりを堪能して欲しい。

本作の主人公・佐々木友次は、陸軍初の特攻隊「万朶隊」の唯一の生き残りである。彼は何と、特攻に9回出撃しながら生還した男なのだ。物語は、彼の生い立ちから始まる。そして「万朶隊」結成の経緯や、参謀本部の決定に抗おうとした現場の名操縦士・竹下少佐、岩本大尉らの苦悩といった、当時の情勢を詳細に描いていく。飛行機を愛した佐々木友次は、誰よりも熱心に訓練に打ち込んだ。その結果、彼は「キンギョ」という通称で知られる九九式双発爆撃機を、自由自在に操れるようになる。その感覚を、友次は「自分が飛行機になった感じで、なんでもできる気がする」と、語っている。飛行機と一体化した感覚を持つ佐々木友次の物語は、まさに飛行機が活躍する漫画だ。

本作の主人公・ナオミ・オブライエンが駆るMiG-29は、旧ソビエト連邦で開発・製造された戦闘機だ。「ファルクラム」という名称で呼ばれることもあるが、これはソ連ではなく、対抗勢力である北大西洋条約機構が付けたコードネームである。多くの創作では、主人公が乗る戦闘機は、米国を始めとする西側勢力の機体がほとんどだ。そして敵側の機体の筆頭となるのが、ナオミが駆るMiG-29を含む、ソ連のMigシリーズである。実在の戦闘機を用いる作品は、東西対立の構図を基本とするものが主流。そして、日本が西側に属することを考えれば、この形はある意味当然といえる。本作は、東側の飛行機が主人公の愛機として活躍する珍しい漫画だ。主人公が大罪人で、刑期を減らすために戦うという設定を含めて、興味深い切り口の作品である。