詐欺師を相手に詐欺を働く「クロサギ」の活躍を描いた、クライム・サスペンス。主人公・黒崎高志郎は、父が詐欺被害に遭って起こした一家無理心中事件で、唯一生き残った青年である。彼は復讐のため、詐欺師を喰らう詐欺師「クロサギ」となる。2006年テレビドラマ化、2008年に劇場映画化。
本作では、世の中には三種の詐欺師がいると説く。人を騙し、金銭を巻き上げる詐欺師・白鷺。異性を餌とする結婚詐欺師・赤鷺。そして一般人を喰らわず、白鷺と赤鷺のみを餌とする最凶の詐欺師・黒鷺。主人公・黒崎高志郎は、詐欺師への復讐のためクロサギとなった男だ。黒崎はあるときは真面目な新人営業マン、またあるときは切れ者の弁護士、はたまた頭の弱い金持ちのボンボンと、巧みな話術と演技で身分を偽り、騙しのプロである詐欺師たちを手玉に取っていく。財団融資詐欺、霊感商法詐欺、ODA還流資金詐欺といったターゲットである詐欺師の分野に応じて、詳細なリサーチと共にワナを仕掛ける手際は、まさに最凶の詐欺師である。数々の詐欺師を喰い続けた黒崎は、やがて自分の父親を嵌めたシロサギと巡り会う。黒崎の復讐の行方だけでなく、正義感の強い一般女性との恋愛模様や同じクロサギであるライバルの登場、黒崎を執拗に追う刑事の存在など、様々なドラマが展開されるのも本作の魅力だ。
天才詐欺師が中学の教師として辣腕を揮う姿を描く、ユニークなヒューマン・ドラマ。主人公・矢沢悠は、社会的地位の高い高額所得者ばかりをターゲットにしてきた超一流の詐欺師。彼は神の導きのような偶然により、市立中学校の担任教師となることに。教壇に立った彼は、脳天に響く「衝撃的授業(ハンマーセッション)」で、問題児たちを次々と生まれ変わらせていく。2010年にテレビドラマ化。
本作の主人公・矢沢悠は、優れた観察眼と巧みな話術を併せ持つ、超一流の詐欺師である。彼は、刑務所への護送中に発生した事故に乗じて逃走。逃げ込んだ中学校・光学園で、偶然放火の現場に居合わせ、これを食い止める。放火犯はなんと、始業式を控えた新任の教師・蜂須賀悟郎。校長・坂本亨は、不祥事の隠蔽を画策。その場で披露された矢沢の話術に感銘を受けた坂本は、彼が詐欺師であることを承知の上で、教壇に立つことを依頼する。かくして、矢沢は蜂須賀悟郎の名を騙り、3年B組の担任となる。彼は詐欺師特有の直観力を用い、問題を抱える生徒たちの心を読み解き、型破りな手法で更正させていく。やがて、蜂須賀こと矢沢の行う「衝撃的授業(ハンマーセッション)」は、生徒のみならず、学園の在り方そのものを変革することとなる。
物語の中心となるのは1980年代、ロサンゼルスのパームビーチ。元医者で私立探偵のカーター・オーガス、彼の助手で超天才のジェームス・ブライアン、そしてカーターの親戚で芸術家肌の青年・アンディ・ウォレス。数奇な運命で結ばれた3人の男たちを中心に、彼らの波瀾万丈な日常を描く、ヒューマニティに富んだロングラン・ドラマ・シリーズだ。
本作はエピソードごとに大きく切り口が異なる。その中で詐欺絡みの話は、単行本の第11~14巻に収録されているエピソード『オールスター・プロジェクト』だ。ジェームズの刑務所仲間が揃って出所し、それを祝うパーティがカーター邸で開かれるところから物語は幕を開ける。そのパーティの席で、刑務所仲間の1人・ボアズの姉であるアビーがカフェの開店を宣言する。ところがその晩、アビーはマフィアの元締め・レビンに脅され、開業資金の5万ドルを二束三文の土地と引き替えることを余儀なくされる。ジェームズたちはいきり立つが、事を荒立てては報復の連鎖を招きかねない。そこで彼らは、刑務所仲間の詐欺師「伯爵」の提案で、レビンに対して「吊り店(つりだな)」を仕掛ける。吊り店とは、架空の事業に投資させる詐欺の手口だ。彼らが事業として選んだのは映画製作。かくして、マフィアを相手にした危険な綱渡りの詐欺行為がスタートする。
窃盗団や振り込め詐欺集団など、犯罪者だけを狙って金品を奪う「タタキ」を行う少年たちを描いた、リアルでハードなクライム・アクション。実際に起きた事件を基にしたフィクションで、現実に起きている犯罪の手口や専門用語などが詳しく解説されているのが大きな特徴だ。少年犯罪と貧困問題に鋭く切り込むルポライター・鈴木大介がストーリー共同制作を担当しており、本作は彼が10年に渡る取材から書き上げたノンフィクション作品「家のない少年たち」が原案となっている。2018年に実写映画が公開された。
本作の主人公たちは、犯罪者から金品を奪う特殊な窃盗団である。主なメンバーは、工具全般担当・カズキ、情報担当・サイケ、そして車両担当・タケオの3人だ。それぞれが不遇の人生を送ってきた彼らは、収監された少年院で意気投合。出所後に窃盗団・バックスカーズを結成した。彼らが狙うのは、いわゆる半グレなどと呼ばれるアウトロー集団。半グレたちの拠点や、金品の集積所を探り当て、各々の技術を駆使して盗みを行う。そんなバックスカーズが狙ったターゲットのひとつが、振り込め詐欺集団の売上金だ。詐欺店舗にカズキが潜入し、詐欺プレイヤーを装いながら、売り上げが集まる金主の居場所を探っていく。このエピソードでは、振り込め詐欺の実態がリアルに描かれている。細かな役割分担に電話での演技など、詐欺集団の手口が長年の取材に裏打ちされた説得力ある描写で語られる。
難病を患う妻の治療費を捻出するため、結婚詐欺を繰り返す主人公の姿を描く、藤子不二雄A初の女性誌連載作品。主人公・愛誠は、旅行代理店の営業部に所属するサラリーマン。お調子者として社内で陽気に振る舞う誠だが、彼にはもうひとつの顔があった。それは女性を騙して金を巻き上げる結婚詐欺師。彼は、心臓を患う妻・優子の手術費用を稼ぐために詐欺を繰り返しているのだ。
主人公・愛誠は特に容姿が秀でているわけではないが、母性本能を刺激する甘え上手で愛嬌のある男だ。彼は純情で誠実な男を装ってターゲットに近づき、警戒心を解きほぐしていく。やがて相手と深い関係になってから、金を巻き上げる詐欺を行うのだ。ただし、誠自身から金を要求することは決してない。彼は金に困っている素振りを見せ、女性が自分から金を出すよう仕向けるのだ。また、誠が1人の女性から金を引き出すのは1回限り。金額も10~20万円と、そこまで高額ではない。なかなか巧妙に立ち回る誠だが、詐欺師としては抜けた一面もある。それは彼が身元を偽らず、本名で相手に接するという点だ。誠にとって詐欺は妻の手術資金を稼ぐための苦肉の策で、犯罪という意識が薄いため。しかし、そんな誠の甘さが、彼にとって思わぬ結末をもたらすこととなる。結婚詐欺のセオリーを「ある結婚詐欺師の手記より」という形で記しているのも本作の特徴である。