レントゲンやCTといった現代医療を支える画像診断の世界をクローズアップした、新感覚の医療ドラマ。主人公・五十嵐唯織は、天才的な技量を持つ診療放射線技師だ。ただし、空気を読むのが苦手でコミュ障気味な彼は、不用意な発言から周囲の反発を招き、職場を転々としてきた。そんな彼はある日、幼馴染みで憧れの女性・甘春杏が務める甘春総合病院で、診療放射線技師を募集していることを知る。意を決して応募した唯織は見事採用され、意気揚々と勤務を始める。ところが甘春杏は、幼い頃とは大分違うキツイ女性となっていた上に、唯織のことも覚えていなかったのだ。
本作の主人公・五十嵐唯織の仕事「診療放射線技師」とは、レントゲンやCTといった画像診断機器を扱う技師である。その上彼は、医師免許所持者であり、診療放射線医師として類い希なセンスを持つ。日本では外科医や内科医といった、患者と直接向き合う医師の評価が高く、なり手も多い。しかし米国では、患者の診断で重要な役割を果たす放射線科医は「ドクターズ・ドクター(医者をリードする医者)」として、高い評価を得ているのだ。唯織の画像から患者の病気や怪我の真相を読み解く「読影」技術に関しては、世界的な権威・ピレス教授が認めるほど。そんな彼が医師ではなく、技師という立場にこだわるのには理由があった。子どもの頃、唯織は幼馴染の甘春杏と「杏が放射線科医になり、唯織が放射線技師としてそれを支える」という約束をしたのだ。ところが久々に再会した杏は、約束どころか唯織のことすら覚えていなかった。いきなり空回りする唯織だが、その高い技量は徐々に周囲の注目を集めていく。
病院で働く看護助手の日常を描いたハートフルなショートコミック。主人公・ナナちゃんは、看護師のサポートや患者の生活を手助けする看護助手。彼女が働く病院には、様々な患者たちがやってくる。元気な声のお婆さんや、ちょっとスケベなお爺ちゃん、検査で末期がんと診断された若い女性、はたまた背中に立派な入れ墨の入った中年男性などなど。そんな入院患者たちに、ナナちゃんは分け隔て無く接していく。
本作の主人公・ナナちゃんはタイトル通り「看護助手」、平たく言えば看護師のアシスタントである。看護師が国家資格であるの対して、看護助手は民間資格。また、看護師は医療行為を行えるが、看護助手はそれができないなどの違いがある。看護助手が行うのは、患者の食事や入浴の介助、あるいはシーツの交換といった雑務全般。看護師が医療行為に集中できるように、医療以外の仕事をサポートするのが看護助手なのだ。もっとも、医療行為をしないとはいえ、命を預かる現場の仕事は、肉体的にも精神的にもハードなもの。雇用形態もバイトやパート、派遣が中心であるため、収入面も恵まれているとは言い難い。そんなキツイ現場にありながら、ナナちゃんは明るく元気に仕事をこなしていく。彼女の患者にもっとも近い目線から見る病院の光景は、他の医療作品とは違った味わいがある。ユニークでハートウォーミングな病院漫画だ。
総合病院で働く若き女性薬剤師を主人公に、薬を中心とした医療に焦点を当てたメディカル・ドラマ。葵みどりは、総合病院の薬剤部で働く薬剤師。彼女たち薬剤師は、医師のように頼られたり、看護師のように親しまれるわけでもない。しかし葵は、患者たちの当たり前の日常を支えるため、病院内を奔走しながら、日々の業を懸命にこなしていく。
本作の主人公・葵みどりは、総合病院に勤務する薬剤師。医師の処方箋に従って薬を調剤し、窓口で渡してくれる人…というのが一般的な薬剤師のイメージだが、彼らの仕事はそればかりではない。例えば、医師に処方箋の疑問点を確認する「疑義照会」。勘違いや入力ミスなどで投薬に間違いが生じないようにすることだ。一日に全国で処理される処方箋はおよそ220万枚。そのうち6万枚を超える処方に疑義照会がかけられ、なんと約70%は処方変更になるのだ。また喫煙者が禁煙をした場合、それまで使用していた薬の服用量を変える必要が発生するなど、同じ病気であっても患者それぞれの体調や体質に応じて処方や服用量が異なる。普段は目に見えない薬剤師たちの奮闘を深く掘り下げた、ユニークな医療ドラマだ。
産婦人科医院でアルバイトをしていた作者自身の経験に基づいて、クリニックの内情を赤裸々に描いたメディカル・コミック。高校3年の夏休み、准看護学科に通う主人公・×華(ばっか)は、友人に誘われ近所の産婦人科病院でバイトを始める。産科の現場は、教科書や授業では解らない驚きに満ちたものだった。それは決して感動的なことばかりではなく、心に重くのし掛かるような事実もある。当初は3日で辞めたいと考えていた×華だが、彼女は厳しい現実を受け止め、日々の仕事をこなしていく。2018年実写ドラマ化。
本作は、産婦人科でアルバイトを行う主人公・×華の視点から産科の現場をリアルに描いた作品だ。×華がバイトを始めた1990年代における、日本の三大死因は1位がガン、2位が脳血管疾患、3位が心疾患となっている。しかし、それは記録上のもので、実はカウントされない真の1位が存在する。それが、アウス(人工妊娠中絶)によって生まれる前に消えゆく命だ。×華は戴帽式前の見習いなので、医療行為は行えず、できることは簡単な介助と雑用のみ。その雑用の中には、アウス後に命の欠片だったものを集め、専用の容器に収めるという仕事も含まれる。祝福されて生まれてくる赤ちゃんがいる一方で、日の光を浴びることなく消え去る命も数多くある。小さな命の奇跡と、綺麗事だけではない産科の内情を鋭く描いた産婦人科病院物語だ。
大学の医局を舞台に、現代日本の医療を取り巻く諸問題に鋭く切り込む本格医療漫画。主人公・朝田龍太郎は、医療支援NGOで華々しい実績を上げた世界屈指の救急医療外科医だが、国内の医療機関から閉め出され医療現場から遠ざかっていた。そんな彼に、明真大学助教授・加藤晶が目を付ける。彼女の肝いりで、朝田を中心とするバチスタ(左室部分切除術)チームが誕生。やがて彼らの活躍が、淀んだ医局の空気に新しい風を吹かすことになる。
本作の主人公・朝田龍太郎は、天才的な腕を持つ外科医。かつて彼は、医療支援NGOに参加し、戦地や被災地での救急医療に従事。彼が率いた医療チームは、「医龍(Team Medical Dragon)」と渾名され、各地で目覚ましい実績を上げた。ところが、組織の枠に収まらない朝田は教授たちから疎まれ、日本の医療現場から閉め出されてしまう。そんな彼に現場復帰の道を開いたのは、明真大学助教授・加藤晶だ。彼女は、自らの教授選出の切り札として、バチスタ手術の変法論文を作成中。その執刀医として、朝田に白羽の矢を立てたのだ。バチスタとは、慢性心不全を治療する新たな外科手術法。作中では国内での成功例はなく、心臓外科の頂点といえる難手術である。朝田はチームの人選を一任することを条件に執刀を受諾。かくして型破りな天才外科医と、野心に溢れる若き女性助教授は、それぞれの信念の元、大学医局という象牙の塔に挑んでいく。