ボディビルダーの主人公が、日々の厳しい食事管理の合間に訪れるチートデイで好きな食べ物を堪能していくマッチョグルメ漫画。ボディビルダー・天王寺美貴久(てんのうじみきひさ)は、ボディビルディングの大会に優勝するほどの筋肉の持ち主。天王寺の鍛え上げられた美しい筋肉に、ライバルである男が強さの秘訣を聞きに来る。天王寺は食によって心が満たされているからと答えるが、鍛錬の極致とは苦しみの先に在ると主張する男とは意見が対立する。解りあえないとして男の前から颯爽と去った天王寺は、闘い抜いた己の筋肉を美味なる食事で労うため、事前にリサーチしていた店へと向かうのだった。
人間の身体は、摂取した食べ物で出来ている。食は体型に如実に表れてしまうのである。ボディビルダーの場合、魅せる筋肉作りのため、厳密な食事管理が必要になってくる。糖質はダメ、油はダメ、タンパク質はしっかりと、等々。気の遠くなるような食事管理とトレーニングの結果が、美しい筋肉を完成させるのだ。これぞ汗と努力の成果だ。とはいえ、食事を制限されている状態ではストレスがたまるのは当然。また、食事制限を続けると身体が低燃費モードになり基礎代謝が下がるらしい。これを防ぐため、好きな物を好きなだけ食べる「チートデイ」なるものを設けるのだとか。普段は自制しているからこそ、天王寺の食に対する愛情は計り知れない。マッチョは己の身体を作る食への尊敬と感謝を忘れないのである。
超筋肉体質なせいで不良の先輩に絡まれがちな気弱な主人公と、筋肉フェチ同級生による筋肉学園ラブコメディ。高校1年生の爆龍砕優(ばくりゅうさいゆう)は異常なまでに発達した筋肉の持ち主。そのせいでクラスメイトからは避けられ、不良グループからは絡まれてしまう。学校が嫌いな優だが、話しかけてくれる辻園(つじぞの)春子の存在に救われていた。優は、ある日不良グループ「四天王筋(してんのうきん)」の一人、尺零崎巌月(しゃくれざきがんづき)を不本意ながら返り討ちにしてしまう。翌日、春子が人質に取られたと知り、一人体育館へと向かうのだった。
爆龍砕優のビジュアルを説明するのはなかなか難しい。顔は気弱な性格が感じられる、優しげな雰囲気。童顔なため、幼さも感じられるだろう。顔だけ見れば、肉体は細くてひ弱な体を想像するのではないだろうか。実際には真逆なので三度見してしまう。太い首、広い肩幅、服の上からでも筋肉の部位がわかるくらい盛り上がっている。幼さの残る顔立ちに反し、身体は歴戦の戦士のように逞しい。優はこの筋肉のせいで不本意な人生を歩んでいる。しかし、欲望のまま暴力を振るうことはない。気は優しくて力持ちを具現化した存在と言えるだろう。
日常アニメをこよなく愛する主人公が、ある日突然現れたオネエマッチョの幽霊と同居し、日々の悩みを筋トレで解決していく日常コメディ。前田木葉(このは)は二次元の女の子と日常系作品を愛するオタク女子。ある日突然、家にアッコというオネエでマッチョな幽霊が現れる。誰にも相談できず、アッコも自力で部屋からは出られないし成仏できないという。八方塞がりの状況の中、アッコと協力し筋肉を鍛えることで状況を改善しようと試みることになるのだった。
アッコはオネエ系のマッチョである。明るくてコミュニケーション能力も抜群、対人スキルが低いコミュ障気味な木葉でも臆せず会話できる貴重な存在だと言えるだろう。ただし、マッチョゆえの性なのか、全てを筋肉で解決できると考えがちだ。先輩に相談できない、筋トレで解決。後輩とうまく接することができない、筋トレで解決。基本的に筋トレで解決できるのは体型の悩みと身体の不調ではあるが、達成感を得られるほか自信がつく効果もある。木葉が職場で話ができるようになっていく過程を見ると、やはりメンタルの不調の特効薬も筋肉ではないかと、思考が筋肉に侵食されていく。しかし、自宅で筋トレを直接教えてもらえるのはちょっとうらやましい。アッコのような幽霊なら大歓迎である。
鍛え上げた肉体で魔法の常識を覆すことに成功したマッチョな主人公と、巻き込まれたエルフの筋肉冒険ファンタジー。エルフのフィーリアはエルフの里を出た喜びから、森の中で迷子になってしまう。森の奥深くで見つけた家には、単身で自給自足生活をしているユーリが住んでいた。魔法すら跳ね除けてしまう強靭な肉体を持ったユーリは、フィーリアの来訪をきっかけに、久しぶりに森の外へ出ることを決意するのだった。原作はどらねこの同名web小説。
筋肉は「物理」である。物理学的な話ではなく、概念の話だ。では、魔法とは何だろうか。魔法によって起こる現象を見れば、特殊な力が物理的に作用するように変換されていると理論付けできるのではないか。そう考えれば、魔法も「物理」であると言えないことも無い。物を爆発させ、切断でき、凍らせるのである。特殊な能力でできることは、つまり筋肉でもできるというわけだ。ユーリは魔法世界において、筋肉で全てを解決する「筋肉魔法」の使い手だ。要は鍛え上げられたマッチョなのである。肉体で魔法を吹き飛ばす姿を見ていると、魔法に対応にするのに筋肉で十分なのだと謎の納得感がある。
食べ歩きが大好きな女子高校生が友人から太り気味なことを指摘され一念発起、仲間たちと共に筋トレにのめり込んでいく筋トレコメディ。紗倉ひびきは食べ歩きが大好きな高校生。だがある日、友人の上原彩也香(あやか)から、太ったことを指摘されてしまう。ひびきは自身の体重に危機感を抱き、ダイエットを決意しジムに通うことにする。ジムの見学で一緒になった完璧お嬢様である同級生の奏流院朱美(そうりゅういんあけみ)に怯むものの、イケメントレーナーにつられ、入会してしまうのだった。2019年にテレビアニメ化。
体型の維持には筋トレが有効だが、継続するには本人の忍耐力が不可欠だ。ひびきが家トレを早々に諦めてしまった姿に、共感する読者は多いのではないだろうか。トレーニングジムを利用する心理は、プロから的確なアドバイスがもらえるというのはもちろんだが、お金をかけて通うことによりサボりにくくなるというのもあるだろう。ただし、ひびきの場合はトレーナーの街雄(まちお)が好みのタイプだったことが大きいわけだが。トレーニング解説の図はかなり本格的でわかりやすく、家トレ時の参考にできるのが嬉しいところ。ひびきや朱美がつらそうに筋トレに励んでいる表情がとてもリアルで、筋トレの道は険しい道でもあるのだと感じられるだろう。たとえ辛くとも、筋トレ仲間に入りたくなるはずだ。