歴史上の人物が地球から異世界に召喚され、戦争に巻き込まれていくバトル漫画。物語の舞台は、人間の他にエルフ、ドワーフといった亜人種や、ドラゴンなどが生息するファンタジー世界。主人公である島津豊久は、関ヶ原の戦いの最中に、謎の男により異世界に送り込まれる。そこで織田信長、那須与一と出逢った豊久は、覇権国家オルテ帝国を相手に「国獲り」を開始する。2016年10月テレビアニメ化。
本作に登場する薩摩隼人は、主人公でもある戦国時代に名を馳せた島津家の武将、島津豊久である。彼は武勇に秀でた男で、身の丈ほどもある野太刀を軽々と振り、敵を鎧ごと斬り伏せる。策を巡らせるのは苦手だが、戦いの機を見抜く天性の感を備えており前線指揮官としても有能だ。そして一本気な性格の持ち主であり、己の信念を決して曲げない彼はまさに、薩摩隼人の典型というべき人物である。豊久は自分と同じく異世界に送り込まれた「漂流者(ドリフターズ)」らと協力し、「国獲り」に乗り出していく。だが彼らの前に、別の人物によって異世界に送り込まれた歴史上の偉人たち「廃棄物(エンズ)」が立ちはだかるのだった。
江戸時代初頭の日本を舞台に、徳川家康率いる「覇府」と、その支配に抗う「怨身忍者」たちの戦いを、けれん味溢れる描写で描くバイオレンスアクション。元和元年、大阪城は落城し豊臣家は敗北。天下を手中に収めた徳川家康は、豊臣の残党を徹底的に粛正していく。しかし、そんな徳川に対して反抗する者たちが、各地で立ち上がる。彼らは皆怨念を抱いて死した後、超常の存在に導かれて甦った異能の戦士「怨身忍者」であった。
本作は江戸初期が舞台ということもあり、島津義弘、や島津家久を筆頭として薩摩の武士が数多く登場する。彼らの多くに共通する特徴は、武勇を偏重する無類の戦好きであるという点だ。当主である島津家久自身、剣豪である宮本武蔵に斬りかかり、死ぬ寸前の目に逢いながらもその強さを笑顔で賞賛するほどである。また守りを顧みず、一文字に敵陣を切り裂く島津独特の兵法「穿抜」をはじめとして、相手を侮り不覚を取ったことを恥じて即座に切腹する若き薩摩藩士の姿や、虜囚の生き肝を素手で奪い合う「ひえもんどり」という常軌を逸した風習など、島津家武士たちが絡んだエピソードには、薩摩隼人の気性の激しさが存分に描かれている。
江戸時代、幕府に木曽川・長良川・揖斐川の三大河川の治水を行うように命じられた薩摩藩内部の騒動と、この工事へと赴いた藩士や関係者のエピソードをオムニバス形式で描いた歴史群像劇。九代将軍である徳川家重の時代、江戸幕府は薩摩藩に対して濃尾地方の治水工事を命ずる。しかしその工事は、ひとつの藩が請け負うには余りに莫大な費用の掛かる事業だった。薩摩藩を治める島津家は、お家存亡の危機に大きく揺れることになる。
本作は、史実に基づきながら薩摩藩を中心に江戸後期の一大治水事業を描いた歴史ドラマである。そのため数多くある漫画作品の中でも、薩摩隼人の真実に迫る内容となっている。物語の冒頭で描かれるのは、薩摩に古くから伝わる「ひえもんどり」。死罪人を馬に乗せて放ち、その生き肝を東西両軍で争奪するという凄絶な武練の風習である。主人公のひとりである斯波左近は、罪人としてこの風習の的となりながら、武勇と機転から生きながらえた剛の者だ。本作ではまず左近の生き様を通じながら、武士の深刻な貧困問題など薩摩藩の諸事情が描かれる。やがて物語は視点を変えながら、薩摩藩島津家を根底から揺るがす幕命へと繋がっていく。
鹿児島から東京に出てきた主人公の日々を描いた青春物語。タイトルの『ぼっけもん』は鹿児島地方の方言で、「豪傑者」や「大胆不敵な男」などの意味がある。主人公の浅井義男は、高校卒業後に上京し、働きながら夜間大学に通う青年だ。そんな彼はある時は異性への欲求に悶々とし、またある時は無用な見栄のせいで災難を被る。一本気だが不器用な義男はカラ回りを繰り返しながらも、少しずつ人間として成長していく。
薩摩隼人とは薩摩の武士の勇猛さを称える言葉だが、近代以降では鹿児島県出身の男性の呼称ともなっている。つまり本作の主人公である浅井義男も、立派な薩摩隼人である。かつて薩摩には、質実剛健な武士を育てるための制度「二才(にせい)教育」というものが存在した。その中に、若者は修行の妨げとなる女性との接触を徹底して避けるという戒めがある。そのため薩摩隼人は女性に弱いという一面があった。もちろん義男は直接「二才教育」を受けたわけではないが、薩摩隼人らしく女性に弱い。異性への欲求に悶々とする義男だが、今一歩が踏み出せない。そんな彼が周囲の女性たちに振り回され葛藤する様子は、物語の大きな見所のひとつだ。
津本陽の同名小説を劇画化した本格派の剣術時代劇。示現流の開祖、東郷重位(とうごう ちゅうい)の峻烈な生き様を描く。重位は16歳で初陣を飾り、10万余の大軍勢に対し、長刀を振りかざしての一騎駆けを演じた薩摩隼人である。そんな彼は、島津家が太閤秀吉の聚楽第普請を命じられた際に京勤めとなる。そこで重位は天真正自顕流の奥義を相伝された元武士、善吉書記と出会う。
薩摩隼人の精強さと共に語られることが多いのが、薩摩藩の御流儀剣術である示現流だ。その開祖こそが本作の主人公である東郷重位である。彼は元々は体捨流剣術を学んでおり、腕に自信を持つ薩摩隼人だった。そんな彼は京勤めの折、天真正自顕流の奥義を修めた善吉書記と巡り逢う。善吉の鬼気迫る構えに衝撃を受けた重位は、剣術の伝授を願い出る。やがて善吉の元で修業を始めた重位は、苦難の末に剣理に開眼。京勤めを終えて薩摩に帰った後も、重位は善吉から授けられた伝書を片手に猛稽古に明け暮れる。やがて藩上層部に命じられた上意討ちで勇名を馳せた重位に対し、腕自慢の薩摩隼人たちが、次々と挑戦してくることとなる。