性別を偽って新撰組に入隊した少女の奮闘と恋愛模様を描いた、ラブコメ時代劇漫画。主人公・富永セイは蘭学医・富永玄庵の娘。尊皇攘夷派の志士に父と兄を殺害されたセイは、仇討ちのため、性別を偽り「神谷清三郎」と名を変えて、攘夷運動を取り締まる壬生浪士組(後の新撰組)に入隊する。ところが入隊早々、彼女は自分が女であることを上司の沖田総司に知られてしまう。第48回小学館漫画賞受賞作。
本作は史実をベースにしつつ、フィクションの要素を盛り込んだ漫画作品だ。近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一といった主立った新撰組の隊士や、敵対する攘夷志士たちは実在の人物だが、主人公・神谷清三郎(富永セイ)は架空のキャラクターだ。攘夷派志士に父と兄を殺害されたセイは仇討ちを決意。性別を偽って元幕臣の息子・神谷清三郎と名乗り、京都で攘夷派を取り締まる壬生浪士組に入隊する。セイの面倒を見る役目を命じられたのが、本作のもうひとりの主人公・沖田総司だ。隊の中では若年ながら、剣の実力はトップクラス。後に新選組一番隊隊長となる人物である。実はセイの父と兄が殺害された折、セイの命を救ったのが総司だったのだ。総司はセイの固い決意を知り、女性であることを秘密にしてセイの面倒をみる。セイは恩人であり、直属の上司となった総司を先生と慕い修行に励む。そしてセイの総司に対する尊敬の念は、いつしか恋心へと変わっていく。
幕末最強の剣客集団・新撰組を束ねる局長・近藤勇の人物像を大胆にアレンジした、ファンタジックな時代劇漫画。史実での近藤勇は、武勇と剛胆さを兼ね備えた人物として知られている。剣術においては天然理心流の四代目宗家を襲名。巨漢で強面の容貌な上に声も大きく、まさに豪傑という表現が相応しい男である。ところが、本作における近藤勇は、そんなイメージとは180°異なる可愛らしい10歳そこそこの子供。ただし、単なる子供ではなく、荒くれ者たちの頂点に立つだけの能力の持ち主であった。
本作の近藤勇は、史実とは大きく異なる可愛らしい子供。土方歳三からは「勇ちゃん」「局長ちゃん」などと呼ばれ、山南敬助は近藤に対して過保護な教育ママのように接する。おねむの時間が早いので、隊士たちが夜回りする時間には、布団ですやすや。公務の傍ら寺子屋にも通う、正真正銘の子供なのだ。愛されキャラの近藤だが、単なるマスコットとして局長の座にいるわけではない。子供離れした明晰な頭脳を持ち、的確な指示で組織を動かす。さらに近藤は未来を予見する能力を備えていて、その能力で相手の剣筋を見切り、鮮やかに斬り伏せる。だが、そんな近藤と新撰組の前に、謎の剣術集団「邪剣十二宗家」が立ちはだかる。それぞれが強力な異能を備える剣客たちを相手に、近藤率いる新撰組の面々の過酷な戦いが幕開く。数ある新撰組を扱った作品の中でも異彩を放つ、ユニークなストーリーだ。
新撰組に入隊した少年・市村鉄之助を主人公に、新撰組の面々の活躍を虚実織り交ぜながら描いた歴史ファンタジー漫画。鉄之助は何者かに両親を殺され、強くなりたい一心で新撰組への入隊を志願する。ところが小柄な体格ゆえに門前払いされてしまう。しかし、偶然町で出逢った沖田総司の計らいで、沖田と鉄之助の道場での勝負が実現。全く歯が立たなかったものの、絶対に諦めない根性と、強くなるためには鬼にもなるという決意が認められ、入隊を許可される。2003年10月にテレビアニメ化。
本作の主人公・市村鉄之助は、実在の新撰組隊士である。鉄之助は14歳の若さで、兄の辰之助と共に新撰組に入隊、土方歳三に小姓として仕え、鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争を経て函館戦争に至るまで付き従う。土方から「極めて勝ち気で利発」と評された鉄之介は、土方が自らの遺品を託すほど、信任厚い隊士でもあった。本作における鉄之介は、利発という表現からは程遠い直情型だが、勝ち気という部分は史実の通りだ。入隊当初の鉄之介は、その性格ゆえの暴走が目立ち、隊の任務を危うくするトラブルメーカーだった。しかし鉄之介は、数々の失敗を乗り越えながら、隊士として少しずつ成長していく。そんな中、鉄之介は、北村鈴という少年と出逢い友人となる。ところが北村は、新撰組に兄を殺され、仇討ちのため攘夷派の中心人物・吉田松陰に小姓として仕えていたのだ。完全に真逆の立場のふたりの出逢いをきっかけに、物語は大きく動き出す。
江戸末期から300年以上前の戦国時代にタイムスリップした新撰組の活躍を描く、一風変わったSF戦国漫画。元治元年(1864年)新撰組屯所にいたはずの隊士たちが目覚めたのは、まったく見覚えのない山の中。そこは永禄三年(1560年)の桶狭間、織田信長と今川義元の決戦直前だった。訳も解らぬまま野武士たちの攻撃を受けた土方歳三は、必死に応戦するも野武士の頭領・蜂須賀小六に敗北。囚われの身となった土方たちは、織田信長の前に引き出される。この一件をきっかけに、歴史は大きく変わっていく。
新撰組と言えば、幕末屈指の人斬り集団として名を馳せた組織である。しかし、命のやり取りの経験という点では、戦国時代の武士たちの方が遥かに勝る。鬼の副長と恐れられた土方歳三も、戦国時代の猛者・蜂須賀小六を相手に苦戦を余儀なくされる。タイムスリップを題材にした架空の物語とは言え、新撰組の精鋭が武力で苦戦するという展開は中々に新鮮だ。ちなみに新撰組の面々は一ヶ所にまとまってタイムスリップしたわけではなく土方歳三のグループと、近藤勇のグループがやや離れた場所に転移している。その結果、土方たちは蜂須賀に捕われたが、近藤たちは無事だった。そこで近藤は、土方たちを救出するべく、織田信長の本陣に奇襲をかける。それも、信長が今川に奇襲をかけたタイミングでだ。彼らの行動がどんな結末をもたらすのか。歴史好きにとっては、かなり興味深い物語と言えるだろう。
新選組で歴史的に有名な幹部たちとは異なり、実在ではあるが無名な若手隊士にスポットを当てた、幕末青春グラフティ漫画。主人公となるのは、新撰組五番隊に所属する若者たち。新撰組というと、厳しい局中法度の下で統率された最強の人斬り集団というイメージだが、主人公たちは現代の若者のような軽いノリの青年たち。攘夷志士との命のやり取りに加え、法度に触れれば即切腹という殺伐とした状況にありながら、主人公たちは京の都での青春を謳歌していく。
新撰組と言われて思い浮かぶのは、局長・近藤勇、副長・土方歳三、あるいは優れた剣士として名高い沖田総司や斉藤一、永倉新八といった幹部たちだろう。物語でも、彼らが中心に描かれているものが主流である。しかし本作の主役、楠小十郎 、佐々木愛次郎、馬越三郎、馬詰柳太郎、山野八十八の五人は、一般的な知名度は高くない平隊士だ。ただし、彼らは何れ劣らぬ美男子ばかり。彼らが京の街を歩けば、女性たちから黄色い歓声がこだまする。付いた渾名は隊中美男五人衆。人斬り集団・新撰組でも異彩を放つ彼らは、容貌だけでなく、その行動もまた独特。奇抜な髪型を注文して髪結い屋を困らせ、袴をだらしなく引きずる腰履きスタイルで隊長から説教を喰らう。その姿は、現代のナンパでチャラい若者さながらである。そんな彼らの視点を通じて描かれる新撰組の日常は、従来の作品とは異なる魅力に溢れている。