『グラップラー刃牙』に登場したモンゴル系ロシア人。6階級制覇を目論むボクシングのJr.ウェルター級チャンピオン。モンゴル史上最強の騎馬民族であるヂギール族の戦士であり、高度なボクシングテクニックを持つ。母国では襲いかかる24頭のオオカミを撃退したこともある。ジムでトレーニングをしている最中に、さらなる強さを求めて訪れた13歳の刃牙からスパーリングを申し込まれた。トレーナーは猛反対するが「精鋭無比なるヂギールの歴史に挑まれた闘いから背を向けた記録はないッッ」とヂギール族としての誇りを理由に、刃牙の挑戦を受けた。
スパーリングでは速く的確なパンチを浴びせるなど刃牙を圧倒する。変則的な攻撃を仕掛けてくる刃牙に出血させられる場面もあり、「立派な戦士だ」と刃牙の実力は認めたものの、渾身(こんしん)の右パンチで難なく刃牙を失神させ勝利。この敗戦がきっかけで、刃牙はさらなる強さを求めて夜叉猿の住む飛彈の山奥へと修行の旅に出ることになった。その後、花山薫との闘いを経た刃牙とは実力差が開いてしまい、範馬勇次郎と刃牙が闘う際には花山と二人がかりで刃牙のスパーリングパートナーを務めた。
『グラップラー刃牙』に登場。かつてアフリカ大陸からブラジルへ奴隷として輸送された黒色人種の末裔。数十人の家族を狩りで養っており、一切道具を使用せずに素手のみで動物を狩る戦闘力を持つ。格闘スタイルはバーリ・トゥード。刃牙とは地下闘技場で行われた最大トーナメントの2回戦で戦った。
刃牙戦では、刃牙が闘技場に姿を現すと試合開始の合図の前に襲いかかり、虚を突かれた刃牙を投げ技と打撃の連打で失神させた。試合開始前の攻撃だったが、トーナメントの主催者である徳川光成は、闘技場に入ってから油断した刃牙が悪いと判定し、一度はズールの勝利が決まる。だが、闘技場から自力で去る刃牙の姿を見て、まだ決着とは認めず襲いかかり、刃牙に金的蹴りを食らって逆にノックアウトされてしまう。お互いに1勝ずつとなって迎えた最終戦では、一時はマウントポジションをとるなど刃牙を追い詰めたかに見えたが、難なく立ち上がった刃牙に急所への蹴りを寸止めされ、自ら敗北を認めた。
『バキ』に登場。強者との闘いを求めて脱獄した五人の死刑囚の一人。小柄な日本人で、「空道」という殺人術の使い手であり、人呼んで「猛毒 柳」。対象に密着させた掌(てのひら)に真空状態を作りだす技を得意とするほか、鞭打や毒手、さらには鎌・暗器などの武器術まで駆使して闘う。かつては合気の達人、渋川剛気と立ち合っており、渋川の片眼を奪っている。刃牙の高校に侵入した際は、作業員の扮装で刃牙の目を欺いて背後から不意打ちを仕掛けるなど、手段を選ばない一面を持つ。
刃牙とは、刃牙の高校の敷地内で対戦。鎌を駆使した攻撃で刃牙を防戦一方にさせるが、途中で渋川が刃牙の助太刀に駆け付けたことで1対2の闘いに突入。はじめは刃牙と渋川のコンビネーションに対応できず、刃牙の蹴りをまともに受けてしまうなど苦戦するが、対戦相手の鼻と口に掌をあてて低酸素濃度の気体を作り出すという空道の技を使用し、刃牙を一瞬で意識不明にさせた。だがその後、さらに強くなった刃牙との再戦では同じ脱獄死刑囚、シコルスキーとの共闘でも歯が立たず、刃牙が去った後はあまりの屈辱に号泣した。
『範馬刃牙』に登場。科学の力で現代に蘇生させられた原始人の男性。約2億年前の岩塩層の壁の中に閉じ込められていたことから、塩漬けを意味する「ピクル」と呼ばれる。ティラノサウルスを素手で捕食するすさまじいパワーと闘争本能を持ち、地下闘技場で烈海王、愚地克己、ジャック・ハンマーという実力者たちに完勝。自分を襲うものは食料としてみており、実際に烈や克己戦後は彼らの肉体の一部を食べた。その後、ピクルが食料としていたティラノサウルスをバイオ技術で増殖させる研究が進み、闘う理由がなくなったかに思われたが、刃牙とは自らの誇りを守るために闘った。
超人的なパワーを誇るピクルに、刃牙は鞭打や動物の形を取り入れる象形拳など、進化した現代の武の力で対抗する。技術を駆使する刃牙に追い詰められ、急所への一撃でダウンを喫したことがきっかけとなって主要関節を組み替えた戦闘形態へと肉体を変容。だが体力差や筋力差を物ともしない刃牙の格闘術の前に敗北寸前にまで追い込まれるが、最後は技術を用いずに純粋な体力勝負で決着をつけようとした刃牙を打撃で上回り、新たに手にした「格闘技の技術」も使って刃牙を失神させた。この結末に、観戦していた烈はピクルに生殺与奪の権利があるという理由からピクルの勝ちと判断したが、花山薫は体格的に勝るピクルが技術という武器を使ってしまったことを重視し、心情的には刃牙の勝ちだと判定した。
シリーズ全編を通じて登場。刃牙の父。地上最強の生物で、全力を出す際に隆起した背中の筋肉が鬼の顔に見えることから、鬼(オーガ)の異名を持つ。戦場で鍛えられた我流の格闘術を使い、相手を力でたたきつぶすのを好む。素手で巨象や北極熊を倒す規格外の格闘能力を持ち、そのあまりの強さから個人であるにも関わらず代々のアメリカ大統領と友好条約を結んでいる。13歳の刃牙をかばって自分に襲いかかってきた妻の朱沢江珠を躊躇(ちゅうちょ)なく殺害したことで、刃牙の最終的な超えるべき目標となった。刃牙とは、刃牙が13歳のときと地下闘技場のチャンピオンに君臨した後に、お互いの合意のもと闘っている。
夜叉猿や花山薫という強敵を倒すまでに力をつけた13歳の刃牙を認めた勇次郎は、米軍横田基地で花山やユリー・チャコフスキーらが見守る中、刃牙と対決。刃牙の攻撃を受けても微動だにしなかったが、刃牙が一流の域に達していることに歓喜し、興奮を抑えきれずに反撃に転じて一方的に叩きのめした。その後、5年の月日が流れ、地下闘技場の最大トーナメントや脱獄死刑囚、ピクルら強敵たちとの闘いを経てさらなる強さを手に入れた刃牙と再び対決。一流ホテルでの食事後、ささいなきっかけから始まった「史上最強の親子喧嘩」は、お互いがあらゆる技術を駆使する死闘へと突入する。最後は刃牙の「我が儘(まま)を通す力」を認めて地上最強を名乗ることを許したが、刃牙は決着の際に勇次郎の頭部の標高が自分より上にあることを理由に自分の敗北を認めた。
『刃牙道』に登場。生涯無敗を誇った伝説の剣豪。スカイツリーの地下366メートルにある研究所でクローン技術によって肉体が作られ、霊媒師の徳川寒子が宮本武蔵本人の魂を降霊させて現代によみがえった。常識では計り知れない強さを持ち、対峙(たいじ)した相手に目の前に存在しないはずの剣を見せ、あたかも斬られたかのようにイメージさせてさえしまう。手にした青竹が一振りでささら状になってしまうほどの力とスピードを持ち、烈海王や愚地独歩といった実力者に完勝するなど、伝説にふさわしい強さをみせるが、地下闘技場で古流武術の使い手である本部以蔵の裸締めに失神させられた。
刃牙とは地下闘技場のオーナーである徳川光成の屋敷で初めて対面し、庭で丸腰のまま立ち合う。刃牙の蹴りを難なくかわすと、片足をつかみ、刀を振り下ろす要領で体を激しく地面に叩きつけて刃牙を失神させた。目を覚ました刃牙と再び立ち合い、高速のジャブでダウンさせられるが、3度目の立ち合いでは刃牙のジャブを素手で掴むなど高い対応力をみせ、刃牙に素手による袈裟(けさ)斬りを浴びせて徳川邸から立ち去った。刃牙とはその後、地下闘技場で再戦。一進一退の攻防を繰り広げたが、途中で乱入してきた寒子によって魂を抜かれ、再び地下の研究所で液体窒素により保存させられた。