今回は7県からなる「九州地方」そして「沖縄県」より「福岡県」「佐賀県」「長崎県」出身のマンガ家をご紹介しよう。
マンガ作品にはその作者の出身地、土地柄が現れるものも数多い。出身地別にマンガ家を紹介する。
出典:Amazon.co.jp
今回は7県からなる「九州地方」そして「沖縄県」より「福岡県」「佐賀県」「長崎県」出身のマンガ家をご紹介しよう。
九州北部に位置し、九州地方最多の人口と最大都市「福岡市」を擁する「福岡県」。「福岡市」と「北九州市」の2つの政令指定都市があり、「北九州市」は本州最西端「山口県」の「下関市」と鉄道や陸路、航路で結ばれている。この「北九州市」出身のマンガ家が「高田慎一郎」である。1994年、「エニックス」主催の「第7回ビッグルーキー大賞」で佳作「ビッグステップ賞」を受賞してデビュー。主に「エニックス」の雑誌で執筆しており、最近ではウェブコミックでの作品発表の機会が多い。作風は少女が主人公のファンタジー作品が多い。
その中で「福岡県」がモデルになっている作品が『神さまのつくりかた。』である。主人公「小春」は荒ぶる神「遊風稜(ゆせみ)」を倒す為に女だらけの社で育てられてきた「戦神子」。そんな「小春」は15歳になると、「男を見たい」という理由で外界に脱走してしまう。その時「都家弥十郎」という少年と出会うのだが、彼は「遊風稜」を神として召喚しようと目論む人狼「阿曇一族」の末裔であった。「阿曇一族」との戦い、「小春」の出生の秘密、「遊風稜」の正体、倒すべき真の相手。「小春」は様々な出来事に巻き込まれて行く……。この作品は現代日本を舞台としているが、日本神話や日本古来の神の概念を多く取り込んでおり、和風色が強い。そして作品中には作者の故郷「北九州市」の風景が随所に出てきており、「小春」たちが通う高校は、作者の出身校「八幡南高校」がモデルである。我々が生きる現代と古からの神々の世界が入り組んだこの作品。スケールの大きさを実感してほしい。
美味しいものが沢山揃っている「福岡県」。辛子明太子、豚骨ラーメン、モツ煮、水炊き……。挙げていけばキリがないほど。考えただけでお腹が空いてくる。そんな「福岡県」出身のマンガ家2人目が「うえやまとち」である。「福岡市」出身の彼は一度教員となったが、1977年マンガ家を目指し退職。同年「第14回手塚賞」で佳作入選を果たし、マンガ家としてデビューした。その「うえやまとち」の代表作が1984年から長期連載されている大人気グルメマンガ『クッキングパパ』である。主人公の「荒岩一味」は「福岡県福岡市東区花椎」に住むサラリーマン。「ニチフク新聞」文化部副部長の妻「虹子」、長男「まこと」、長女「みゆき」と暮らしている。「一味」はプロ級の料理の腕前を持っており、そのジャンルは幅広い。基本的に作品は一話完結型で、マンガで取り上げた料理のレシピが詳細に紹介されている。マンガとしても、料理レシピ本としても役立つ1冊である。この作品は福岡市内の風景や、周辺の鉄道、道路や施設などについて細かく描写がされている。キャラクターが「福岡ダイエーホークス」「福岡ソフトバンクホークス」の帽子をかぶっていたり、郷土料理が紹介されていたりと随所に作者の「福岡愛」が溢れている。そして、紹介される料理は全て作者本人が調理、試食し、味を確かめた上で描かれていることに脱帽である。福岡の景色に想いを馳せながら、この本を見ながら手料理を作ってみてはいかがだろうか?
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「菅原道真」を祀っている「太宰府天満宮」があるのも「福岡県」である。幼少期より学問の才能を発揮し、成長してからも学者、政治家、文人として活躍した「道真」は「学問の神様」として広く知られており、その「道真」を祀るこの神社には学業祈願、受験合格祈願など数多くの学問に関係する願いが届けられる。彼の詠んだ歌を聞いた事がある方も多いのではないのだろうか?その「福岡県」出身のマンガ家からもう1人「森尾正博」を紹介する。2002年マンガ家デビューした彼が「福岡県」を舞台として描いたのが、『かみさま日和』である。主人公の「有坂史美華」はやっと再就職を決めたものの、出社初日に会社が倒産、同時に住む場所も失うという踏んだり蹴ったりの状態に。さらに立ち寄った喫茶店では財布を落としてしまい無銭飲食寸前という不幸の連続。しかし、そこに現れた謎の男「矢部」に救われ事なきを得た「史美華」は、彼に言われるまま「天晴神社」と呼ばれる神社に連れて行かれ、神社に関する知識ゼロのまま巫女として働く事になったのだった。ちなみに従業員は全員キャラが濃く一癖二癖ある人物ばかり。「史美華」はこの先どうなってしまうのか……!?
この「天晴神社」は従業員5人の小さな神社だが、約1100年前の平安時代から健在している由緒ある神社。「天晴神社」のモデルになったのは「北九州市八幡東区」にある「天疫神社」である。
「S・A・G・A、佐賀〜」のフレーズですっかりお馴染み(?)の「佐賀県」は九州の北西部に位置する。北西部をリアス式海岸と砂浜の玄界灘、そして南東部を干潟と干拓地の有明海という全く様子の違う2つの海に囲まれている県である。人口、面積ともに九州最小だが、「吉野ヶ里遺跡」を代表とする長い長い歴史を物語る遺跡が発見されており、大陸文化が早い時期から伝わっていたとされている。また、陶磁器の産地として古くから有名で、唐津、伊万里、有田などのブランドが存在する。そんな「佐賀県」出身のマンガ家から紹介するのが「原泰久」である。「佐賀県三養基郡基山町」出身で、大学3年の時にマンガ家を志す。大学卒業後、プログラマーとして就職し3年勤めて退職。その後1999年にマンガ家デビューを果たす。読切作品の掲載を経て、2006年に初連載となった作品が現在も連載中の大人気マンガ『キングダム』である。2013年の「第17回手塚治虫文化賞」にて「マンガ大賞」受賞も果たした大作だ。物語の舞台は中国・春秋戦国時代。大将軍を目指す少年「信」と、後の「始皇帝」となる若き王「政」の2人の活躍を中心に、壮大なる戦乱の世が描かれている。アニメ化もされ、第1・第2シーズンまで放送された。芸能人にも数多くのファンがおり、熱く作品への想いを語るほどである。「佐賀県」を舞台とした作品ではないが、彼は出身地の「基山町」初の「ふるさと大使」に任命されている。その縁でいつか故郷「佐賀県」を舞台とした作品を執筆して欲しいものである。
「長崎県」は九州の最西端に位置する県である。古くから貿易都市として栄え、鎖国時代でも幕府公認で開かれていた港があった土地でもある。海外文化も数多く伝来され、キリスト教信者が数多く存在したと言われている。そして第二次世界大戦中の1945年8月9日に原子爆弾が投下され、「広島県」と共に原爆被災地となった土地でもある。その「長崎県」出身のマンガ家からまず紹介するのが「岡野雄一」だ。「長崎県長崎市」に生まれ育った彼は専門学校でデザインを学び、出版社勤務を経てマンガ家となる。そんな彼の代表作が『ペコロスの母に会いに行く』だ。主人公「ゆういち」は「小さな玉ねぎ」という意味合いの「ペコロス」という愛称で呼ばれている。彼の母「みつえ」が認知症の症状を見せ始め、グループホームに入居させることになった。面会に来た息子が分からず、玉ねぎの様な薄い髪の毛を見て思い出したり、夫が亡くなったことを忘れ存在しない夫と話したり、原爆で失った幼い娘の幻をあやしてみたり、幼馴染や子供の時に亡くなった妹と話してみたり……。認知症の症状が進み過去と現在をゆっくりと行ったり来たりしている「みつえ」を優しく見守る「ゆういち」。「介護」という現実を通しながら親と子の繋がりを再確認させられる作品である。「ボケるとも、悪か事ばかりじゃなかかもしれん」と言う「ゆういち」の言葉の意味が今はまだ分からない人がいるかもしれないが、読んでいるだけでも愛情溢れる作品の雰囲気に癒される。
周囲を海に囲まれた「長崎県」は対馬、壱岐、五島列島など数々の島々を有する。その数は971あり、もちろん日本一である。「小野妹子」を始めとする「遣唐使」や「遣隋使」はこの島々を経由し朝鮮や中国に渡っていた。古くからユーラシア大陸と日本の文化が行き来している土地であり、窓口的役割を果たしていた土地なのである。そんな「長崎県」から次に紹介するマンガ家が「ヨシノサツキ」である。出身は「長崎県五島市」であり、現在も在住している。2005年にマンガ家デビューし、2006年から『聖剣伝説 PRINCESSofMANA』の連載を開始。並行して複数の読切作品を発表しており、その中で最も反響が大きかったのが、アニメ化もされた『ばらかもん』である。物語の舞台は作者の出身地の「五島列島」。都会育ちの書道家「半田清舟」はある受賞パーティーで自分の作品を酷評した書道展示館の館長を殴りつけてしまう。それを見かねた父親は人間として欠けている部分を見つけさせるため、「清舟」を自然豊かな「五島列島」に送り込んだ。当初反省する気などなかった「清舟」だったが、明るく元気な少女「琴石なる」を始めとした個性的な島民との交流を通して、気持ちが少しずつ動いていく。「なる」達に振り回される「清舟」の毎日は思わず笑ってしまい、見ているだけで癒される。『ばらかもん』とは「五島列島」の方言で「元気者」という意味。作品のサブタイトルも全て方言でつけられており、作者の地元愛が端々に現れている。都会で型に嵌って生きていた「清舟」が徐々に解き放たれていく姿を見守ってほしい。
坂が多い街として有名な「長崎市」。三方を山に囲まれたすり鉢状の地形をしており、山の斜面を利用して住宅地を作った結果、坂が多くなったとのこと。しかも最大勾配が35%の坂があったり、急傾斜地が15%近い坂があったり、観光名所「グラバー園」の近くには住人と観光客のために斜行エレベーターが設置されている。正に「坂の町、長崎」である。そして、「長崎市」の次に坂が多い「佐世保市」出身のマンガ家が2000年にデビューした「小玉ユキ」である。代表作は2007年から連載されていた『坂道のアポロン』。1966年の初夏、男子高校生「西見薫」は父の仕事の都合で「横須賀」から「長崎県佐世保東高校」に転校した。幼い頃から転校を繰り返している「薫」は、成績優秀だが繊細な性格で人付き合いが苦手。転校初日も緊張の余り吐き気をもよおし、屋上へと向かった。そしてその屋上で同じクラスの「川渕千太郎」と出会い、「薫」の高校生活は思いもしない方向に向かう。小学生の頃からピアノを弾いていた「薫」はクラシックしか弾いたことがなかったが、「千太郎」との出会いをきっかけに「ジャズ」に興味を持ち挑み始めるようになる。「千太郎」の幼馴染の「迎律子」、ミステリアスな上級生「深堀百合香」、「律子」の隣人で兄貴分の「桂木淳一」。それぞれのキャラクターの友情、恋愛、音楽が交錯する青春マンガである。舞台は今から51年前の設定だが、今の私たちが読んでもしっくり来る。友情、恋愛、音楽はどれだけ年月が経っても変わらず色褪せないキーワードなのだろう。「坂」の町で繰り広げられる少年たちの青春時代を一緒に噛み締めよう。
420 Pt.
49 Pt.
58 Pt.
327 Pt.
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