地味な女性とコワモテ男子高校生のアンバランスなカップルが、愛を育むほのぼのラブストーリー。主人公・サチこと花咲さちこは、フラワーショップの経営者だ。26歳だが恋愛経験に乏しく、メガネにひっつめ髪の冴えない風貌である。ある日、仕事中のサチの前に超コワモテの学ラン男が現れ、「あんたを迎えにきた」と彼女に迫る。突然の訪問に恐れおののくサチであったが、彼は10年前に近所に住んでいた、当時は儚げな美少年だった森田啓吾であった。
10年ぶりに再会した啓吾は、ガタイがよく目つきも鋭いヤンキー風の高校生に変貌を遂げていた。啓吾は、幼い頃に交わした「大きくなったらサチを迎えに行く」という約束を果たすべく、彼女に交際を申し込む。サチは一度は年の差を理由に断るが、彼の熱意に心を打たれ友達から交際をスタートさせることに。啓吾もなりゆきでフラワーショップでバイトをすることになり、ゆっくり彼女との恋を育んでいく。本作は、自分に自信が持てず、啓吾のちょっとした言動にも動揺したり深く考え込んだりしてしまうこじらせ女子全開のサチが、彼の真っすぐな愛を受け止めるうちに少しずつ変わっていくさまが微笑ましい。晴れて年の差カップルとなった二人のほのぼのとした恋愛に心温まる。
父子家庭の父と息子、そして花屋の女性が織りなす切ない三角関係を描いたヒューマンストーリー。主人公・コーこと南光太郎は3歳の時に実母を亡くし、父の清志郎(せいしろう)と二人暮らしの高校生だ。再婚する気配を見せず、母親のような振る舞いをする清志郎に反抗する毎日である。ある日コーは、近所にできたばかりの花屋で仕事をする上田真矢(まや)に一目惚れをする。しかし、真矢は彼が知る由もない「ある思い」を抱えていた。
真矢は、高校教師である清志郎のかつての教え子だった。真矢は高校時代、清志郎に密かに恋をしていたが、彼と再会しかつての思いが蘇っていく。しかし、鈍感な清志郎は全く気づくことなく、今も亡き妻への未練を断ち切れずにいた。一方、清志郎から真矢が教え子で30歳だということを聞かされたコーもまた、驚きを隠せずにいた。真矢の清志郎への恋心に気づき複雑な思いを抱えるも、コーは彼女を振り向かせるために父よりも魅力的な男になるべく奮闘する。本作は「15歳も年上の女性」の大人な振る舞いや匂いに翻弄され、恋に落ちる思春期男子の心の機微が丁寧に描かれている。ちょっぴり切ないラストだが、片思いを経て大人の男として成長するコーに男性読者は共感をおぼえるだろう。
男子高校生が、エロ妄想の塊の元ニート女子にロックオンされるセクシーコメディ漫画。主人公・えろ子こと進藤絵留子(えるこ)は、27歳のオタクでニートだった。彼女はSNSでエロい妄想を呟くことを日課にしており、10万人もフォロワーがいる人気アカウントの「進撃のえろ子」という別の顔を持っていた。しかし、貯金も底を尽きニート生活に別れを告げることに。えろ子は、心機一転「便利屋 甘栗」で仕事を始めるが、彼女を待ち受けていたのは衝撃の出会いであった。
バイト初日、掃除の仕事をすることになったえろ子は男子高校生・星クンとパートナーを組むことになる。えろ子は彼が余りにも好みのタイプ過ぎたため、動揺を隠せずにいた。さっそく銭湯の掃除に取り掛かる二人であったが、星クンの一挙手一投足にえろ子の妄想が暴発し、しまいには彼の股間にホースで水をかけて服を脱がせることに成功する。暴挙に走ったえろ子は彼をタオルで包んで密着し、「裸の男子高校生を抱きしめたい」という欲望を果たし満足するのであった。下手すればセクハラとして訴えられる行為であるが、星クンがまんざらでもなく彼女のことを「エロ可愛い聖母」だと思い込んでいるところが面白い。変態だが意外と魅力的なえろ子と翻弄される星クンの恋の行方にも要注目だ。
ひょんなことから同居することになった男子高校生と謎の「お姉さん」のスイートラブコメディ。主人公・空本実(そらもとみのる)はその境遇を除けばごく平凡な高校生だ。ある日、両親が多額の借金を残して蒸発し、一人マンションにとり残されてしまう。借金取りに臓器を売り飛ばされそうになるが、すんでのところで彼を救ったのは隣の部屋に住む「お姉さん」であった。正体不明のお姉さんは借金を一括返済し、実を自分の部屋に住まわせる。
実にとってお姉さんは、挨拶以外言葉を交わしたことのない存在だ。しかし、仕事でストレスを抱える彼女にとっては、その挨拶こそが生きる糧であり癒しであった。彼女は彼を養うことを目的に莫大な貯金をしていたことを告白する。お姉さんの素性も本名も職業もすべて伏せられ、不安を抱えたまま実は同居生活を開始することとなった。お姉さんは、実が彼女を気遣う発言をするたびに感動の余り別室に籠って叫び悶えたり、彼の名前を呼ぶためだけに歯磨きとうがいをしようとするなどエキセントリックな一面がある。当初は戸惑う実であったが、お姉さんの無償の愛を受け取るうちに少しずつ恋心が芽生えていく。二人のピュアな恋模様を微笑ましく見守りたくなる作品だ。
主人公がとあるきっかけで隣人の野球少年に「餌づけ」を始め、その日々を描いたほのぼの料理漫画。28歳で夫を亡くした八雲柊子(やくもしゅうこ)は、誰にも言えない秘密を抱えている。それは、夜な夜な彼女の元に通う隣人の高校生・大和(やまと)翔平に夕食を振る舞っていることだった。無口でなかなか「おいしい」と言わない翔平だが、柊子は彼の食べっぷりと「おかわり」の声を楽しみに米を炊き、腕によりをかけて料理を作るのであった。
柊子は独りになってから、大好きだった料理にも身が入らなくなっていた。ご飯を多く炊いてしまったある日、隣人の翔平の姿を偶然見かけ彼の家におにぎりを作って持って行く。一人暮らしのためコンビニ弁当で荒れた食生活を送っていた翔平は、玄関先であっという間におにぎりを平らげてしまう。久しぶりに手料理を誰かに食べてもらう喜びを感じた柊子は、家にご飯を食べに来るよう提案する。翔平もまた、幼少時から両親が不在がちで家庭の味に恵まれておらず、彼女の手料理で「おいしいご飯」の味を思い出すのであった。食卓を通して彼の成長を見守る柊子は母性に溢れており、ほっこりとした気持ちにさせられる。