日露戦争後の北海道を舞台に描かれるサバイバル漫画。戦時中その強さから「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一。彼は亡き戦友の妻で、幼なじみでもある梅子の病気を治す金を稼ぐため、北海道で砂金採りをしていた。だが、ひょんなことから杉元はアイヌの金塊を巡る騒動に巻き込まれ、アイヌの少女とともに旅をすることになる。2018年、2020年にTVアニメ化。
莫大な財宝を巡り、元軍人、囚人、歴史上の人物が交錯する本作。物語の主軸となる財宝は、北海道のアイヌたちが秘蔵していた約75キロの金塊だ。主人公の杉元は、酔っ払いの男から金塊の噂話を聞かされる。アイヌの者たちを殺し金塊を奪った者が、監獄で他の囚人の体に金塊のありかを示した入れ墨をしたという。だがその後、酔っ払いの男はヒグマに殺され杉元も襲われる。杉元の窮地を救ったのは、アイヌの少女・アシㇼパだった。彼女の父も金塊強奪の際に殺されたという。報酬と引き換えに杉元は金塊をアイヌに取り戻し、仇討ちをするためにアシㇼパと共に旅立つ。本作ではアシㇼパを通じてアイヌの風習や伝承、暮らしなどが語られる。
アイヌの詩人を描いた学習漫画。知里幸恵は、アイヌ人で初めて旭川区立女子職業学校へ進学した。彼女はアイヌ語も日本語も堪能な才女。そんな幸恵は15歳の時に言語学者である金田一京助と出会う。幸恵は金田一と共に、彼女の一生をかけた作品を作り上げる。
本作はわずか19歳で夭逝した実在の詩人、知里幸恵を描いた学習漫画だ。幸恵が生きた時代は、明治末期から大正。江戸時代から続く圧政により、長い間自然と共に生きてきたアイヌの人々の伝統や文化は失われつつあった。そんな中、言語学者の金田一が出会ったアイヌ人の幸恵という少女は、和人(日本人)の文化にも触れていたことで、アイヌ語も日本語も堪能という唯一無二の存在だった。金田一は彼女に、文字をもたないアイヌ語を文字にして残すべきだと勧めた。アイヌ語に対する金田一の情熱に打たれた幸恵は、アイヌの口承の叙事詩「カムイユカラ(神様が主人公の物語)」の謡い手だった祖母から受け継いだ詩を、日本語に翻訳していく。失われつつあったアイヌの口承文芸を現代にまで伝える、『アイヌ神謡集』の成り立ちとその作者をドラマティックに描いた作品だ。
明治初頭の北海道を舞台に描かれる人間ドラマ。旗本武士であった男が、妻を追って北海道へと渡った。だが、彼は誤って函館藩士を殺してしまい指名手配犯となる。男はアイヌ語で「狐」を表す「シュマリ」という名で呼ばわれていた。やがてシュマリはとある取引で自由を手に入れ、北海道の大地で様々な人と出会いと別れを繰り返しながら力強く生きていく。
巨匠・手塚治虫が描く、開拓時代の北海道を舞台に描かれる人間ドラマ。主人公のシュマリは、間男と逃げた妻を追って北海道までやって来た和人。妻を捜して旅をするシュマリは、普段は右手を包帯で縛って使えないようにしている。剣の腕もたつシュマリは、ひとたびその右手を自由にすればたやすく人を殺めてしまう。それを戒めるために、彼は自ら手を封じていた。彼は過去、誤って藩士を殺した罪で政府から追われていたが、己の危険を顧みずにアイヌの少女を村に届けたことから、アイヌの者たちからは友好的に思われている。シュマリは和人でありながらアイヌの者たちの味方として、北海道の地でたくましく生きていく。
アイヌの民話・神話をモチーフにした短編集。それは今日も自然と神に感謝をして生きている、北の大地で暮らす人々の物語。表題の「二つの歌三つの物語」は、老夫婦と暮らす少女のお話だ。ある日、少女は人里に引きとられることになる。だが、養い親の老夫婦にはとある秘密があった。他「鹿神の語った話」「松葉で刺したモレウ」などが収録。
本作はアイヌ民話・神話をモチーフにした短編集であり、どの作品も独立した物語だが、他の作品に登場した人物が別の物語に登場することもあるなど、緩やかな繋がりがある。たとえば「二つの歌三つの物語」の主人公の少女は、「鹿神の語った話」の主人公の少年の妻となっている。そして本作の特徴として、大半の作品にアイヌ神話の特色である動物の姿をした神(カムイ)が登場する。「二つの歌三つの物語」ではカケスのカムイ、「鹿神の語った話」では鹿のカムイ、「松葉で刺したモレウ」では犬のカムイたちだ。どの動物も、アイヌにとって身近な存在であったことがうかがえる。また「チセコロウタラ」という話ではアイヌの婚姻儀式や家族制度について描かれているなど、アイヌの文化面にも注目できる作品だ。
武士の血を引く狩人と、常識離れした巨大熊との死闘を描いた物語。時は明治7年、維新直後の北海道は過酷な土地だった。元会津藩士の檜原東吾は、息子の真之介と共に北海道の札幌で女郎屋の用心棒をして暮らしている。だがある日、巨大な熊が出現し、東吾に熊討伐の依頼が舞い込む。東吾に付添って狩りに出た真之介は、見たこともない巨大熊と対峙することになる。
本作の舞台は明治初期の北海道。新たな大地に夢見て開拓にやってきた者たちは、その厳しい自然に苦難を強いられており、中でも獣による被害が大きかった。主人公の真之介の父、東吾は元武士でありながら非常に野性的な男。彼は狩りを好み、自然に生きるアイヌの者たちとだけは友好的に付き合えていた。それゆえ東吾はアイヌ式の狩りを行いし、息子の真之介にも自らを囮にした危険な狩りを伝授する。そんな中、キムンカムイ(アイヌ語で「山の神」)と称される巨大熊が現れ、東吾は殺害されてしまう。残された真之介は、アイヌの少女であるパイカラと結ばれ家庭を持った。それから十年、幸せな暮らしを営みながらも、真之介は父を殺した巨大熊を追い続けていた。