アニメ制作に挑戦する女子高校生たちを描いた青春漫画。浅草みどりは、設定画を描くことが大好きな芝浜高校1年生だ。子どもの頃から「自分が考えうる最強の世界をアニメで表現したい」と夢見ており、同校のアニメ研に興味を持つものの、1人で入部する度胸はなかった。そこで、アニメに興味はないが金もうけが好きな友人・金森さやかと、アニメーター志望の人気読者モデル・水崎ツバメと共に「映像研究部」を設立。3人でアニメ制作に乗り出す。
本作の見どころは、部員が新入生3人しかいない小規模な映像研究部が、本格的なアニメを手作りで制作していく過程にある。3人は、それぞれの得意分野を生かし、「アニメは設定が命」と考えるみどりが設定画、ツバメが人物画、さやかが外部との折衝を担当するなど、相性も抜群だ。見開きページを使って詳細に描き込まれているみどりのイメージボードは、まるで本物のアニメ作品が実在するかのよう。作中で語られる、映像の編集次第で作品の印象がガラリと変わるという話などからも、アニメ制作のリアリティが感じられる。1枚の絵がアニメ作品へと生まれ変わっていく様子に、主人公たちと一緒にアニメを作っている気持ちが味わえる。
アニメとは無縁の生活を送ってきた中年男性が、タイムスリップした先でアニメーターを目指すことになるヒューマンストーリー。多田アユムは平凡なサラリーマン。娘の婚約者から、高校時代に自分と同級生だった金野一の訃報と、彼がカリスマアニメーターだったことを知らされる。また、娘と婚約者の出会いが、金野一アニメのオールナイト上映のイベントだった。その後ある日、多田は高校時代に突然タイムスリップする。
多田は何故かタイムスリップし、高校生の姿に戻りクラスメイトだった金野と再会。彼のアニメーターとしての才能をあたらめて知り感動すると同時に、彼がアニメの仕事をする気などないことを知る。しかし、金野が人気アニメーターにならなければ、娘と婚約者が知り合うチャンスが消えてしまう。アニメーター志望の同級生・真野ヨウコも巻き込み3人でアニメスタジオの研修を受けるなど、自らもアニメと関わるうちにその魅力に目覚めていく。アニメーターとして働いていた過去を持つ作者・宮尾岳の経験が随所に生かされている作品だ。
1980年代前半のアニメ業界を舞台に、九州から東京へ出てきた少年がアニメーターを目指す青春グラフティ。藤本さとるは、観光目当てで上京してきたアニメが大好きな少年。求人誌で撮影助手を募集広告を見たことをきっかけに、面接を受けることを決意。アニメのセル画を撮影する事務所にカメラマン助手として就職した。慣れない現場で戸惑うばかりだったが、プロの世界に足を踏み入れたことへの喜びを胸に、必死に夢を追っていく。
本作の舞台となるのは、アニメーションの制作工程がデジタル化された近年とは違い、さまざまな工程が全て手作業で行われていた昭和の時代だ。当時は、透明なフィルムに絵を描き込んだ「セル画」も、カメラで1コマ1コマ撮影されていた。主人公・さとるが入社したのもそんなセル画撮影事務所だ。セル画を素早く正確にカメラマンに渡すことはもちろん、傷つけないよう丁寧に扱いながら細かなチェックも行うという作業をスピーディに進めていくことは至難の業。慣れていないさとるは、怒られてばかりだが、さまざまな経験を積んで成長していく。アニメと聞くと作画だけに興味を向けがちだが、完成までには地道な作業も多く、たくさんの人たちによって支えられていることがよく分かる。
双子姉弟が、憧れのアニメ業界でアニメーターとして生きる姿を描いたお仕事漫画。広島県尾道市出身の福山イチ乃と二太は、二卵性双子の姉弟。生まれた時から何をするにも一緒で仲が良いばかりか、将来の夢も同じで共にアニメーターを目指していた。両親はアニメ業界に入ることに否定的だったが、二太が反対を押し切ってアニメーターになったのに続き、イチ乃も同じアニメ会社へ入社する。しかし、憧れていたアニメ業界は想像していたよりもずっと過酷な現場だった。
アニメ作品は、多くの会社が分担して請け負い誕生する。制作に関わる人数や会社数が増えれば増えるほど、大事になってくるのがイメージの統一や校正の作業だ。さらに、進み具合の確認といった関係者間のコミュニケーションも大切になってくる。イチ乃は、完成した動画などのチェック担当だが、時間内ではとても処理しきれない膨大な仕事量に心身ともに追い詰めらる。いつも励まし合ってきた二太ともギクシャクしてしまい、めもちプロも解散してしまう。作者・石田敦子は、アニメ業界で、キャラクターデザインや作画監督を長年にわたって担って来た。それだけに、アニメーション制作の過程はもちろんのこと、細かな人間関係や業界の闇もリアルに描かれている。
若き新人アニメーターがさまざまな壁にぶつかりながらも突き進む姿を描いた成長物語。真田幸は、夢や希望もなく生きてきたが、あるアニメに出合ったことから活力を取り戻し、アニメーターの道を目指すようになる。だが、専門学校に通った経験もなく、技術力や才能も不足気味。就職活動で苦戦するかに思われたが、若さと熱いアニメ愛を買われ、日本で5本の指に入る人気アニメ会社に職を得た。そんな中、仕事が過酷な割に給料が低いという現実と、己の実力不足に思い悩む。
真田は動画マン。原画と原画を繋ぐだけではカクカクしてしまうため、その間の絵を書き足して動作をスムーズに見せる仕事だ。動画検査担当・富士結衣子からきめ細かな指導を受け、動画マンとしての誇りや仕事の奥深さを学んでいく。本作でリアリティたっぷりに描かれているのは作業内容だけではない。作者・花村ヤソが元アニメーターということもあり、無休で1カ月働いても手取り6万8000円という具体的な給料までが描かれている。続けたくても辞めざるをえないアニメーターも多い。日本が世界に誇る文化・アニメーションのクオリティを保つための問題提起にもなっている作品だ。