18世紀のフランスを舞台に、のちの皇帝となるナポレオンの若き日の闘いと立身出世を描いた歴史ロマン。オーストリアのアウステルリッツ近郊では、フランス軍はロシアとの緊張状態にあった。戦場を訪れたのは、「不敗のダヴー」の異名を持つルイ・ニコラ・ダヴー元帥だ。ダヴーは明日の戦闘で履く自分のブーツを磨くよう兵に命じる。彼がブーツを磨き終えると、いきなり薄汚い格好で現れた男がそれを取り上げようとする。続編に『ナポレオン ~覇道進撃~』がある。
兵は男に、泥だらけの手で触るなと怒鳴りつけるが、そこに現れたダヴーに男は「部下の教育がなっとらん‼」と叱りつける。なんと、彼こそがかのフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトだった。ナポレオンは佐官の服に地味なコートを羽織り、丸いサングラスをかけた風貌ゆえに事情を知らない兵士からぞんざいな扱いを受けたり、氷の張った湖に落とされたりなど散々である。しかし当然それはカモフラージュであり、見事な統制と策略を巡らせロシア軍を撃破するのだった。コルシカ島で生まれた貧しいナポレオンが、皇帝にまで昇り詰める過程を描いた本作は、虚実織り交ぜた歴史エンターテイメントとして楽しめる。マスケット銃をはじめとした武器の数々も、当時をうかがい知ることができる重要なファクターとなっている。
19世紀のヨーロッパを舞台に、凄腕少佐が困難や陰謀に負けずのし上がっていく戦場冒険活劇。軍事大国で知られるヴァイセン王国の少佐ベルント・バルツァーは、武勲をあげ順風満帆な出世コースを歩んでいた。ある日バルツァーは、上官から転属を命じられる。何と赴任先は、ヴァイセン南部にある軍事後進国バーゼルラントの王立士官学校だった。軍事顧問として招聘されたバルツァーだったが、時代遅れな訓練を目の当たりにしてショックを受けるのだった。
バルツァーは生徒から、市民の反感への配慮からで一度も砲撃訓練をしたことがないと訴えられる。そこで彼は、自らの着任祝いの祝砲と銘打って砲撃訓練を行う。その結果、市民のクレームを受けるが巧みな対応で追い返す。バルツァーは大らかな指導で学生たちを懐柔していくが、一方で、暴力的な指導をしていたバーゼルラントの第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトを注意したことで目を付けられてしまう。紆余曲折を経てアウグストの信頼をも勝ち得ることに成功するが、それがきっかけでバルツァーは内戦に巻き込まれてゆく。当初は古ぼけたマスケット銃を使っていた歩兵科の装備が、彼の改革でライフルなど当時の最新の武器に替わるなど、軍事後進国の成長を見ることができる。19世紀の政治情勢の描写なども緻密であり歴史マニアには必見の一冊だ。
西部開拓時代のアメリカを舞台に、父の銃を受け継いだ男が銃士となり闘いゆくさまを描いたガンアクション漫画。銃士による決闘が当たり前だった時代。とある目的のため旅をしていた主人公ホープ・エマーソンは、シュワルツの街にたどり着く。一方、ニコラ・クリムゾンなる少女が、故郷の村を「深紅の処刑人」なる組織に村を壊滅させられ、賭博師カイル・パーマーによってこの街に連れられる。この出会いが、ホープの運命を大きく変えてゆくのだった。
ニコラを追ってやってきた深紅の処刑人の銃士、ハンス・ジャイルズの卑劣な行いに義憤にかられたホープは、父の形見である銃を携えハンスに勝負を挑む。不利な勝負かと思えたが、ホープは規格外の速さでハンスの胸元に銃弾を三発打ち込み彼を倒した。その闘いを見ていたニコラは、彼こそが自らを襲う深紅の処刑人を倒す存在と確信しホープと旅をすることを決意。無鉄砲な彼のマネージャーとなったカイルも含めた三人は、それぞれの思惑のもと闘いに身を投じてゆく。伝説のガンマンの息子だったホープが、運命に抗えず銃士となる生き様が壮絶だ。彼の持つ翼のモチーフが描かれた「コルトSAA」の描写も緻密であり、銃好きにはたまらない一冊である。
大開拓時代のアメリカで、ガンマンとなる日本人の少年の半生を描いたウェスタン冒険活劇。舞台は、ゴールドラッシュを迎えたアメリカ。日本人・渡勝之進(わたりかつのしん)はインディアンの亡き妻との間に生まれた一人息子の渡イサムと共に放浪していた。とある街でアウトローに襲われる勝之進だったが、窮地を救ったのは黒人のガンマン、ビッグ・ストーンだった。交流を深める二人だったが、彼らに悲劇が襲いかかる。1973年にテレビアニメ化。
ビッグはかつて彼の母親を殺した極悪盗賊団、ウインゲート一家を追っていた。ウインゲートたちが街に入り、地元のアウトローも含め彼らは大立ち回りを繰り広げる。闘いのどさくさに紛れ、勝之進と赤ん坊のイサムは離れ離れになってしまう。時は流れ、成長したイサムはウインゲートに拾われ悪の手ほどきを受けていた。イサムは彼らを追ってきたビッグと再会し決闘を行うが、闘いの中で彼もまたウインゲートの悪事を認めることとなり、手を切ることを決意する。アウトローに翻弄される少年の運命を描いた本作は、王道のガンアクションとして躍動感溢れるストーリーが魅力的だ。短銃やライフルなど、時代を感じることのできるクラシカルな銃の数々も楽しむことができる。
日露戦争において、勝利をもたらす大活躍をした作戦参謀・秋山真之(さねゆき)と仲間たちが織りなす青春群像劇。時は江戸幕府が終焉し、身分の差がなくなった明治6年。松山にて侍の息子に生まれた秋山淳五郎真之は、貧困ゆえ町人の子供たちに壮絶ないじめを受けていた。路上に食べ物の絵を描き空腹をしのいでいたが、ある日町人の息子が地面に投げた団子を仲間が食べるのを目にし、淳五郎は激昂。持ち前の負けん気の強さをよすがに、彼は激動の時代を歩むこととなる。
当初は町人の子らにいじめられ反発する淳五郎だったが、兄の秋山信三郎好古(よしふる)譲りの知性と根性で跳ねのけ信頼を勝ち得る。その後、兄の計らいで勝山学校に入学することになった淳五郎は、ノボさんこと正岡升(のぼる)と知り合い友情を深めていく。時を経て二人は共に上京し、信三郎の元に身を寄せ東大予備門でさらに研鑽を積む。西洋列強の脅威を恐れた淳五郎は退学し軍の道へ、ノボさんは文学の道へと袂を分かつのだった。本作は、のちの秋山真之となる淳五郎と正岡子規となるノボさんの青春物語だ。後半は淳五郎の軍人としての日々と、日清戦争へと勢いづく日本国の描写が疾走感に溢れている。銃や大砲の武器もリアルに描かれており、歴史を知るにもってこいだ。