現代にタイムスリップした新選組の隊員たちが、悪を成敗すべく暴れ回る痛快世直し劇。元治元年(1864年)、京の都で国家転覆を企む長州藩の根城「池田屋」に「新選組」を名乗る4人の侍が襲撃をかける。義理人情に厚い熱血漢の隊長・近藤勇(こんどういさみ)、頭脳明晰な副長・土方歳三(ひじかたとしぞう)、天才剣士の青年・沖田総司(おきたそうじ)、豪傑な槍の使い手・原田左之助(はらださのすけ)の4人は、次々と長州藩士を斬り捨ててゆく。だが、体調を崩した沖田が吐血し藩士の反撃にあう寸前、4人に一斉に雷が落ちる。
4人が雷に打たれた衝撃から立ち直った時、彼らは全く見覚えのない場所に立っていた。見慣れない建物や人々の格好に戸惑っているうちに、その場所こそが2001年の京都であることが判明する。そして、突然大爆発が起こり京都は一面火の海になった。事件に巻き込まれた4人は、行く先々で騒動を巻き起こし、最終的に史上最悪の爆弾テロ事件の容疑者として指名手配されてしまう。訳も分からず逃亡を続けるが、紆余曲折を経て時の官房長官・閣慎太郎の命を受け、警察の裏特殊部隊となる。現代社会に潜む悪を退治すべく世直しをしてゆく。誰もが知る新選組の隊員が、刀を銃に持ち替え、犯罪者たちと戦うさまが痛快だ。現代の経験やノウハウを学んだ彼らが、再び江戸時代に舞い戻るクライマックスにも注目したい。また、2001年当時の世相を表した格好や風俗も今となっては懐かしいばかりである。
幕末から現代にタイムスリップした侍の日常と、周囲の人々とのふれあいを描いたハートフルコメディ。とある田舎にある小さな学習塾「佐伯学習教室」。そこには一風変わった講師・武市半平太(たけちはんぺいた)がいた。まげを結い和服を着た武市に、生徒ばかりか母親までも夢中である。この日も生徒たちからの施しを武士道からやんわりと断る武市であったが、彼の正体は150年前の土佐からタイムスリップした本物の「侍」であった。2015年に実写ドラマ化、2018年に実写映画化。
半平太は土佐での闘争の果てに失脚し、投獄された。ある日、獄中にいるはずの彼が目覚めると、見知らぬ土地の路上にいた。彼がたどり着いた土地は平成の世の日本で、半平太は車や自動販売機を見てショックを受ける。さまよい歩くうち、空腹のあまり店からリンゴを持ち出し警察に追われたところを、地元の老人・佐伯に助けられる。歴史に詳しい佐伯は、半平太が語る身の上を信じて受け入れ、自宅に住まわせる代わりに自ら経営する学習塾の講師を任せることに。思いがけず「先生」となった半平太は生徒たちに慕われながら、少しずつ現代に馴染んでゆく。武士道を重んじる堅物な半平太と、現代の人々とのふれあいがコミカルで面白い。同じくタイムスリップした坂本竜馬との思わぬ再会も見どころだ。
現代にタイムスリップした光源氏たちが騒動を巻き起こすドタバタコメディ。主人公・藤原沙織は、雑貨メーカーに勤める平凡なOLだ。仕事を終えて部屋でくつろいでいたところ、いきなり窓のすだれをかい潜り、平安貴族の格好をした男が侵入する。沙織は、侵入者を平安コスプレをした不審者だと決めつけ、隙を見て金属バットでその男を殴りつける。不審者として警察に通報するが、現行犯逮捕されそうになった男の供述を聞いているうちに、沙織はその正体に思い至るのだった。2020年に実写ドラマ化。
沙織は男の顔立ちが良いことや独特の格好から、男を「源氏物語」の光源氏だと判断した。正体が判明したことで逮捕を免れた光源氏だったが、頼る宛てはなく、そのまま彼女の家に居候することに。けれど、道ゆく女性に色目を使ったり、抹茶フラペチーノに感動し短歌を詠んだりする彼に、沙織は振り回される。二人は一度は離れ離れになるも、同じく源氏物語からタイムスリップしてきた頭中将(とうのちゅうじょう)のおかげで再会を果たす。沙織は彼らを元の時代に戻すべく、さまざまな実験をするがうまくいかずドタバタな日常を送るのであった。タイムスリップものは現代との乖離に戸惑う設定が常だが、本作は光源氏も頭中将も、SNSやインスタライブに興じるなど現代生活を満喫しているのが面白い。
古代ローマと現代日本の「浴場」事情を、とあるローマ人男性の視点から描いたタイムスリップコメディ。紀元128年、皇帝ハドリアヌスの統治の下、ローマには新しい文化の風が吹いていた。浴場の設計技師であるルシウス・クイントゥス・モデストゥスは、アイディアが古いと言われたことに腹を立て、失業の身だ。友人と気分転換に訪れた公衆浴場でルシウスは、排水口に足を取られ吸い込まれてしまう。2012年にテレビアニメ化。2012年、2014年に実写映画化された。
命からがら彼がたどり着いたのは、「平たい顔」をした民族が湯船に浸かる全く見知らぬ浴場であった。そこは現代日本の銭湯であることが判明し、ルシウスは風呂の文化や構造の違いにカルチャーショックを受ける。古代と現代を行き来することができるようになったルシウスは、日本のアイディアを取り入れた新しい浴場をプロデュースし、ハドリアヌスの庇護を受けるまでに。そして、日本の温泉宿に再びタイムスリップした彼を待ち受けていたのは、思いもよらぬ運命の恋であった。本作は、万国共通である「風呂」の文化の違いが大真面目かつユニークに描かれている。日本の銭湯ではお馴染みの富士山の壁画に感動し、ヴェスビオス火山の絵をローマの浴場に描くなど、エピソードも秀逸だ。
現代女子の台所を預かることになった侍が、癒しの手料理を振る舞うタイムスリップグルメ漫画。慶応2年、大和越部(やまとこしべ)藩士・楢原半助(ならはらはんすけ)は、長州藩討伐のため安芸国に滞在していた。食べ物を求めてさまよっていたところ、運悪く井戸に落ちてしまう。異国のような街の路地裏に落ちた半助は、空腹の余り通りすがりの居酒屋で酒を飲むが、支払いで貨幣が通じず無銭飲食を疑われてしまう。それもそのはず、彼がたどり着いたのは現代の東京・深川だったのだ。
居酒屋での支払いに困る半助を助けたのは、居合わせた女性客・吉川香澄(よしかわかすみ)であった。彼女を自宅まで送り届ける途中、変わり果てた隅田川を見て半助は自分がタイムスリップしたことに気づく。窮状を見るに見かねた香澄は、彼を自宅に泊めることに。半助は、恩返しにとあり合わせのもので「にゅうめん」を振る舞い、香澄を感動させる。元の時代に戻るまでの間「台所番」として居候することになった半助は、周囲の助けもあり少しずつ現代に溶け込んでゆく。冷蔵庫やガスレンジなど台所を取り巻く環境の差異に驚き、カレーやスイーツなどの西洋料理に戸惑いながらも自分のものにする半助の順応力に舌を巻く。彼が作る癒し効果たっぷりの料理の数々にほっこりとさせられるだろう。