『恋する(おとめ)の作り方』、©万丈梓/一迅社
Anime Japan主催の 「アニメ化してほしいマンガランキング」 。
一般応募であるノミネート作品の選定から、本投票が2024年2月1日(木)20:00よりスタートしています(投票期間は3/4にて終了)。第7回目となる今企画では、50作品のマンガ作品が選出されました。
本記事では、ノミネートした作品の担当編集者様へお話を伺い、作品の魅力・良さをたっぷりと語っていただきます。
第8回目にご紹介する作品は、「comicPOOL」にて連載中の『恋する(おとめ)の作り方』です。
『恋する(おとめ)の作り方』のあらすじはこちら→ マンガペディアリンク
万丈梓先生 公式X
【担当編集・鈴木氏 プロフィール】
DMC・REX編集部/comic POOL編集部/comic HOWL編集部 編集長。
担当作は『お前、タヌキにならねーか?』、『恋する(おとめ)の作り方』、『ヲタクに恋は難しい』、『先輩がうざい後輩の話』、『おとなしそうな男子のとんでもない秘密を知ってしまった』など。
ーー 他の作品にはない、この作品の魅力を教えてください。
鈴木氏(以下、鈴木) ヒロインの日浦 美果 (ひうら・みはて)と、日浦の幼なじみ・御堂 賢士郎 (みどう・けんしろう)の関係性ですね。
“男の娘“ジャンルの作品は、どちらかといえば男性読者が好む作品だと思います。
ですが『恋する(おとめ)の作り方』はニッチな扱いではなく、幅広い層の方に読んでいただきたいと考えていました。
そのため女性読者の方にも読みやすいよう、少女漫画の要素をしっかりと入れるなど、親しみやすく手に取りやすい雰囲気が(現状も)作れていると思います。
男性向け、女性向けも然り、読む方によってはジャンルの定義が変わってくるのも、この作品の特徴ですね。BLにみえる方もいるかもしれないし、あるいは少女漫画として読まれている方もいるかもしれません。
書籍を発売する際には、あらかじめターゲットを定めることが多いですが、(『恋する(おとめ)の作り方』は)非常に難しくて。単行本の売上男女比を拝見した際に、今後の方向性を定めてもいいかもしれませんねと(万丈梓先生とも)話していたんです。
ですが1巻目の購買層をみたら、きれいに男女比が割れていて。多くの作品が(男女の)どちらかに偏ることが多いので、作品として非常に珍しいなと思いました。
そのデータを見たときに、これはどちらかに特化する作品に仕上げるのではなく、男性にも女性にも読んでいただけることを作品の強みにして、(制作を)進めていこうと万丈梓先生(以下、万丈先生)ともお話しました。
はじめの頃は、描写が男性向けすぎるな……と万丈先生にご指摘させていただくこともあったのですが、巻数を重ねるうちに、万丈先生ご自身でバランスをとるのが非常に上手になっていて。最近はご本人にお任せをしています。
ーー キャラクターの魅力についてもお伺いできますか?
万丈先生が、日浦のことをものすごく好きで描いていて。万丈先生ご本人がたくさんファンアートを描かれるくらい、キャラクターに対する熱量が高いんですよ。
『恋する(おとめ)の作り方』は、万丈先生の中でもすごくあたためていた作品のようで、そこに対する愛着や思いを、読者の皆様も感じ取ってくださっているのかなと思います。
作品に賭ける情熱は、担当編集の僕自身も感じますし、男性読者から見ても日浦はしっかり可愛くて、魅力的に描かれている。女性読者から見ても、あまりあざとすぎないというか。
また日浦の幼なじみ・御堂もイケメンだけど、メイクが好きな男子高校生という、ある種今っぽさを感じるキャラクターです。
巻数を重ねることに、御堂の深みも増していっているので、こちらも注目していただきたいですね。
ーー 前身『幼馴染(♂)を女の子にしてしまった話』からどのような経緯で連載に至ったのでしょうか?
鈴木 当時の僕自身が、SNS上での反応が良い作品でも、すべてが商業作品として成り立つのだろうか?、という問題を考え始めた時期でもありました。1回目は爆発的に伸びるけど、2回目、3回目と続くと、数が目に見えて落ちてしまうとか。
ただ『幼馴染(♂)を女の子にしてしまった話』は、3、4回目も変わらずずっと評判が良くて。それどころか回を増すごとに、新たなファンをつけていったんです。
これはむしろ商業連載をして、続きを描いていったほうが、絶対にファンの方も喜んでいただけるだろうと感じました。
万丈先生的には、過去に他社から“男の娘“ものでボツを食らったこともあったそうで、この作品を商業でやっていいのか?、世間で受け入れられるのか?という不安も当時は持っていたと思います。
ですが結果として7巻まで続いており、また今回の「アニメ化してほしいマンガランキング」にもノミネートされる作品に成長しています。
改めて(商業で)やっていただけてよかったなと思いました。
ーー 原稿を受け取ったとき、思わず唸ってしまったシーンはありますか?
鈴木 最近すごく増えました。
巻数が進むにつれて、キャラクターたちの内面や人間性を掘り下げて、丁寧に描写していくところがすごくて。
日浦は、以前から万丈先生の熱量がそのまま紙面に出ていたのですが、おそらく最近は、(万丈先生自身が)ほかのキャラクターたちもどんどん好きになっているんだろうなと。
日浦が好きすぎるあまり、もしくは無意識化だったかもしれませんが、またもちろん、初期の頃からどのキャラクターも好きだったとは思うのですが、さらに、より一段と(キャラクターたちが)魅力的になったなと思います。
巻を重ねることに話も右肩上がりでどんどん面白くなって、最近は原稿を受け取るたびに、なにかしらグッとくるシーンがありますね。
ーー もしもアニメ化をするとすれば、期待したいこととは?
鈴木 日浦と御堂の関係性を魅力的に描いていただけたら嬉しいです。
日浦は可愛くて魅力的なキャラクターではあるのですが、ジャンル的にインスタントに消費されてしまうやり方ではない方がいいと思います。
二人の関係性をしっかりと描いていただければ、(日浦の)可愛さがより際立つと思いますし、担当編集としてもうれしいなと思います。
ーー すでに本作を楽しまれている読者の方も多いかと思います。今後の展開について、話せる範囲で教えてください。
鈴木 現在、お話が佳境のため、あまり多くは話せなく申し訳ないのですが、万丈先生自身が、今までため込んできた“超理想”の展開を作品に落とし込もうとしてくださっています。
すでに7巻が発売されている本作ですが、作品の後半から僕が(万丈先生に)伝えられることはないかもなって思っているんです。万丈先生自身で作品のバランスをとれるようになっていますし、絶対にこのジャンルの完成形を自分が描き切らなきゃ……!という意思がとても強いです。
過去に多くの作品でも、日浦のようなキャラクターや属性の子たちが、サブとして描かれることはありましたが、メインのキャラクターとして描いていてここまで続いた作品はほぼないと思います。
作品を描き上げる使命感がめちゃくちゃ強いですし、自分が好きなもの形にしたい、キャラクターを魅力的に描いてあげたいという気持ちをすごく感じます。
作品に対する熱量の持続力がほかの方とは違うなと思うので、それが回を増すごとに丁寧になり、それが原稿にも表れていると思います。
万丈先生がジャンルのパイオニアすぎて、先の展開を口頭のみで聞くと、「あれ?それ成り立つのかな?」と思うことはあっても、実際に描いてもらうと、めちゃくちゃいいんですよ。ああ、これが日浦の見せ方や作品のテーマにとって1番正解だ……!と感嘆します。
読者の皆様とともに、万丈梓先生が描く展開を今後も信頼していきたいと思います。