漁師をしていた主人公が建設会社の会長を助けたことがきっかけで上京し、サラリーマンとなって会社の問題と対峙していくヒューマンドラマ。暴走族の元ヘッドの矢島金太郎は、亡き妻の忘れ形見である1人息子の竜太を育てながら漁師をしていた。ある日、釣りをしていたヤマト建設の会長、大和守之助の船を助ける。お礼をしたいという大和に、金太郎はサラリーマンをやってみたいと答えるのだった。1999年に実写テレビドラマ化、2001年にテレビアニメ化。
矢島金太郎は特殊な経歴の持ち主である。東京にいた頃は関東最大の暴走族、八州連合のヘッドを務めていた。八州連合解散後は亡き母親の地元である高知に戻り、結婚する。しかし妻の明美は産後の経過が悪く亡くなってしまった。1人息子の竜太を育てるため、漁師として働いていたが、ひょんなきっかけから大企業に就職し、東京に戻ってきた。シングルファーザーの先駆けともいえる金太郎だが、仕事と育児の両立には型破りなところがある。保育所に預けるでもなく、幼い竜太を背負って出社する姿は多くの人が想像していなかった姿だろう。金太郎の採用を決めた守之助は、サラリーマンに形はないと言っている。作中の金太郎の堂々とした姿を見ると、働き方はもっと自由なのではと思えてくる。
ガキ大将の主人公が、喧嘩の強さと男気ある人柄から子分を増やしていき、日本中の不良たちを束ねる総番長に上り詰めていく成り上がり不良漫画。戸川万吉は、喧嘩が強いだけではなく男気にも溢れており、仲間から慕われていた。ある日、子分のラッパが喧嘩に巻き込まれ、助けた結果喧嘩に負けてしまう。負けた姿を令嬢である岡野友子に笑われて気分を害した万吉だったが、友子が脱獄囚に攫われたと聞き、助けに向かうのだった。1969年にテレビアニメ化、1971年に実写映画化。
学校に不良がいた時、トップとなる存在を「番長」と呼ぶことが多い。本作の主人公、戸川万吉はその番長の先駆けとなった少年である。喧嘩っ早いがめっぽう強い万吉はそれだけではなく男気があり、面倒見がとても良い。子分のラッパのピンチにはたとえどんな不利な状況であっても立ち向かっていくし、気になる女の子のためには危険を承知で身体を張る。万吉の姿は、硬派な不良そのものだろう。子どもたちからも慕われる姿は、不良少年という言葉から感じる負のイメージは一切なく、正義の味方のようだ。どんな相手にも立ち向かっていく万吉だが、唯一頭が上がらない存在がいる。母親だ。自分よりも大きい相手にも果敢に立ち向かっていく万吉でも、母親には勝てないようだ。
中国後漢末期を舞台に、帝の玄孫を名乗る主人公が天界の竜王の娘に出会ったことで、中華全土を揺るがす大きな戦いに巻き込まれていく中華ファンタジー。漢の景帝の玄孫を名乗る劉備は、ある日近くの村で、若い姉妹が結婚相手を探しているところに遭遇する。不治の病を持つ姉妹を村人たちが追い出そうとする中、諸葛孔明という少年が手を取り妻にと望むが、村人の反対を受けていたのだった。
本作は「三国志演戯」を基にした中華ファンタジー作品である。劉備は出自に誇りを持っていたが、実際には貧しい生活を送っていた。しかし姉妹と出会い儀式に協力したことをきっかけに、何物にも動じず貫禄すら感じる肝っ玉を身に着ける。姉妹との儀式によって、孔明は知識を得たというのに、何故あえて肝っ玉なのかと読者は疑問に感じるかもしれない。だが、劉備はその志と人柄により多くの優秀な人材を得た。そう考えると、カリスマ性すら感じられる「肝っ玉」は、劉備の授かる神からの贈り物としては、最もふさわしいのではないだろうか。三国志の話の流れを知っている読者でも、意外なアレンジに驚かされるだろう。本宮流三国志を堪能したい。
様々な職業に就き働く人を主人公に、職にまつわる悲喜こもごもを描くオムニバスストーリー。中学生の山田鉄男は物静かな性格と小柄で冴えない外見から、酷いいじめを受けていた。教師もいじめを見て見ぬふりをしていた。やがて山田は成長し、千葉東西税務署の職員として働いていた。同窓会に出席し、かつて自分をいじめていた主犯格の男、剣崎とおるの羽振りの良さを見た山田は、教育を任された新人の岸田光男と共に、密かに剣崎の身辺を調べ始めるのだった。
1つの職業につき3話ほどで完結する、オムニバス作品である。登場するのは郵便配達員や介護福祉士、日雇い労働者や探偵など様々。身近な職業が多く扱われており、あくまでも日常の延長線上として仕事が描かれている。第1話は税務署職員の山田鉄男を主人公とした物語だ。山田は中学生の頃から成長しても、外見はあまり変わらない。小柄で無表情、人付き合いも希薄で、新人の岸田からは高卒という学歴も相まって少し見下されているが、実際は高い成績を誇っており周囲の職員からは一目置かれている。剣崎は過去のいじめの件について根に持っている部分はもちろんあるが、職務には忠実で公平だ。権力に屈しない山田の姿に、職務を全うしようとする人の矜持を感じる。
不老不死の薬を探してくるように命じられ海を渡った主人公が、苦難の末に自身も不老不死となり、歴史の流れを見守っていく歴史ファンタジー。秦の始皇帝より不死の仙薬を持ってくるように命じられた徐福。東方の海の中にある島、蓬莱に仙薬があると確信した徐福は、海を渡ることになる。仙薬を得られなければ待ち受けているのは死。無事に海を渡った徐福は、不老不死の研究を始める。しかし、薬の完成を待たず、始皇帝の訃報の知らせが舞い込むのだった。
始皇帝は、晩年は死を恐れ不老不死の仙薬を求めた。徐福は始皇帝に命じられ、船で蓬莱に渡った。蓬莱とは日本のことである。縄文から弥生に移るくらいだった当時の日本人にとって、徐福は未来人のように映ったのではないだろうか。徐福はやがて自身も不老不死の力を得て、日本や世界の歴史を見守っていくことになるが、本作には不老不死の力を得た歴史上の人物が登場。厩戸皇子と卑弥呼、織田信長が一堂に会するというと、なにやらドリームマッチのようだ。一度は表舞台から離れた彼らがそれぞれの方法で歴史に介入するのは、己の野望はもちろんだが国の行く先を憂いてのことなのだろう。もしかしたら今もと想像するのも楽しい。