離島の診療所を舞台に、東京から赴任してきた若き医師と島民たちが絆を深めていくヒューマンストーリー。「コトー」こと五島健助は、天津堂大学付属病院に所属する外科医。しかし、医療ミスの責任をとり、離島の古志木島に飛ばされる。五島は、島への移動中に船酔いで嘔吐するなどして、到着早々、島民たちの反感を買う。それもそのはず、これまで島に派遣されてきたのはヤブ医者ばかりだったため、島民たちは医師に対して強い不信感を抱いていた。2003年にテレビドラマ化。
本作では、医療の最前線で活躍していた有能な医師が、一転して離島の診療所で働くことになる。五島は、島民になかなか受け入れてもらえず、診療所には閑古鳥が鳴くばかりだった。しかし、急性虫垂炎で命の危険に瀕していた漁師の息子・原健裕を、とっさの判断と見事な手術で救ったことから信頼を獲得。病気を治すだけでなく、患者の心にも寄り添う五島は、いつしか島民たちから慕われるようになる。名前は五島なのに、「Dr.コトー診療所」になってしまったのは、手術のお礼にと診療所の看板を贈った島民が、「五島」を「コトー」と勘違いしていたからだ。五島の「患者にとって病気を治すだけが医者の務めではなく、心のケアこそが大切なのだ」との言葉が強く心に響く。
人類が石化してしまったところから始まるSFサバイバルファンタジー。16歳の高校生・大木大樹(おおきたいじゅ)と石神千空(いしがみせんくう)は仲の良い幼馴染。単純で筋肉系男子の大樹と、真理を突き詰める天才型理系男子の千空は、まさに凸凹コンビだ。大樹は、かねてより好意を抱いてた小川杠(おがわゆずりは)に告白するため、彼女を呼び出す。しかし、告白しようとした瞬間、空が光り出し、地球上の人類が全て石化してしまう怪現象が起こる。2019年にテレビアニメ化。
本作に登場する「Dr.」は千空だ。高校の科学部部長である彼は、実験が大好きで知識も豊富な極めつきの科学オタク。超合理的で生真面目な性格をしている。石化して仮死状態だった数千年間も、正確な暦を把握するため秒単位で時間を数え続けていたほどだ。一方の大樹は、杠への気持ちを強く抱くことでなんとか思考力を保ち、千空に続いて石化から解放される。2人が再会を果たした時、地球上から人類が消え去ってすでに約3700年が経過していた。千空は、石化の原理を科学的に究明し、ゼロの状態から日本に文明を再建すると宣言。若者だけの世界作りを目論む武力派グループと敵対する中、石化を解く「復活液」を開発するなどして新しい世界作りに挑む。
手塚治虫の『ブラック・ジャック』に登場する、Dr.キリコを主人公としたスピンオフ作品。キリコは、患者を救うブラック・ジャックとは対極で、安楽死を生業とする医師だ。ゲリラ戦の最前線で軍医をしていたが、重傷を負って苦しむ兵士たちから「死なせてくれ」と懇願されて安楽死の処置をした経験から「安楽死専門の医師」となった。長身で痩身、銀髪で隻眼の風貌から付けられた呼び名は「白い死神」で、施術料は500万円。自らが開発した安楽死の機器「キリコ・オリジナル」を使い、患者を安らかな死に至らしめる。
主人公のDr.キリコは安楽死専門の医師ではあるが、本人がいかに望もうとも、条件を満たさない患者への施術は拒む。その条件とは「回復の見込みがない、生きていることが苦痛、本人が死を望んでいる」の3つ。自殺ほう助や、安楽死を悪用する殺人に関しては一切手を下さない。施術料500万円とは高額だが、回復の見込みがない祖母を安楽死させることに同意した小学生の男児には、「施術料の代わりにお前の好きなものをもらう」と告げ、おもちゃの刀を受け取るなど情に富んだ一面も。医療技術の急速な発展とともに、生死にまつわる問題がクローズアップされることも多くなった現代。安楽死というテーマを通じ、漫画の枠を超え、命の尊厳を問う作品だ。
救急医療現場を舞台に活躍する異色の女性医師を描いた医療漫画。杏野朱羅(あんのしゅら)は、医師としての巧みな技術に加え、持ち前の気性の激しさから、周囲から「アシュラ」と呼ばれている女性医師。どのような重症患者でも諦めずに受け入れ治療を施すバイタリティの持ち主だが、病院内での評判はすこぶる悪い。それは、気が強いだけでなく、相手が誰であろうと自分のスタンスを1ミリたりとも変えないからだ。アシュラは、ヤクザ組長の命を救ったことで病院側との対立をより深め、次第に孤立していく。
本作のヒロインは、救急現場に運び込まれる重症患者を「獲物」と捉え、治療して助けることを「仕留める」と表現するなど、闘争心丸出しの凄腕医師。破壊神を意味する「アシュラ(阿修羅)」のあだ名がぴったりだ。彼女にとって、患者の命を助けること=闘いに勝利することだ。勝利をもぎとるためには、どのような手段をもいとわない。医療現場が舞台の作品は数多くあれど、「親分を助けろ」と凄むヤクザの脅しも何のその、主人公がここまで自己中でエゴを通し続けるという設定も稀有だろう。アシュラは、周囲と協調できず院内で孤立せざるを得なくなるが、本来、阿修羅神とは、幾度勝負に敗れようと蘇っては永遠に闘い続ける存在。異彩を放つヒロインに平穏の日々など似合わない。
天才天文物理学者と呼ばれた男が、日本のゴルフツアーに参加し、型破りのプレーで観客の度肝を抜くハチャメチャゴルフコメディ。泉台風(いずみたいふう)は、女たらしでお金にもだらしないどうしようもない男。しかしノーベル賞候補に名前があがったこともある、優秀な天文物理学者だった。そんな台風が、ケンブリッジ大学物理研究所長の制止も意に介さず、突然日本に帰国。ゴルフツアーに参加するや否や、ぶっ飛んだプレーを連発して周囲をあ然とさせる。
主人公・台風は、優秀な頭脳を持つ博士だ。剛健な身体つきながら口髭を蓄えるなど、一見おちゃらけた印象ではあるが、ここぞという時の集中力には並外れたものがある。周囲からは、「畑違いのゴルフツアーに参加した」と思われていたが、ドライバーの飛距離やパットやショットの正確さにおいては、世界の名立たるプロゴルファーにも引けを取らない。そんな台風は、帰国した日本で泰明高校の講師となる。滅茶苦茶な講義で教室中をパニックに陥らせる場面は愉快痛快だが、自分の人生を歩む姿を示すことで、落ちこぼれた生徒たちを勇気づける。その後、ゴルフ一本に絞る決意をした台風は、マスターズ・トーナメント出場を目指して再び海外へ。コメディタッチながらも「人が何かに挑戦することの意義」を教えてくれる作品だ。