漫画家、横山裕二による農業エッセイ漫画。横山は編集長からの指令を受け、北海道の十勝で自ら育てた野菜でカレーを作り、世話になった人にごちそうするという企画に強制参加させられる。横山が土地を買うところから始まって、実際に農業を始めていく様子をコミカルなタッチで描き出す。
本作はカレーライスの食材自給率100%を目指して、漫画家である横山が北海道の十勝へと実際に移住してしまうという、異色の農業エッセイ漫画だ。ある日、編集長に呼び出された横山は、これまでお世話になった人に日本一おいしいカレーライスをふるまうため、北海道で畑を耕して野菜をイチから育てるように指令を受ける。北海道に旅立った横山だが、まずは農地を借りようとして挫折する。「農地法」という法律の壁が横山の行く手を阻んだのだ。しかし、「市街化調整区域」という土地であれば、家庭菜園にできるとわかった横山は、ついに土地を買い上げ、十勝に移住することを決意する。カレーという身近な料理を自給自足するために開梱から始めねばならなくなる、そのギャップが笑える一作だ。
『鋼の錬金術師』などの人気作で知られる漫画家、荒川弘による農家エッセイ漫画。北海道の農家で生まれた荒川が、漫画家になるまでに体験した農業に関わる様々な出来事を、実際の農業従事者ならではの専門的な知識を交えて面白おかしく語っていく。
「我が国の食糧自給率はわずか40%!!」というハイテンションな熱弁からはじまる、荒川の実体験をもとにしたエッセイ漫画が本作だ。北海道開拓民のころから続く農家の血筋に生まれついた荒川は、漫画家になる前は7年間農業に従事していた筋金入りの農民だ。そこで紹介されるのは、農業の当事者ならではの真に迫ったエピソードだ。芋の収穫時にポテトチップスの袋が出土されたという笑い話から、全国的に牛乳消費が減っているときには生産調整の命令が下り、酪農した牛乳を捨てなければならない悲しみなど、多彩なエピソードが軽妙に語られていく。食料自給率のような普段は意識しないことまで含めて、農業を身近に感じられる珠玉のエッセイ漫画だ。
秩父地方の農村を舞台に展開するラブコメ漫画。主人公のワコこと吉川和子は、東京に住む調理師専門学校の生徒。ある時、キャンプに行った秩父の山中で農家の後継ぎ息子である小野誠と出会い、一目惚れ。ワコは農作業を手伝うという口実で、誠の家に転がり込む。
ワコは食料自給率を上げるというよりは、押し下げてしまいそうな女性だ。ワコは秩父で農家を営む誠に一目惚れして、彼の家に転がり込んで農作業を手伝う。とはいえワコは農業未経験者。苗を均等に置いていくこともできず、里イモの収穫時には、里イモをことごとくクワで破壊してしまう。積み上がるのはクズイモの山だ。ワコは自分が役立たずであることに少しだけ落ち込むが、持ち前のウルトラポジティブな性格で誠に迫り、ワコと誠は両思いになる。手伝いから始めた農作業も本腰を入れて取り組むことに。果たしてワコは、日本の食料自給率を支える担い手のひとりになれるのか。ワコの成長を楽しみながら読んでほしい。
食料自給率に大きく関わる「ボクらの第一次産業」をテーマにした川原泉の短編漫画傑作集。フルーツ農園、酪農牧場、ブドウ農園を舞台にした3部作の他に、短編3本が収録されている。表題作「美貌の果実 10月はゆがんでる」は、甲州で小さなワイナリーを経営する秋月家の物語。主人公、秋月奈苗は父兄が事故で他界したのち、農園を切り盛りしていたが、彼女の前に葡萄の精が現れる。
甲州ブドウの起源は、大仏建立で名高い行基という高僧の前に現れた薬師如来が、ブドウの房を手にしていたという伝説に由来する。「美貌の果実」には、秋月家が経営する甲州のブドウ農園を支えてきたという「葡萄の精」が登場する。女子高校生の奈苗は父兄が他界し、母とブドウの世話をしている。奈苗の苦労を見かねた行基の霊は、眠っていた葡萄の精を目覚めさせ、農園の手伝いをさせることにした。葡萄の精は精霊という不思議な存在でありながら、さも当然のように秋月家の母子に受け入れられて農作業をし、共に食卓を囲む。先祖代々の土地を耕す秋月家にとって、土地に住む精霊もまた当たり前にある存在なのだ。人と土地の特別な絆をさらりと描いた名作だ。
鬼の食料として育てられた少年少女が、鬼から逃れて自由を得るために戦うダークファンタジー漫画。主人公の少女エマは、グレイス=フィールドハウスという孤児院で生まれ育った。エマは「ママ」と慕われる優しい養母のもとで幸せな生活をおくっていたが、ある時、自分たちが鬼に食べられるために飼育された「食用児」であることを知ってしまう。
本作の舞台となるグレイス=フィールドハウスは、たくさんの子供たちで賑わう孤児院だ。そこは、あるものの食料自給率を高めるために運営されている。エマは、毎日のテストでフルスコアをマークするほど知能に優れた優良児。何の不満もなく幸せに暮らしていた。ところがエマは、里子に出されたはずの少女、コニーが殺され、鬼に引き渡される場面を目撃してしまう。この孤児院の正体は、知能に優れた高級な人肉を収穫するための人間農園だったのだ。将来のためと言われて行われていたテストも、より美味な高級食材へとランクを上げるための施策に過ぎなかったのだ。エマは孤児院の子供たちを救うために、この人肉農園から脱出することを決意する。