妻から不倫を疑われているサラリーマンと、大学時代の後輩で調査員との、再会から始まる大人のラブストーリー。大伴恭一は女性から言い寄られることが多く、断ることができずに肉体関係を持つことが多かった。ある日、妻から不倫を疑われていた恭一の前に、興信所の調査員をしている男性で大学時代の後輩、今ヶ瀬(いまがせ)渉が現れる。不倫をしていた事実を掴んでいた渉は、ある取引を持ち掛ける。大学時代から密かに恭一を想っていた渉は、恭一の身体を望んだのだった。2008年にドラマCD化。2020年9月に実写映画公開予定
大人の恋愛ドラマである。何も知らずに頁をめくると、思わぬ展開に驚かされるのではないだろうか。妻のある男が不倫をしていることが、大学時代の後輩の男性にバレた。この時大概強請られるのはお金なのだが、要求されたのは肉体関係である。そう、本作はBL(ボーイズラブ)作品なのだ。肉体関係が始まったからといって、恭一と渉が突然相思相愛になってラブラブ展開、とはならない。互いに距離がありながらも、静かに心が引き寄せられていく。その過程を丁寧に描いている。本作の大きな特徴は、恭一と渉だけの関係に終始するのではなく、恭一の女性との関係もしっかり描いているところだろう。妻の知佳子や部下の岡村たまきとの関わりも、恋愛ものにありがちな当て馬的なものではない。現代社会で起きているリアルな恋物語である、という印象が強く感じられる。しっかりと性描写があるBL作品なので、実写と聞いて驚いた読者も多いだろう。繊細で美しい世界が映像でどう表現されるのかにも注目だ。
腐女子の主人公と、ゲームオタクの幼馴染の交際をコミカルに描くオタクラブコメディ。桃瀬成海(なるみ)はBL大好きな腐女子。付き合って1年になった彼氏に腐女子であることがバレ、別れることに。別れた彼氏と顔を合わせるのがつらすぎて転職した先に、小・中と学校が一緒だった幼馴染で、重度のゲームオタクである二藤宏嵩(にふじひろたか)と再会する。今度はオタクであることを隠し通そうと決めていた成海。飲みに行った帰り、ゲーム友達だと思っていた宏嵩から思わぬ告白を受けるのだった。2018年4月から6月にかけてテレビアニメが放送。2020年2月実写映画が公開された。
オタクは「推し」が生きているだけで幸せ、予兆もなく推しが死んだらこの世の終わり。またリアルイベントがあればチケット取得に奔走し、ゲームのイベントではガチャに翻弄されリアルマネーと涙を落とす。オタクというものはそういうものだと、本作を読むと改めて思うだろう。とにかく作中に登場する主要キャラは何らかのオタクなので、うなずける場面が多い。成海は全力でオタク女子だがオタバレを恐れており、一般人に擬態している、というところもリアルだ。擬態を余儀なくされている社会人女子の読者には特に共感ポイントが多い。成海と宏嵩は交際をしているが、男女どちらからの目線でも、理解があり一緒に楽しんでくれる相手がいるというのは、羨ましいと感じるだろう。趣味に没頭している2人が突然ラブな展開になったりするのも、正直ニヤニヤが止まらないポイントだ。いいぞもっとやってと言いたくなるところだ。テンションの高い作品だが、実写でもテンションの高さは健在。オタクだからこその恋愛物語をご堪能あれ。
自分たちが育っている場所の秘密を知った孤児院の少年少女たちが、生きるために脅威に抗い戦い続ける姿を描く、ダークファンタジー。孤児院「GF(グレイス=フィールド)ハウスでは、38人の子どもたちが生活していた。11歳のエマ、ノーマン、レイは外の世界への興味と不安を抱きながらも、優しい世話係の「ママ」との生活に満足していた。ある日、年少のコニーが里子に出されることになった。忘れ物を届けようとした2人は、外の世界と自分たちが住む場所の真実を知ってしまう。2019年1月テレビアニメ化、2020年12月に実写映画公開予定。
子どもたちは孤児院で暮らしている。世話係のママは優しいし、食事はきちんと出る。寝床は暖かいし、強制労働があるわけでもない。そんなのびのびとした環境で生きている子どもたちが、荒んでいるわけがない。しかし現実は残酷だ。幸せなGFハウスでの生活が描かれた後に待っている展開の重さに、思わずうめき声が漏れる。GFハウスで暮らせるのは12歳まで。最年長であるエマ、ノーマン、レイはもう11歳だ。彼らが知った「自分たちが食べられるために育てられていた」という現実は受け止めきれるものではない。しかし彼らは、生きるために動き出す。物語が進むにつれ、この世界がどういう仕組みで成り立っているのか、人を食べる鬼が何者なのか、徐々に明かされていく。エマたちの生きようともがき続ける姿と、強い意志を持った瞳に魅了されるだろう。子どもたちが大変な目に遭う作品なので、実写映画もどこまで表現できるかが気になるポイントだ。どうか彼らが心安らかでいられる場所が得られますようにと願わずにはいられない。
友人の保証人になったことで多額の負債を抱え込んだ自堕落な青年が、返済のために金融会社が主催する、命がけのゲームに挑んでいくギャンブル漫画。定職につかず、自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)。ある日、突然訪ねてきた金融業者の男から、カイジが借金の保証人をしていた男が逃げたと知らされる。利息は膨れ上がり、返済しなければならない金額は385万円。返済のアテがないカイジに、男はある提案をする。アニメほかメディアミックスが多岐にわたり、2020年1月に実写映画の3作目が公開された。
ギャンブル漫画であり、パチンコや麻雀といったメジャーなものも行われるが、いずれも決して生易しいものではない。例えば麻雀なら全自動麻雀卓での変則2人麻雀。性質上相手からのロンでしか和了(あが)れないため、条件は通常の麻雀よりも限りなくシビア。パチンコも1玉の値段設定が高い分、台の設定がめちゃくちゃなうえ、誰でも一発逆転を狙いたくなるような「沼」ルールがある。他にもジャンケンやくじ引きなど、既存の遊びやゲームのルールを、限りなくシビアにしたものが登場するのだが、読んでいる分には楽しい。実際に挑戦したいかと言えば、誰でも無理だと答えるだろう。命とお金は天秤にかけられるものではないが、本作ではあえて天秤にかけている。だからこそ緊張感が生まれ、勝ち得た者だけが大金を手に入れることができるのだ。2020年1月公開の実写映画3作目は、作者福本伸行がシナリオを担当したオリジナルストーリー。新しいゲームも登場し、観客を極限の緊張状態に落としてくれるだろう。
タイプの違う少女2人が偶然出会って友人になり、それぞれの恋を応援し成長していく青春ラブストーリー。人見知りな市原由奈(ゆな)。高校進学を前に、友達が引越しをしてしまうため、駅に見送りにきていた。同じように見送りに行く予定が、財布を忘れて困っていた少女、山本朱里(あかり)に声をかけられる。お金を貸した由奈は、次の日再び会うことになった。話をしていくうちに2人は、実は同じ年齢で同じマンションに住んでいたと知り、仲良くなっていくのだった。2020年5月にアニメ映画、2020年8月に実写映画公開予定。
男女の四角関係の物語であり、女子の友情物語でもある。由奈と朱里はタイプの違う少女だ。由奈は大人しくて消極的。少女漫画が大好きで、物語のような恋に憧れを抱いている。朱里は明るく社交的な性格で、だれとでも仲良くなれる。恋愛にはあまり夢を見ないタイプのため、由奈とは正反対。考え方が違うと自然と離れるものだが、由奈と朱里は馬が合うらしく、高校では親しい友人になった。そして互いの恋愛の悩みを打ち明けあう仲になるのだが、ここから話がややこしくなる。由奈が好きなのは、クールイケメンの理央(りお)で、彼は朱里の義理の弟。朱里が気になっている乾(いぬい)和臣は由奈の幼馴染で、彼女が唯一親しく話せる男子でもある。互いに無関係ではないだけに、心惹かれながらも遠慮し悩む。ままならない感情を持て余しながらも互いを気遣う彼らの心の動きに、心が温かくなるだろう。アニメと実写の公開時期は近いが、それぞれ違った魅力がある。恋と友情、美しき青春の一ページを見逃せない。