近江屋事件で暗殺された坂本龍馬が、事件後も生き延びて活躍をする姿を描く空想歴史漫画。大政奉還で主導的役割を果たした坂本龍馬は、日本を近代国家に生まれ変わらせるべく、着々と構想を練っていた。そんな龍馬を疎んじる勢力は、密かに彼の暗殺を計画し近江屋で龍馬を襲撃する。しかし、同志にして親友である中岡慎太郎の命懸けの機転により、龍馬は辛うじて生きながらえる。
もしもあのとき、あの人が死ななかったら。歴史好きなら誰もが一度は考えるだろう。本作は、そんな「もしもの世界」を描いた空想歴史漫画だ。物語は、坂本龍馬が暗殺された近江屋事件から幕を開ける。京都見廻組による犯行という所までは史実通りだが、本作では西郷隆盛と薩摩藩を黒幕とする隠謀説を採用するといった、「もしも」以外の部分でも、大胆な解釈が行われている。事件当日、西郷は倒幕軍三千を率いて京の都を目指す道中にいるはずだった。ところが、西郷は影武者を仕立てて単身京へ急行。龍馬暗殺を首謀したというのだ。しかし、暗殺を免れた龍馬は、薩摩による日本中を巻きこむ内乱を防ぐべく、奔走していく。
幕末の志士である坂本龍馬の生涯を、史実とフィクションを交えながら描いた時代漫画。竜馬(※本作では龍馬ではなく竜馬表記)の出産前夜、坂本家の三女である乙女は、夜空を彩る彗星に誓いを捧げる。「生まれてくる子どもを男にしてくれるなら、私が強い侍に育ててみせる」と。彼女の願い通り、弟の竜馬は誕生する。優しい心と大きな器を持つ彼は、次第に周囲の人々を惹きつけていく。
本作における幼少期の竜馬のエピソードには、フィクション要素が数多く存在する。例えば、「人斬り以蔵」の異名で知られる岡田以蔵と竜馬が幼馴染みで、竜馬が彼からイジメを受けていたという関係。あるいは、幼少期の竜馬がアメリカ人漂流者と出会い、海運業への憧れを抱くエピソード。もっとも、こいうった創作要素が、歴史上の偉人である坂本竜馬を、より身近で親しみやすい人物に感じさせてくれる。原作者の武田鉄矢は、竜馬が興した組織「海援隊」という名前のバンドでデビューを飾ったことからもわかるように、坂本竜馬を敬愛してやまない。本作は、そんな武田鉄矢の竜馬愛が存分に詰まった物語と言える。
坂本龍馬が京の都で極秘に人斬りを繰り返していたという、大胆な設定で展開される時代劇アクション漫画。物語の舞台は幕末の京都。池田屋襲撃で世間にその名を轟かせた新選組は、不可思議な事件に頭を悩ませていた。手練れの隊士たちが、何者かによって次々と闇討ちされていたのだ。その数は十人を超え、なおも増える一方。事態を重く見た新選組は謎の下手人を捕えるべく、必死に捜索を行っていく。
坂本龍馬は小栗流と北辰一刀流の目録を修め、千葉道場の塾頭も務めたともいわれており、剣術家として優れた実力の持ち主だった。もっとも、龍馬は殺生を嫌い、自衛以外の目的で剣を振るうことはなかったようだ。ところが本作では、そんな龍馬を残忍な人斬りとして描いている。彼に闇討ちされた新選組は、死んだ隊士を「士道不覚悟で処分した」と発表しながら、その不名誉な事実を隠すため裏で必死に下手人を捜索する。新選組の苛烈な隊規の評判は、龍馬による闇討ちを隠す苦肉の策が産んだものだった。さらに龍馬は見廻組をもその手に掛け、京を守る二大組織を敵に回す。世に知られる坂本龍馬像を根底から覆す、斬新な切り口の怪作だ。
史実にフィクションをたっぷりと盛り込んで、坂本龍馬を中心とする幕末の志士たちをユーモラスに描いたギャグコメディ。二頭身のデフォルメキャラによる4コマ漫画に、精緻で写実的なイラストを織り交ぜる。物語は、坂本龍馬が剣術修業のために故郷の土佐を旅立ち、北辰一刀流の千葉道場がある江戸に向うところから幕を開ける。
本作の表紙に描かれているのは、刀を片手にリボルバー拳銃を構えるクールな坂本龍馬の姿。シリアスな物語を予想させるが、ページをめくったその先は、かなり緩めの4コマ漫画である。本作の特徴は、デフォルメキャラで物語を進めつつ、要所要所でいきなりリアルタッチの描写を大ゴマで挟みこむこと。そのギャップの激しさが、独自の笑いを生みだしている。ギャグ作品ということもあり、史実と異なる展開も多い。例えば、龍馬が剣術修業をした千葉道場の娘・佐那子との出逢いでは、彼女が不細工な姿で登場する。龍馬に思慕する佐那子は、兄に自分の顔を殴らせて奇跡の整形を遂げる。龍馬を含め、奇想天外な幕末の著名人たちの姿が楽しめる作品だ。
坂本龍馬の生涯を、その幼少期から丁寧に描いた時代漫画。物語の冒頭、当時はまだ麟太郎と名乗っていた勝海舟が、花火見物の最中に「天より星が降りてきた」とつぶやく。それこそ、坂本龍馬が誕生した瞬間だった。幼少期の彼は、気弱で勉強も苦手なイジメられっ子ながら母思いの優しい少年。そんな龍馬が後に偉業を成し遂げる。
坂本龍馬はその偉業とは裏腹に、幼少期は寝小便が治らず勉強も苦手。気弱な性格で周囲から馬鹿にされていた。その一方で、独自の視点を持つ、スケールの大きい少年として描いている。海の向こう側に興味を抱いた龍馬は、廃材で自作した船に乗り、大シケの大海にこぎ出す。また、土佐藩における上士と郷士の厳しい身分の差に疑問を抱いた龍馬は、他の藩が本当に違うのかを確かめるため、死罪もあり得る「国抜け」を行う。フィクション要素も多いが、なんでも自分の目で見てみたいという好奇心と行動力に溢れた幼き龍馬の姿は、後の彼の活躍ぶりを覗わせる。