フィギュアスケートのメッカ・名古屋市を舞台に、挫折だらけの青年と少女が世界を目指す銀盤下剋上ストーリー。26歳のフリーター・明浦路司(あけうらじつかさ)は、アイスダンスで全日本選手権に出場経験があるも、金銭的な理由で競技を諦めていた。ショースケーターを目指すが、実績に乏しくオーディションに不合格続きである。ある日司はスケート場で、受付のお爺さんの好意で無償でリンクに出入りする少女・結束(ゆいつか)いのりを見かけるが、彼女こそが才能の原石だった。
いのりは姉の影響でフィギュアスケートに強い憧れを持っていた。しかし姉は結果が出せず辞めたため、母親に内緒で独学で滑っていたのだ。司はいのりのスケートへの熱意を知りクラブへの入会を強く勧める。一方、司もかつてのパートナー・高峰瞳の勧めで「ルクス東山FSC」のコーチの打診を受ける。そこに現れたのは、母親に連れられたいのりだった。入会に反対する母の前でいのりは初心者とは思えない滑りを披露した。泣きながらスケートへの愛を訴える彼女に心を打たれた司は、自らがコーチになると宣言。二人は全日本を目指し一歩を踏み出してゆく。フィギュアの世界は華やかであるがトップになれる者はごく一握りだ。幾多の困難を乗り越え才能を開花させるいのりを見守りたい。
かつて天才と言われた少年フィギュアスケーターが、己の運命と向き合い再びカムバックするヒューマンドラマ。主人公・橘龍希(たちばなたつき)は、交通事故に遭い意識不明となっていた。1年後奇跡的に目を覚ますが、帰宅した彼を待ち受けていたのは多くのマスコミだった。不審がる龍希に、母親は彼がかつてフィギュアスケート選手だったことを告げ試合の映像を見せる。そこに映っていたのは、世界ジュニア選手権の舞台で別人のように輝く龍希だった。
世界ジュニアで金メダルを獲る自分に龍希は感動するが、ひょんなことから壮絶な過去を知ってしまう。実は彼は世界選手権の舞台でミスを連発し、演技を途中で止めるという大失態を犯していた。「日本の恥」と大バッシングを受け、その直後に事故に遭っていたのだ。それでも龍希はスケートを諦めきれず、取材に訪れたマスコミに再びカムバックすることを宣言する。復帰への道は前途多難だったが、かつて天才の名をほしいままにしていたコーチ・藤堂竹虎と出会い大いなる一歩を踏み出してゆく。華やかな世界の裏側で挫折をおぼえた少年が、自分を取り戻してゆく過程が感動的だ。選手に浴びせられる誹謗中傷など現実で起こっている問題を想起させる要素もあり、考えさせられる。
氷都・苫小牧を舞台に、夢を断たれた少年がアイスホッケーでインターハイを目指す情熱スポ根漫画。将来を嘱望された天才フィギュアスケーター・白川朗(ろう)は、全日本ジュニア選手権の前日に母親を交通事故で亡くす不幸に見舞われる。そして朗はショートプラグラムの採点への不満からキスアンドクライで大暴れし、失格となった。フィギュアスケーターとしての道を捨てた朗は、妹と共に母方の祖父が暮らす苫小牧へ。そこで新たな人生の目標に出合うのだった。
朗が苫小牧で見たものは、大きな池が凍った天然のスケートリンクだった。フィギュアへの決別の気持ちを込めて池のリンクで滑る朗が、池を我が物顔で使う天才ホッケー兄弟・源間浩一と源間慶一が現れる。朗は彼らに勝負を挑むが、敗れた挙句ゴールポストを池に沈めてしまう。弁償を命ぜられ近くの中学校からゴールポストを盗もうとした朗は、ホッケー部の部員に見つかり練習試合に駆り出される。予想外の活躍をし、アイスホッケーの魅力に取り憑かれた彼は、入学先の高校で源間兄弟と再会しインターハイ優勝を目指すのだった。フィギュアと全く毛色の異なる競技に挑戦する朗が、どのような成長を遂げるかが見どころだ。ルール解説も細かく、ホッケーを知らずとも楽しむことができる。
父と兄の夢のため、性別の壁を超え競技に挑む少女を描いた青春スキージャンプ漫画。選手の潜在能力がオーラで見えるという特殊能力を持つ雑誌記者・与田は、新進気鋭の若手ジャンパー・加東雅史の取材のため練習場を訪れる。しかし、巨大ジャンプを飛び得意気な加東を、ひとり冷ややかな目で見る少年がギャラリーの中にいた。彼の欠点を細かく指摘する少年に加東は激高、勝負を申し込む。与田がその少年を見ると、とてつもないオーラを纏っていたのだった。
野々宮悠太と名乗る少年は、いとも簡単に最長不倒を叩き出し加東に引導を渡す。実は悠太は亡き兄の名を名乗る女性・野々宮ノノだった。かつて金メダル候補だったジャンパーの父と、父の期待に応えられず自ら命を絶った兄の夢を叶えるため、ノノは戸籍を抹消し女性が参加できないジャンプ競技を続けていたのだ。秘密を抱えたままノノは長野県の高校のスキー部に入部し、インターハイを目指すことに。正体を知ることとなった与田の協力や周りの部員たちとの切磋琢磨を経て、ノノは競技に打ち込んでゆく。本作の連載当時は、オリンピックの正式種目に女子が採用されていなかったことから隔世の感がある。シリアスな展開だけでなく、お色気ショットやギャグパートが多いのも見どころだ。
スピードスケートに魅せられた少年が、東京で新たな競技と出会い向き合ってゆく成長物語。主人公・瀬尾雄斗は、北海道は北見市でスピードスケートに勤しむ小学5年生だ。阿寒Jr.スプリントでしのぎを削った帯広の好敵手・高月和也と再戦を誓い合うが、父と共に東京へ引っ越すことに。和也は雄斗が東京に越していったこと、それにより彼のスケート人生が終わったも同然なことを監督から聞かされ、愕然とする。なぜなら、東京はスピードスケート不毛の地だったからだ。
雄斗は転校先の学校で、運動神経抜群だが集団に馴染めず浮いていた同級生・吾川(あがわ)幸太と知り合う。スケート少年団に入るという雄斗に吾川もスケートに興味を持ち、二人は都内のリンクへ。しかし、彼らが行ったリンクはスピードスケートが禁止されており、スピードスケートの規格には到底及ばない小さいものだった。二人はスピードスケートができる環境を求めてさまよい、やっとリンクを見つけるがそこで行われていたのは「ショートトラック」という似て非なる競技だった。吾川はさっそく始めるが、雄斗はこだわりを捨てきれずにいた。1周111.12メートルのリンクを複数名で周回して順位を競うのが、ショートトラックの醍醐味だ。新たな競技と出合った雄斗が、仲間たちと共に己の道を切り開くさまを堪能したい。