コースの外にも熱きドラマが！ 競馬漫画特集25 Pt.

強く速い馬を作り出そうと、優秀な血統が連綿と受け継がれていくことから、ブラッド・スポーツとも呼ばれる競馬。馬主、騎手、牧場主など、競馬には関わる人の数だけエピソードがある。競争馬だけでなく、そんな彼らにも焦点を当てたストーリーを紹介する。

馬の出産などを扱っていることもあり、登場する競走馬の血統についても細かな設定がある。繁殖牝馬の出産シーンや、駿平の懸命な努力により競走馬となった仔馬が、晴れて日本ダービーに出走する様など、生産牧場の現実がていねいに描写されている。また、駿平がひとりの男として成長していく姿が描かれるのも印象的。駿平が進路を巡って親と衝突する場面は、将来に対する熱意と不安がない交ぜになる緊迫のシーンだ。ヒューマンドラマとしても完成度の高さがうかがえる。

全て実在の馬を擬人化し、「女体化」をした本作。「トレセン学園」に在籍し、現実の競馬場と同様の施設で開催される「トゥインクル・シリーズ」と呼ばれるレースでウマ娘たちが勝利を目指すという、ファンタジックな世界観となっている。その一方で、脚の故障が命に関わる実際の競馬に即した厳しい現実や、史実に沿った物語が描かれるのも本作の特徴。ウマ娘たちの日常を描く美少女ものとしても、白熱のレースシーンが活写される熱血スポーツものとしても楽しめる作品だ。実際の競走馬の性格や癖がウマ娘たちに反映されており、実際の競走馬たちの意外な一面を知るきっかけにもなる。

本作に登場する競走馬は、知性を持ち、人の言葉を理解して会話ができる「人間のように過ごす馬」たちだ。競走馬の心情にまで踏み入って、競馬をモチーフに様々なドラマが描かれる。たとえば、過去に騎乗した優秀な競走馬のことを思い描く騎手に、牝馬が嫉妬する…といった具合だ。また、騎手や競走馬の引退に号泣するシーンや、重篤なケガにより処分された競走馬のことを描くエピソードもある。作者・よしだみほの、競走馬への深い愛情が伝わってくる作品だ。

マキバオーの外見や下ネタ含みのギャグが多く、単なるコメディ作品と思われがちだが、ストーリーラインはとてもシリアスだ。特にマキバオーのライバルとなるカスケードは、名馬であった母馬が死産のすえ生まれた競走馬であり、最初に目にしたのは母の亡骸という重い過去を背負っている。途中から徐々に人間と動物たちが普通に会話をするようになるが、根本にある作者の競馬への情熱と、シリアスな側面を描くというテーマ設定はぶれていない。チュウ兵衛がマキバオーの精神的支柱になりつつ、最後までマキバオーに騎乗することを貫いた生き様は、感動をもたらした。ぱっと見の印象とは異なり、随所で涙腺が緩む名作だ。

駿とシルフィードは、互いに生まれたときに母を亡くした者同士。シルフィードは生まれつき足に故障を抱えており、そのために処分されかかったところを、駿が助けることになる。駿自身も騎手としては若すぎ、キャリアも少なく、時にルールの問題から、シルフィードの騎手としてレースに出場できないこともある。未熟な騎手と競走馬が成長していく様子は、種族を超えた友情と言っていい。駿たちを取り巻く人々の人間模様も、ていねいに描かれる。度重なる減量で胃が縮小するなど、騎手にまつわるリアルな話が満載だ。故障やケガを乗り越え結果を残す、シルフィ―ドの生き様には心を動かされるはずだ。