天才的なバレエの才能を持った主人公の葛藤と苦悩を描く人間ドラマ。小学3年生の宮本すばるは、入院している双子の弟・宮本和馬のために、日々の出来事を踊りで表現して見せていた。次第に、踊りの面白さに目覚め、本格的にバレエを習いたいと思うように。成長したすばるは、場末のキャバレーで、元バレリーナ・日比野五十鈴と出会い、本格的にバレエの道を歩み始める。2002年に一度連載が中断され、2007年に再開された後は『MOON -昴 ソリチュードスタンディング-』に改題。2009年3月に実写映画化された。
ピンと伸びた手足と、重力を感じさせない跳躍。生き生きとして力強い本作のバレエシーンからは、画面から音楽が聞こえてくるようだ。バレエには優雅なイメージが強いが、ほとばしる汗や激しい呼吸を見れば、極限に挑む肉体の美しさが際立つ芸術作品だと認識させられるだろう。その中でも群を抜いた華があるすばるの舞踏には、「これが才能というものか」と感じずにはいられない一方で、天賦の才を持って生まれた者でも、努力なしではその才能自体を潰してしまうという厳しい現実も。すばるが一心に踊る姿には狂気すら漂うが、生命の躍動とバレエに対する情熱がストレートに伝わり、胸を熱くする。
バレエを習い始めた少女がプロのバレエダンサーを目指していく成長物語。有谷奏(ありやかなで)は、年上の幼馴染・橘梨沙(たちばなりさ)が出演しているバレエ発表会を鑑賞したことをきっかけに、バレエ教室に通い始めた。しかし、地味な練習が続き、早くも挫折しそうになる。しかし、怪我やお金の問題でバレエを続けられなくなってしまった梨沙の辛さを知り、続けていくことを決意。才能が少しずつ開花していく。
豪華絢爛なバレエの舞台を支えるのは、厳しいレッスンだ。舞台で美しく跳躍するためには、時間と労力を費やして基本的な動きをマスターするだけでなく、筋力をつけたり、柔軟性も必要だ。しかし、梨沙に憧れてバレエを始めた初心者の奏は、トウシューズも履かせてもらえない毎日にがっかり。無様な姿が映るため、鏡を見ることすら苦痛になってしまう。そんな彼女の姿は、クラシックバレエに馴染みのない読者の心を作品に引き寄せてくれるとも言えるだろう。作者・Cuvieがクラシックバレエ経験者であるためか、奏をはじめとしたキャラクターたちの心理描写は、真に迫りとてもリアル。バレエ少女たちの共感を呼び、バイブル的存在として親しまれていることも頷ける。
少女が、運命に翻弄されならバレエダンサーとして認められていく成長物語。主人公は、北海道に住む15歳の聖真澄。有名舞踏家の日本公演を見て感激し、楽屋に赴き、彼らの前で思わず踊ってしまったことから才能を見出された。東京に新設されたバレエスクールに通うことになり、さまざまなダンサーと切磋琢磨し合いながら成長していく。2005〜2018年に続編3作が連載されたほか、姉妹編『SWAN -白鳥の祈り-』もある。バレエ漫画の金字塔的作品だ。
北海道の田舎にあるバレエ教室に通っていた真澄は、東京に出て来たことで運命が大きく動き出した。運すらも味方につけられるのが、才能というものなのだろう。真澄は、バレエの技術が荒削りなため、将来を嘱望された天才エリートばかりが集められたスクールで浮いてしまう。しかし、天真爛漫で言葉に裏表がないストレートさと、与えられたチャンスを決して逃さず、壁にぶつかりながらも自分のものにしていく姿勢が、いつしか受け入れられていく。とはいえ、直情的な性格は弱点でもあった。その時の感情がダイレクトに出てしまうため、従来の演目とまったく違う表現になってしまうことも。真澄が、自身の弱点をどのように克服していくのかにも注目したい。
主人公が、失いかけていたバレエへの情熱を取り戻し、成長していくヒューマンストーリー。主人公・桜庭鯛子は、4歳からクラシックバレエを習い始め、将来はバレエで食べていけるようになりたいと考えていた。しかし、夢を応援してくれていた母が交通事故死したことをきっかけに情熱を失う。その後は惰性だけで踊っていたが、世界的なバレエダンサー・三上朗と出会い、コンクールに復帰する。続編に『Do Da Dancin'!ヴェネチア国際編』がある。
鯛子は、幼い頃から大好きだったバレエを続けてはいるものの、すっかり情熱を失った。才能には恵まれているが、何もかもを捨ててまで打ち込むことができず、ぽっかり空いた心の穴を抱えたまま日々を過ごしていた。しかし、バレエを愛する気持ちが完全になくなったわけではなかった。夢や目標がある人は、迷わず自分の道を歩んでいくものだと思いがちだが、鯛子をはじめ、本作に登場するダンサーたちは皆あれこれと迷走。バレエの舞台は幻想的で美しいが、その道を歩むダンサーたちそれぞれの物語は人間臭い。練習中に悩み苦しんだことをも踊りに昇華させる様子からは、表現者の逃れられぬ業のようなものを感じるだろう。
主人公がバレエにのめり込んでいく姿を描いた王道のバレエロマン。中学2年生の村尾潤平は、幼い頃、男性バレエダンサーの舞踊を見て魅了された経験を持つ。しかし、アクション映画監督だった父が急逝したことなどをきっかけに、「男らしくない」という理由でバレエへの情熱を封印。強い男を目指し、格闘技のジークンドーを習うようになった。しかし、転校生の美少女・五代都から勧誘され、バレエを始める。
潤平が、一度はバレエへの強い興味を持ったにもかかわらず、憧れの気持ちを封印したのは、偶発的な要素が重なったから。その1つが父の死だったが、実は、同級生の男子たちが、バレエの男性ダンサーのタイツ姿をバカにしたことも影響していた。自分の気持ちに素直に従えないところに、思春期特有の自尊心や、「仲間外れになりたくない」という気持ちが見え隠れする。たしかに、バレエは、女性が多い業界で、「男らしさとはかけ離れた世界だ」と感じさせる要素があるのかもしれない。しかし、バレエスタジオの娘・都と出会ったことで、バレエの扉を開いた潤平。最初は周囲に隠しながらこっそりレッスンに通っていた彼の才能は、ライバルたちとの出会いを経て次第に開花していく。