「虎」が登場する漫画
32 Pt.

「トラさん」が2019年2月に映画化。猛獣として、ライオンと並ぶほど有名な「虎」は、漫画においても色々な形で登場する。勇猛な人物の異名として使われたり、かわいいマスコットとして登場したり、ただのトラ柄の猫だったり。そんな、さまざまな「虎」が登場する漫画をピックアップ。

本作における“虎”は、元・人間の主人公・高畑寿々男が死んだ後、虎柄の猫として生まれ変わった「トラさん」だ。売れない漫画家の寿々男は、働く妻を尻目に、稼いだ金をすべてギャンブルに注ぎ込むようなダメ夫。漫画家として売れないのは「世の中が悪い」と公言してはばからない。そんな寿々男は、ある日、パチンコの帰りに歩道橋から落ちて死んでしまう。目が覚めた時、寿々男は、あの世の裁判所にいた。そして、身の程知らずにも、自分がいかに素晴らしい夫だったかを力説する。しかし裁判所は、寿々男を「身の程知らずでポジティブなクズ」とキッパリ。あまりのクズっぷりに、虎柄の猫「トラさん」として生まれ変わり、1年間家族の下で暮らし自分を見つめ直すよう言い渡した。寿々男は、猫として過ごすうち、自分が家族のことを知ろうとせず、省みることもなかったことに気付かされる。悲しみに暮れながらも、夫の居ない世界で懸命に生きる家族の姿を見て、「トラさん」はどのような答えを出すのか。最後まで目が離せない作品だ。

本作における“虎”は、「越後の虎」とあだ名された戦の天才・上杉謙信だ。本作は「上杉謙信女性説」という有名な風説を元に、「姫武将」として育てられた主人公・長尾景虎の苦労と戦いを描いている。男性への恐怖心や、兄弟たちとの跡目争い。そして、戦乱の時代という過酷な世界。否応なしに巻き込まれながらも、景虎は凛々しく、誇りを持って生きていく。もちろん、上杉謙信の有名なライバルである「甲斐の虎・武田信玄」との因縁も描かれる。また、歴史が苦手な人にもわかりやすいよう、都度、作者による説明が挿入される。幅広い層が楽しむことができる作品だ。

本作における“虎”は、イケメン大学生・千谷虎次。「虎次」という名前から、通称「トラ」と呼ばれている。トラは、相棒である大上謙（通称オオカミ）とともに、主人公の女子高校生・鳥沢美以（通称ミィ）の通う高校に、新任教師として赴任する。トラは天才的な画家の卵で、いつも笑顔を絶やさず朗らか朗らかだ。そのため女性たちの受けがいい。トラは、絵を描くことに没頭するあまり、食事もとらず倒れてしまうことがあり、その度にオオカミが面倒をみている。ミィは、だんだんとトラに惹かれていく。しかし、絵を描くことに夢中のトラは、ミィの想いを受け止められない。やり場のない気持ちを抱えるミィは、オオカミに恋愛相談をする。それぞれ違う個性と欠点を持った3人が、不器用ながらもお互いの気持ちを探り、絆を深めていく。ラブストーリーというだけでなく、ヒューマンドラマとしても完成度の高い作品だ。

本作における“虎”は、主人公・伊達直人が扮する、正義の覆面レスラー「タイガーマスク」だ。直人は、幼い頃、悪役レスラー養成機関「虎の穴」にスカウトされ、厳しい特訓の末、悪役レスラー「タイガーマスク」としてデビュー。稼いだ金をすべて、生まれ育った孤児院へ寄付したため、虎の穴が求める上納金を払えなくなってしまう。タイガーマスクを裏切り者と見なした虎の穴は、次々と凶悪な悪役レスラーを刺客として送り込んでくる。孤児院を守るため、子どもたちに恥じない戦いをするために、タイガーマスクは身につけた反則技を封印。正統派のファイトスタイルで、襲ってくる悪役レスラーたちと死闘を繰り広げる。本作品が連載されていた当時は空前のプロレスブームであった。それを反映し、本作にはジャイアント馬場やアントニオ猪木ほか実在のレスラーも多数登場する。高い人気を誇った「タイガーマスク」も、アニメとのタイアップ企画により実在の覆面レスラーとしてデビューを果たしており、幾度かの代替わりを経つつも現役で活動している。

本作における“虎”は、主人公・タブチコーイチが初期に所属していた野球チーム「阪神タイガース」だ。主人公・タブチコーイチのモデルである実在の野球選手・田淵幸一は「ホームラン・アーチスト」と呼ばれる程の強打者だった。しかし一時期、怪我と治療に伴う肥満により、成績が著しく低下した。タブチくんは、その時期の田淵がモデル。かなりの肥満体で、打てば飛ばすが凡ミスの多い「冴えない」選手として描かれている。とはいえ、トレーニングに真面目に打ち込み、人柄から周囲の選手や観客から愛されているという面も描かれている。田淵選手自身も、本作について好意的な感想を述べている。タブチくんの他にも、フルサワくんやゴトー監督といった実在人物をモデルとしたキャラクターや、田淵選手の前妻をモデルとしたミヨコ夫人が登場。プロ野球における悲喜こもごもなエピソードを面白くおかしく描いている。ギャグ漫画でありながら、田淵選手とプロ野球界への愛にあふれた作品だ。