野球一筋に生きる少年の半生を描く、長編野球漫画。主人公・茂野吾郎(幼少期は本田吾郎)はプロ野球選手・本田茂治の息子である。父のようなプロ野球選手になることを夢見ていた吾郎だが、茂治は試合中の死球で命を落としてしまう。それでも吾郎は夢を捨てず努力を続け、リトルリーグでチームを勝利へと導いた。母の再婚により茂野と名字を改めた吾郎は、その後も数々の困難を乗り越えながら、憧れのプロ野球の世界への階段を駆け上がる。2004年にテレビアニメ化。
主人公の野球少年・茂野吾郎はリトルリーグを皮切りに、中学野球・高校野球と活躍の場を変えながら、プロ野球選手を目指していく。多くの日本人選手と同じく、吾郎も高校ドラフトから日本プロ野球、そしてメジャーというルートを辿ってもおかしくはなかった。ところが甲子園での無理が原因で大怪我を負った吾郎はドラフトに漏れてしまう。そこで彼は、怪我を治した後に渡米。日本のプロ野球を経ずに、マイナーリーグからのメジャーリーグへと昇格を目指す。そこで吾郎は父の死の原因となった投手の息子・ギブソンJr.と巡り逢うことになる。数奇な運命に翻弄される吾郎の、野球人としての半生を丁寧に描いた野球漫画だ。
中継ぎ投手・凡田夏之介を主人公として、金銭的な側面を中心にプロ野球を描いたユニークな野球漫画。タイトルの『グラゼニ』は、かつて南海ホークスを率いた名将・鶴岡一人の名言「グラウンドにはゼニが落ちている」を略したものであり、主人公の口癖ともなっている。主人公・凡田夏之介の神宮スパイダースでの活躍を描いた『グラゼニ』の後、文京モッブス移籍後を描いた『グラゼニ ~東京ドーム編~』、さらに仙台ゴールデンカップス移籍後を描いた『グラゼニ ~パ・リーグ編~』が発表されている。2018年にテレビアニメ化。
本作はプロ野球の世界を、金銭的な側面を中心に描いている。プロ球界における査定の仕組みから、ブルペンキャッチャーなどの裏方の待遇、スカウトたちの目の付け所に至るまで、従来の作品では余り取り上げてこなかった要素を絡めた物語は実に興味深い。また、主人公・凡田夏之介が才能に恵まれた一流選手ではなく、平凡な中堅選手である点もユニークだ。小心者の中継ぎ投手である彼は、自分より年俸の高い打者には怖じ気づき、低い打者には強気になる。そんな彼が過酷なプロ野球界で知恵を絞りながら奮闘する姿は、超人的なアスリートとは違った親しみやすさに満ちている。プロ野球の世界を身近に感じることができる、一風変わった作品だ。
野球漫画の大御所・水島新司の代表作のひとつ。型破りなプロ野球選手の、波瀾万丈な野球人生を描いた一大長編野球ロマン漫画。主人公・景浦安武は、高校野球の地方予選で、サヨナラホームランを放ち優勝を決めたものの、飲酒がバレて優勝が取り消された問題児。その後、彼は社会人野球を経て、プロ球団・南海ホークスへ入団。アルコール度の高いリキュールに因んで「あぶさん」と渾名された景浦は、長尺バットに酒しぶきを吹きかけるパフォーマンスで人気を博す。やがて彼は、プロ野球を代表する超一流の選手にまで登りつめる。
主人公・「あぶさん」こと景浦安武は架空の選手だが、本作で描かれるプロ球団は全て実在のものであり、実在の選手も数多く登場する。そのため本作はフィクションでありながら、日本のプロ野球の変遷を実感できる内容となっているのが特徴のひとつだ。景浦がプロ入りした1970年代、プロ野球界には無頼な気っ風を漂わせる選手が数多くいた。さすがに景浦のように試合中に酒を飲むのはごく少数としても、朝まで飲み歩いて二日酔いのまま試合に出る選手など珍しくなかった。だが時代が進むごとに、体調管理やトレーニングが浸透し、プロのアスリートとしてのイメージが定着していく。景浦自身も当初は大酒飲み故に集中力が続かず代打稼業だったが、DH制導入以降スタメンに定着。その侍魂は保持しつつも、節制に努めるようになる。景浦が変わっていく様は、まさにプロ野球の変化そのものだ。
実在のプロ野球選手をモデルとしたキャラクターたちと、プロ野球界をコミカルに描く4コマ漫画。実在の選手を主人公とする漫画のはしりと言える作品であり、本作のヒットをきっかけに『かっとばせ! キヨハラくん』『ゴーゴー! ゴジラッ!! マツイくん』といった作品が数多く誕生した。1979年に劇場版アニメが製作。
田淵幸一は、阪神タイガースの主砲として活躍し、1975年には本塁打王を獲得。その打棒と大らかな性格、愛嬌のあるルックスで多くのファンに親しまれた名選手である。その田淵選手をモデルとした本作の主人王・「タブチくん」は、入団当時と比べて太ってしまった体格をよりデフォルメする形でキャラクターを造型。「阪神から西武に1㎏当り250円で金銭トレード」「野球界から大相撲へ」といった、肥満をネタにしたエピソードが数多い。チームメイトである掛布雅之、岡田彰布、江本武則などの選手たちも、カケフ、オカダ、エモトとして登場。各々の特徴を捉えたデフォルメ描写とコミカルな掛け合いは、プロ野球ファンはもちろん、野球に疎い読者をも思わずクスリとさせる魅力に満ちている。
助っ人外国人選手が日本プロ野球界で悪戦苦闘する様子を描いた、異文化コミュニケーション野球漫画。主人公・レジー・フォスターは、メジャーリーグの名門球団・リッチモンドフラッグスの四番打者を10年務めたスター選手。ところが彼は、ヒザの故障に起因する不調のせいで解雇されてしまう。彼は移籍先を探すものの、メジャー球団からの色よいオファーは届かず終い。そんな彼に、日本の東京ジェントルメンから声が掛かる。当初は日本行きに難色を示していたレジーだが、自らの価値を証明するため東京ジェントルメンへの入団を決意する。
野茂やイチローを筆頭とする先駆者の活躍もあり、現代では日本プロ野球出身のメジャーリーガーも珍しくなくなった。それどころか、日本のプロ野球で経験を積んだ外国人選手が、メジャーリーグで本塁打王や最多勝に輝くなど、日本球界からメジャーという流れは確実に定着している。しかし本作の舞台である1980年代という時代、米国から日本に来る選手はすでにピークを過ぎているか、マイナーリーグの選手が中心だった。日本をメジャー復帰の足掛かりとするのは、かなり困難といえた。さらに日本球界の前時代的な根性主義、敬遠を多用する勝利至上のスタイルなど、レジーはベースボールと野球のカルチャーギャップに悪戦苦闘することに。だが彼は持ち前の反骨心で、様々な困難を乗り越えていく。