大学の学部選びは慎重に！オススメ漫画５選86 Pt.

冒頭では、ファッションとSNSが趣味の典型的な都会っ子の湊。父の法要でおもむいた長崎で偶然磯料理屋に立ち寄り、平良兄妹と運命的な出会いをする。後に大学の先輩となるこわもての兄と、湊が一目惚れしてしまう妹の凪子だ。釣りをする凪子のひたむきな姿に心を射抜かれる湊。彼女の進学先が水産大学だと聞き、自分の進学先を東京の大学から長崎大学の水産学部へと変更してしまう。しかし凪子が長崎ではなく東京の水産大学に進学したことを知る湊。失望の中、過酷なキャンパスライフは幕を開けるのであった。軽薄ではあるが意外と気概のある湊の成長が描かれる。作者の出身地である長崎を舞台とし、リアルに水産学部の日常を描いた斬新で本格的な作品である。

沢木は祖父の古い友人である樹慶蔵（いつきけいぞう）教授のもと、研究室の個性的な仲間たちとともに発酵蔵に携わるなど、得難い大学生活を送る。酒造をはじめ発酵食品に関する専門的な話題が詳しく解説されており非常にためになる。例えば第1話で登場する、アザラシのお腹にウミドリを詰めたイヌイットの伝統食品「キビヤック」などの発酵食品を本作で知ったという読者は少なくないだろう。沢木の目から見た「かもす（発酵させる）ぞー」が口癖のA・オリゼー（麹菌）などデフォルメされた菌たちの姿もかわいらしく、グッズも多数発売され、人気を博した。農業大学といった専門的な分野でのキャンパスライフを取り扱った作品の先駆であり、決定版だ。

医官（自衛隊の医師）を養成するという特殊な学び舎での生活を描いた本作。不愛想で人に頼ることが苦手な、はた目には尊大に見える賢人であったが、継母である奔放な性格のハナレや、世話係でノリが軽い軽尾（かるお）先輩、相部屋で厳しい指吸（ゆびすい）先輩らとの出会いを通じ、変わっていく。医師と同時に自衛官を目指すということのみならず、継母と同期であるなど、設定は凝っているものの正統派の青春漫画である。上下関係が厳しい自衛隊の世界や、仲間との軋轢、継母との関係など波乱に満ちた生活での賢人の成長が第一の見どころではあるが、医官を目指すという特殊な環境をリアルに描いた、情報てんこ盛りの稀有な医学生ヒューマンドラマ作品である。

漫画家デビュー前の作者自身が感じたであろう喜怒哀楽が、作者の得意とする過剰に熱い描写で描かれる。『タッチ』のあだち充、『うる星やつら』の高橋留美子といった当時の新人漫画家や、同大学の出身者で後に「新世紀エヴァンゲリオン」などを手掛ける庵野秀明などが実名で登場するのも特徴である。その有り余る才能を目の当たりにし、当時まだ何者でもない焔は、絶えず激しく身もだえするような思いを抱く。コメディタッチではあるが、その出口の見えない青春の日々に読者はひきつけられ、共感させられる。1980年代の空気感がリアルに描写されている点にも注目だ。作者の代表作『吼えろペン』の前日譚としても読むことができる第一級の青春エンタテインメント作品である。

マニアックな数学ネタも登場するなど、数学が好きな読者にはたまらないであろう。巨乳でファンクラブまである世話好きの坂崎ゆみ、ギャンブル、特にパチンコが好きな渕上さえこ、暗号解読が得意な読書家の優等生・酒井ともといった、まな以外も個性的なK大学数学科女子の4人。そんな彼女らの少しマニアックな学生生活や恋愛など充実した日々が本作では描かれている。基本的に男社会の数学科でも、理系女子の4人は充実した日々を過ごしている様子。大多数の男子生徒はあまり取り上げられないが、インドからの留学生のラマや、まなに恋する今田、下ネタ好きの下野など、こちらの面々も個性的だ。日常系の漫画で変わり種が好きならば、とくにオススメできる作品である。