年末に欠かせないものの1つが年越し蕎麦。蕎麦は麺類の中でも切れやすいことから、「1年の厄災を断ち切る」という意味合いで、大晦日に食されるようになった。除夜の鐘を耳にしながら、蕎麦を啜るのは、日本人にとって堪らない瞬間だ。今回はそんな蕎麦が食べたくなる漫画を紹介しよう。
年越し蕎麦の風習は、200年以上も続く大切な伝統文化!
出典:小学館
年末に欠かせないものの1つが年越し蕎麦。蕎麦は麺類の中でも切れやすいことから、「1年の厄災を断ち切る」という意味合いで、大晦日に食されるようになった。除夜の鐘を耳にしながら、蕎麦を啜るのは、日本人にとって堪らない瞬間だ。今回はそんな蕎麦が食べたくなる漫画を紹介しよう。
出典:小学館
確かな技術を持つ若き蕎麦職人が、全国を渡り歩きながら、思う存分蕎麦を打ち、食べる様子を描いた、超本格派の蕎麦グルメ漫画。主人公・矢代稜は、京橋の名店・草庵の五代目店主・藤七郎の孫。名人と謳われた祖父から、江戸蕎麦の技術をすべて伝授された、優秀な蕎麦職人だ。彼は特定の店舗を持たず、車に蕎麦道具を積み、気ままに日本中を放浪。各地で人々の舌を楽しませ、その土地ならでは蕎麦を味わいながら、蕎麦の道を究めていく。
本作は、タイトルが示すように、対象を蕎麦に絞った、実にいさぎの良いグルメ漫画だ。本作の特徴の1つは、素人にも解りやすく蕎麦の魅力を伝えていること。機械打ちを必要以上に貶し、手打ち蕎麦を盲信することの愚かさ。藪、更科、砂場の江戸蕎麦御三家の違い。見た目で解る蕎麦の善し悪しや、蕎麦の正しい食べ方といった蕎麦の基本的な部分について、物語の中で丁寧に解説している。本作は、監修に、伝統ある有名蕎麦店の店主を迎えており、蘊蓄の豊富さと正しさは折り紙付きだ。また、ストーリーもハートフルなものが多く、落語の人情噺に通じるところがある。蕎麦と物語の両面で江戸前の良さを前面に押し出した本作は、蕎麦初心者のテキストとしてだけでなく、全ての蕎麦好きを満足させること間違いなしだ。
出典:マンガペディア
因縁深い親子の料理対決を軸に、食文化を深く掘り下げた、一大長編グルメコミック。東西新聞の記者・山岡士郎は、怠け者だが、食に関してはずば抜けた感性と知識、そして技術の持ち主だ。山岡と、同僚・栗田ゆう子は、東西新聞創立100周年を記念する「究極のメニュー」作りの担当に抜擢される。そんな中、帝都新聞が類似企画「至高のメニュー」を立ち上げる。そのアドバイザーには、美食倶楽部を主催する食通・海原雄山が就任する。山岡と海原は、複雑な事情から仲違いしている親子。そんな2人が、料理対決を繰り返していくこととなる。
本作には蕎麦にまつわるエピソードが多い。最初に蕎麦を扱ったのはコミックス第2巻に収録されている『そばツユの深み』だ。夜の街を歩いていた山岡と栗田は、蕎麦の屋台を発見し、立ち寄ってみる。屋台の店主・花川勇作はかなりの拘りの持ち主で、つなぎを一切使わない蕎麦を手際よく調理。出来上がった蕎麦を、栗田は絶賛。しかし山岡は、ツユに対する不満を述べる。花川が激昂したところに、巡回中の警官が登場。実は花川は営業許可の申請中で、まだ無許可状態だったのだ。そこに通りかかったのが、蕎麦好きの中松警部。中松は花川に対し「旨い蕎麦を作れるなら営業許可は俺が何とかする」と、言い放ち、蕎麦を作るよう命じる。そして蕎麦を口にした中松は、山岡と同じくツユの弱さを指摘する。果たして、花川の運命や如何に。本作の名物キャラの1人、中松警部が初登場するエピソードでもある。
出典:リイド社
江戸時代の新橋を舞台に、味は絶品だが、店主が気まぐれ故に滅多に店を出さない担ぎ屋台の蕎麦屋・通称「幻庵」で繰り広げられる人情味溢れる物語。主人公・牧野玄太郎は勘定奉行。若い頃から異例の出世を続ける、切れ者の旗本だった。ところが、当時70歳前後で隠居するのが通例にも関わらず、彼は52歳で息子・栄次郎に家督を譲り、早々と隠居を決める。そんな玄太郎は、第2の人生として、大好きな蕎麦の屋台をお忍びで始める。
本作の主人公・牧野玄太郎は、ずば抜けて優秀な勘定奉行だった。ところが彼は「鍋の中で茹ですぎると、延びて駄目になってしまう。程よい頃合いで鍋の中から外に出るのがいい」と言い、早々に奉行所を辞めた変わり者だ。役人として有能だった彼は、蕎麦職人としての腕もまた1級品。彼の営む屋台「幻庵」は、たちまち巷の評判となる。そこで玄太郎は、役人時代には耳にすることの出来なかった、数多くの庶民の悩みや不満を聞く。そこで彼は、勘定奉行時代に培った人脈や、己自身の優秀な頭脳を駆使し、客たちの悩みを解決していく。やがて彼の周囲には、妖艶な売れっ子芸妓・藤丸を始めとする協力者も集まる。玄太郎は、さらに活躍の幅を広げていく。江戸の粋が全編に漂う、心温まる蕎麦時代劇だ。
出典:マンガペディア
とある警察署を舞台に、中年の警部が容疑者や同僚相手に、食事に関する薀蓄を語っていく様子を描いた、ユニークなグルメ漫画。主人公・立花警部は、仕事よりも食い気を優先する困った男。張り込み中に食事に抜け出し、まんまとターゲットに逃げられたこともある落ちこぼれ警官である。そんな彼だけに、蕎麦をはじめとした飯の話になると止まらない。取調中に脱線することもしばしばだ。ところが、そんな彼の飯トークは、容疑者の頑なな心をほぐし、思わぬ好結果を生む。
本作はグルメ漫画といっても、扱うのは牛丼やファミレスといったチェーン店、あるいはインスタント食品や駄菓子といったB級グルメがメインとなっている。そんな本作が蕎麦を取り上げたエピソードは、コミックス第1巻に収録されている『立ち食いそば大論争』だ。世の「濃厚ラーメンブーム」に危機感を抱いた立花は、大好きなラーメンを食べ続けるためにダイエットを決意。週に1度はジョギングをし、その後に健康的な食事をしようと思い立つ。そんな彼が目を付けたのは、老舗立ち食い蕎麦・梅もとの「薬膳天そば」。かき揚げの具材に薬膳をミックスした天ぷら蕎麦である。いざジョギングを始めようとした立花の前に、刑事課長・韮沢が登場。立ち食い蕎麦通を自認する韮沢は、「薬膳天そば」に否定的。かくして、立花と韮沢による熾烈な蕎麦論争が幕を開ける。
出典:amazon
東京神田で創業から120年に渡って営業する老舗蕎麦屋「たけや」を舞台に、店に携わる人々を中心とした人間模様を描く、ハートウォーミングな物語。主人公・真樹は、蕎麦屋を営む家で育った20歳の女性だ。母が亡くなった後、彼女は新橋に務める兄を頼って上京。たまたま通りかかった「たけや」の店先から漂う香りに懐かしさを感じた真樹は、この店でアルバイトをしようと決意する。
本作の舞台となる「たけや」には、大晦日の閉店後、従業員に年越しの天ぷら蕎麦を振る舞う習わしがある。その際、1年でもっとも優秀だった「お運びさん」には、「お運びさん大賞」として海老天が1本多く添えられる。主人公・真樹は、この大賞をささやかな目標として、日々かいがいしく働いている。ところが、そんな彼女に強力なライバルが登場。それは、かつて店で働いていた丸井さん。結婚を機に店を辞めた彼女だが、離婚したのを機に再び働き始めたのだ。細かいところに気が回り、蕎麦の蘊蓄も豊富な丸井は、客の評判も上々。そんな彼女に負けまいと、真樹は一層努力を重ねる。真樹の奮闘する様子と、店のお品書きにまつわるエピソードの数々は、読者の心をほっこりさせること請け合いだ。
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