「少年週刊ジャンプ」に1973年から77年にかけて連載された。原作は牛次郎、作画はビッグ錠。伝説ともいうべき腕前を持つ日本料理の板前・塩見松吉(しおみ・まつきち)の長男として生まれた塩見味平(しおみ・あじへい)は、父の仕事ぶりを尊敬しながらも、日本料理の世界が一般の大衆のものではなく、一部の政治家や金持ちなどしか味わえないことに疑問を抱き「自分はみんなが食べられる美味しい料理を作る料理人になりたい」と決意を固め、せっかく受かった高校をけり、父の反対を押し切って大衆料理の世界へ飛び込む。そんな味平が働き場所として選んだのは「キッチン・ブルドッグ」。その店で味平は、玉ねぎの皮むきに始まる料理の基本を覚えていくが、それまでキッチンを預かっていた北村が所用で留守にする間、ブルドッグのキッチンチーフ代理を務めることになった仲代の出現により、味平の包丁人生は大きく動き始めていく。
言わずと知れた、フードマンガの草分け的存在であるこのマンガ。本作以前にも望月三起也氏の『突撃ラーメン』があるが、料理マンガに「勝負」を持ち込んだところが斬新だったといえるだろう。
こちらは「週刊少年マガジン」に1986~89年の間連載された『ミスター味っ子』。作者は寺沢大介。主人公は味吉陽一(あじよし・よういち)。亡き父の後を継ぎ、少年ながらも残された「日之出食堂」を切り回していく。母親の法子(のりこ)さんがまだ若く、可愛らしい。
そんな陽一のもとに、日本料理界の重鎮で「味皇」と呼ばれる男・村田源一郎(むらた・げんいちろう)があらわれ、陽一の作ったかつ丼に舌を巻く。その味皇に招かれ、数々の料理人との料理対決を行うこととなる陽一だが、少年らしい斬新な発想の料理で、その挑戦を次々と跳ねのけていく。
マンガの世界に「グルメマンガ」としての一大ジャンルを築き上げた作品『美味しんぼ』。原作は雁屋哲、作画は花咲アキラ。連載開始は1983年。
主人公は山岡士郎(やまおか・しろう)。日本の一流新聞社・東西新聞社の「文芸部」に所属する。連載当初は「ぐうたらで冴えない男」だが、その生い立ちを知る社主の大原から社運をかけた一大プロジェクト「究極のメニュー」の担当に、新入社員の「栗田ゆう子(くりた・ゆうこ)ともに抜擢される。最初はまるで乗り気がなく、仕事よりも競馬の人生を送っていた山岡だったが、大原社主が究極のメニューのアドバイザーとして招こうとした「海原雄山(かいばら・ゆうざん)」の存在が、彼の運命を変えていく。実は雄山は彼の実の父であり、その「食通、美食」のために母を死に追いやったと思い込んでいた士郎は、父を激しく憎んでいたのだった。
講談社・モーニングにて1985年から連載開始(連載前、同年に読み切りが二作掲載されている)。2016年の今も新刊が発売されている、ご長寿連載マンガ。作品の中でもどんどん世界が時を経ており、最初小学生で登場した荒岩の息子は、大学を卒業するまでに至っている。
主人公は「荒岩一味(あらいわ・かずみ)」。福岡に拠点を置く金丸産業営業二課の課長(第1巻当時は主任)。幼いころに父を亡くし、一家を支えるため病院の賄い婦として忙しく働く母の代わりに、家事一切を取り仕切っていたが、ある日「買ってきたパンじゃつまらん、お母さんの料理が食べたい」と言われて一念発起。見よう見まねで「母の卵焼き」を作ったことから料理に対する興味がわき、やがてプロ顔負けの腕前となった。見かけはごついが照れ屋な荒岩は、物語当初は、会社の誰にも「自分が料理をすること」をひた隠しに隠していた(後にばれる)。
グルメマンガ、料理マンガの位置にありながら「料理での対決」などは全く存在せず、ただ自分の周りにいるひとたちに「美味しい料理を届けたい」という荒岩の優しい心と、荒岩を取り巻く人たちの愛情が物語を育んでいく。もちろんここまでの長い作品になると「料理を作る人間」は荒岩だけに留まらず、作中の多くの人たちが自慢の腕、自慢の味を披露している。話の最後には必ず、その回の作品の「レシピ」と「作り方」が載っており、誰でも作中の料理に近い味を家庭で再現することが可能となっている。この取り組みについて、フードマンガとしての先駆者はおそらくこの『クッキングパパ』だと思われる。