1話完結型のお料理コメディ。……という説明からは想像もつかないほどの、毎回飛び出す仰天料理が本作の目玉だ。「リトルグルメの天才」と謳われる少年料理人・なべやきコンブの繰り出す料理は、たとえば目玉焼きにチョコフレークをまぶした「チョコフレーク目玉三段焼き」、カップヌードルと食パンを手巻き寿司の具にした「五目ヌードルずし」、スライスハムと小枝チョコを合わせた「ハムのちゃきん風小枝つつみ」などなど、センスがワンダーしまくっていて、読んでいて正気を保つのが難しいレベル。食べたら思わず「オーマイ コ~ンブ!」と叫ぶのがお約束。
母と一緒に日之出食堂を支える少年・味吉陽一と、日本料理界の重鎮、味皇こと村田源二郎が放つ料理人たちとの間に繰り広げられる、数々の味勝負。陽一は天才的なアイディアで創作料理を編み出し、毎回危機を切り抜ける。パンに刺身をのせた「寿司サンドイッチ」や、キャベツと玉ねぎしか使わない「野菜100%ハンバーガー」といった、本当に味見をしたのか疑わしい創作料理の数々も凄まじいが、『味っ子』といえばやはり味皇をはじめとする審査員役のオーバーアクションが見所。同時進行していたアニメ版で「う・ま・い・ぞおおお! と叫びながら口から光線を放つ」「うまさのあまり巨大化して城を壊す」などのリアクション芸が披露されるや、原作漫画の方でも無茶なリアクション表現に拍車がかかるといった、地獄絵図……いや、競合展開が見られた。
グルマンくんこと食井カンロは、生まれたときからフカヒレスープを産湯につかい(!)食通の中の食通として育てられた。第一話からさっそく小学校のクラスメイトが繰り広げる弁当自慢バトルに巻き込まれてしまうグルマンくんだが、このバトルっぷりがとにかく異常。「Jリーグラモス弁当(巨大な等身大のキャラ弁)」だの「エベレスト登頂チキンライス(本当に人がライスの山を登れる量)」だの「ジェット機型ステーキ丼(バターライスの空港にラジコンで飛ばしたステーキ肉を着陸させる)」だの、はなっから人智を超越したレベル。連載後半はいわゆる「大会」ものになるが、そんなことはもはやどうでもよくなる怪作だ。
『包丁人味平』にはじまるビッグ錠の料理漫画世界は、ここに頂点を極めた! 定食屋の息子に生まれた満太郎が、並み居る強敵を相手に料理バトル……と、そこまではいいのだが、伝説となった「おにぎり勝負編」では、敵(=おにぎり師)の姿がとにかく異様。頭にアフロみたいなウニのかぶりものをした男、でかいカニのかぶりものをした男、牛の角つきのカブトをかぶった男、などなど、かぶりもののオンパレード。あまりに異様すぎて、料理勝負などどうでもよくなってしまいそうだ。その後もフリスビーお好み焼き、無人島サバイバルキッチンなど、独創的すぎるバトルが繰り広げられる。
パン作りに適した「太陽の手」をもつ東和馬は、日本人に合った日本人のためのパン、「ジャぱん」を生み出すべく、日夜研鑽を続ける。理想のジャぱんに近づくために、挑戦者たちとバトルを繰り広げる和馬。果たして「ジャぱん」は完成するのか? ……といった物語だが、『ミスター味っ子』や『中華一番!』といった先駆作品を踏襲し、さらにパワーアップさせたオーバーすぎるリアクション芸が本作の見所だ。少女漫画風の絵柄に変わったり、臨死体験したり、人外に変貌したり、果ては旨いということを表現するためだけに寸劇を展開したり(宇宙飛行士になって月面着陸したり、タイムトラベルによって過去へ行き亡くなった母親に会ったり)と、1話ないし数話まるごとリアクションだけに費やされることもあるのだから、その執念は並大抵ではない。ちなみに作中で完成したジャぱんは、1号から61号まである。