サラリーマンとボクサーを兼業する青年の葛藤と青春を描くスポーツ漫画。高校卒業後、信用金庫に勤めた吉野太郎。気弱な印象を受ける太郎だが、彼には裏の顔があった。それは、クマタジムに所属するバンタム級のプロボクサー。太郎は世界王者を目指し、リングに上がり続ける。第41回小学館漫画賞を同作者の『ギャラリーフェイク』と同時受賞。
今回の特集のトップバッター「タロウ」は、タイトルもズバリそのまま『太郎』となっている主人公の吉野太郎だ。太郎は勤務先の信用金庫では、寝坊で遅刻をしたり早退をしたりと問題の多い新入社員。小柄で気が弱そうなルックスのため、上司からは格好のターゲットにされ、いつも怒られている。しかし、ボクサーとしては世界を狙えるポテンシャルを持ち、所属ジムでの期待も大きい。そんな太郎は、会社員とボクサーという二束のわらじの厳しさに疲弊していく。プロボクサーの厳しい現実、さらに次々とトラブルに巻き込まれながらも太郎は夢に向かって果敢に突き進んでいく。
賭け将棋を生業とする「真剣師」たちを描いた将棋漫画。奨励会に入ったものの、プロ棋士になることができなかった菅田健太郎。健太郎は将棋しか生きる道を知らず、賭け将棋で日銭を稼いでいた。だが、ある日、健太郎は「アキバの受け師」と呼ばれる女真剣師である中静そよに完敗し、心を入れ替えて真剣師としての道を歩み始める。2008年実写ドラマ化。
今回の特集の二番手「ジロー」は、主人公・健太郎の対戦相手であり、のちに共闘関係となる文字山ジローだ。ジローの本職は漫画家で、将棋の駒を擬人化した漫画『なるぞうくん』を連載している。健太郎との対戦で、ジローは健太郎に「人生」を賭けた勝負を挑む。ジローが勝てば健太郎は彼のアシスタントとして働き、漫画家を目指す。健太郎が勝てば、『なるぞうくん』の主人公を健太郎が描いた落書き、「ハチワンくん」というキャラに変更するというもの。ジローは、負けたら自分の連載が確実に終わってしまう条件を受けて、試合に臨む。ジローは自分の作品の『なるぞうくん』と同じように、盤面のコマと会話しながら、健太郎を追いつめていく。
望まざる不良の騒動に巻き込まれる、ちょっと内気な普通の高校生の三郎を描いたヤンキーギャグ漫画。県内屈指の不良の巣窟、私立徳丸学園高等学校に入学した大河内三郎。三郎は地元では知らぬ者のいない不良の大河内兄弟の末弟だった。本人は気弱で真面目なのだが、周囲からは兄たちのようにヘッドとして担ぎあげられてしまう。2007年TVドラマ化、2009年実写映画化。
今回の特集の三番手となる「サブロー」は、本作の主人公の大河内三郎だ。その名の通り、彼は大河内家の三男。兄の一郎と二郎は、額に大きな傷のある伝説の不良だ。物語の舞台である徳丸学園では、誰もが恐れる存在。そんな兄たちは、三郎を怒らせた下級生たちを威嚇したため、三郎自身は真面目で気弱な生徒なのに一年生グループのヘッドに担ぎあげられてしまう。だが、兄たちが普段の素行の悪さから退学になってしまう。三郎が実は弱いと見抜いていた不良に目を付けられたり、生徒指導の先生に恨まれたりと苦難が続く。しかし、三郎は極限状態に陥ると、代々「悪魔の一族」と呼ばれた大河内家の血に目覚め、兄たちよりも凶暴だった。
近未来を舞台に描かれるデストピアSF漫画。第三次世界大戦後、ゲノム党の独裁によって日本は男女隔離の管理社会となっていた。軍人だった廻狂四郎(めぐりきょうしろう)は、戦争で様々な功績を上げた優秀な戦士だが、M型遺伝子異常と認定され、危険で残酷な任務を負わされていた。そんな狂四郎はバーチャル世界で出会って恋をした女性の志乃に会いたいと願う。
今回の特集の四番手となる「シロー」は、本作の主人公の狂四郎だ。本作の舞台となるのは、第三次世界大戦が終結してから5年後、2030年の日本。戦争によって世界の8割の人類が死に、日本はゲノム党によって人々の選別が行われていた。狂四郎は犯罪者になりやすいと言われるM型遺伝子異常に高かったために隔離され、過酷な環境で育てられ軍人となった。男女が隔離された世界で、彼にとって唯一の心の拠り所はバーチャル世界で出会った「志乃」という女性だけ。戦闘時は、心を持たない機械のような働きをする狂四郎だが、その一方で朗らかで恋しい女性に会いたいと願う一途な青年だ。
一人飯を楽しむ中年男性を描いたグルメ漫画。個人で雑貨商を営む井之頭五郎は、食事を日々の楽しみにしている。彼のモットーは、誰にも縛られない、自由で孤高の生き方。食事もそのスタイルに則り、仕事の合間に気になった店にふらっと入り、気の向くまま食事を楽しむ。2012年TVドラマ化、2015年台湾でWebドラマ化。
今回の特集の締めとなる「ゴロー」は、本作の主人公の五郎だ。五郎の独白という形式で描かれる、単話完結のグルメ漫画。五郎は「孤独」を愛する健啖家の中年男性で、仕事柄外回りが多く、行く先々で気になる店に入って食事を楽しむ。しかし、下戸で奈良漬でも酔うことがある。空腹の赴くままに注文するため、同じ系統の料理(豚肉炒めと豚汁)が被ってしまったり、食べ切れずに残してしまう失敗をすることも。そんな失敗を繰り返しながらも、五郎は自由で孤独な食事を満喫するのであった。ドラマ化で人気が再燃し『SPA!』で新作が掲載されていたが、2017年に作画担当の谷口ジローの死去により、物語は完結した。