人から触られ、人に触れることが苦手なヒロインが、中学時代の同級生と再会したことで頑なだった心が徐々にほどけていくハートフル系ラブストーリー漫画。会社を辞め、祖父の古本屋を受け継いだ甘楽(つづら)ひなた。好きではあるが慣れぬ仕事に悪戦苦闘していた甘楽の元に、どこか懐かしい雰囲気を持った若い男性が現れる。ところが、彼が放った言葉は「君の匂いを嗅がせてほしい」だった。最初は変質者ではないかと訝しんだ甘楽だったが、彼の正体は中学の時の同級生、九条覚(くじょうさとる)だった。
九条は大手企業に勤める調香師であり、入浴剤や洗剤の香りを作る仕事をしている。彼が次に開発する商品のテーマが「初恋の香り」であり、そのヒントを探している最中だった。だが、幼い頃から嗅覚の鋭い九条だったが、実際に存在しないモノのイメージをどうしてもできずにいた。ある時、実家に戻った彼は中学時代に甘楽から借りたままだった本をたまたま手に取り「甘い匂いの女子がいた」ことを思い出し、彼女の元にやって来たのだった。九条からの突然の申し出に困惑する甘楽。実は彼女は他人に触れられることが苦手で、人からの距離を上手く測ることが出来なかったことが会社を辞めた理由だった。最初は九条に心を開けなかった甘楽だったが「また来てくれたらいいのに」と気持ちが徐々に揺れ始める。
年下の彼氏との恋愛関係に悩むヒロインがふと立ち寄ったお店には、超イケメンの調香師がいた。様々な女性や男性たちの恋の悩みを香りで癒やしてくれるオムニバス形式のラブストーリー漫画。OLの春香が香りに誘われて思わず入ってしまったアロマのお店。「いらっしゃいませ。調香師の理人(りひと)と申します」。出迎えてくれたのは柔らかな物腰の超美形の調香師だった。理人と話していた春香は「何か心配事でもあるのでは」とズバリ確信をつかれてしまう。
調香師という聞きなれない言葉に戸惑う春香に「香粧品や香水などの香料を調合する人のことです」と優しく教える理人。「何かお求めの商品でも?」と尋ねられ「すみません、落ちつくいい香りがしたので、つい……」と慌てる春香。そんな彼女の返答に理人は「何か不安や心配事でもあるのでしょうか?」と優しい眼差しを向けるのだった。年下彼氏と恋愛中のOLの春香、周囲から恋愛相談をされるばかりで自分の恋愛が出来ないOLの水樹、同期の出来る女性社員に片思い中の新入社員の片桐、兄のように慕う幼なじみの大学生に片思いしているが妹のようにしか思われていない女子高生の千晴、合コンで失敗続きのオタクOLのささら、香りが紡ぐオムニバス恋愛アンソロジーである。
香道部を舞台に、香りフェチな女子中学生たちによる学園生活を描いた学園コメディ漫画。匂いフェチな中学一年生の淡路彗湖(すいこ)は通学途中の満員電車の中で「かぐわしい香り」を放つ女子中学生の富士川流未音(みおん)に出会う。ところが、彼女はあろうことか痴漢の被害にあっていた。「何しているんですか!」と、怒った彗湖はその痴漢の手を掴み、未音を救った。「何かお返しが出来ればよいのですが」と語った彼女に彗湖はどうしても頼みたいことがあった。
実は未音の体臭が嗅ぎたかった彗湖だったが、痴漢を撃退したことで周囲の人々に「スゴイ中学生」と称えられてしまう。その騒ぎの中で、彗湖は彼女を見失ってしまう。学校に着いた彗湖は彼女を見つけようと職員室に向かうが、未音の方も恩人である彗湖を探していた。未音は廃部になった茶道部が使っていた家屋に彗湖を誘い「私はここに香道部を作りたい」と話す。未音から「聞香炉」の楽しみ方を教えてもらった彗湖だったが、どうしても彼女の腋の匂いを嗅ぎたいという欲求が抑えきれず、嫌がる未音を何とか説き伏せようとする。ちなみに「聞香炉」とは、炭に火を付け5分ほど待って中の砂に埋めて温め、その上に香木をのせて焚き、香りを楽しむ器のこと。ちょっぴり変態ムードもありながら香道ウンチクもたっぷり詰まった香りフェチ必読作品である。
早くに両親を亡くした高校生が刑事である兄を襲った事件をきっかけに、「ワイルドハーフ(獣人族)」と呼ばれる嗅覚の鋭い異能種族と心を通わせるファンタジー系ヒューマンドラマ漫画。刑事である兄と二人で暮らしている高校生の岩瀬健人(たけと)は、登校中にノラ犬から自慢の手作り弁当を奪われてしまう。その夜、兄の寿文(としふみ)が張り込み中に男に襲われ、銃を奪われて逃走される事件が発生。兄が負傷したことを知った健人は警察病院に急ぎ向かう。
犯人に撃たれたのではないかと心配した健人だったが、不幸中の幸いで寿文のけがは骨にヒビが入った程度だった。寿文の同僚から「今回の失態で刑事を降格させられるかもしれない」と聞いた健人は、何も出来ない自分の非力さに「ワイルドハーフがいてくれたら」と心から願う。「ワイルドハーフ」とは依頼された事件を100%解決してくれるという噂の名探偵だが、その素性を知る者は誰もいなかった。自宅に戻った健人は、自分の部屋に誰かがいることに気づき「泥棒か!」と緊張感を高めるが、ベッドに横たわっていたのはその日の朝、健人から弁当を奪ったノラ犬だった。ところが、その犬、サルサこそがあの名探偵「ワイルドハーフ」だったのだ。人間が強く何かを思った時、その感情の「匂い」が発せられる。サルサにはその匂いを嗅ぎ分ける特殊能力があった。
異常に汗をかいてしまうヒロインが同じ会社に勤務する男性から「商品開発のために君の匂いを嗅がせてほしい」と頼まれたことをきっかけに、始まった二人の恋愛を描いた香りフェチ系ラブコメ漫画。女性に人気の化粧品&バス用品のメーカー「リリアドロップ」に勤める八重島麻子(やえしまあさこ)の日課は制汗・消臭ケアに始まる。子供のころから汗っかきの麻子はそれを周囲に知られぬよう出来るだけ目立たないように日々を過ごしていた。そんな麻子の前に一人の男が現れ、あろうことか彼女の一番気にしている匂いを嗅ぎ始めた。
男は「俺は商品開発部プランナーの名取香太郎(なとりこうたろう)」と名乗り、貴女の匂いに惹かれるモノがあったのでじっくり嗅がせて欲しいと頼み込む。「この人、変態だ!」と必死で逃げようとする麻子をつかまえる香太郎。自分の匂いにコンプレックスを抱いている麻子は半泣きになって拒絶するも、香太郎は「貴女の香りをかぐとインスピレーションが湧く。どうか冬向け新商品のアイデアに協力してほしい」と麻子を説き伏せ、一週間毎日匂いを嗅ぐ約束を取り付ける。最初は嫌々だった麻子だったが、香太郎の熱意にほだされ、彼に好意を抱くようになる。香太郎もまた、麻子の匂いを通じて彼女に惹かれるようになっていった。匂いフェチにはたまらない作品だ。