謎の鬼によって家族を失った炭治郎が、鬼殺隊の中核をなす「水柱」冨岡義勇(とみおか ぎゆう)の導きで鱗滝左近次(うろこだき さこんじ)のもとを訪ねようとした途中で出会った鬼。怪力と、大きな怪我を負っても死なない再生能力を備えている。
この時、まだ鬼に立ち向かう力を身につけていなかった炭治郎は、襲われて窮地に陥るが、鬼となっていた妹の禰豆子が鬼を蹴飛ばして頭部を吹き飛ばし、そこを炭治郎が斧で木に縫い留めて身動きを取れなくした。鬼の胴体は崖から転落し、再生しかけていた頭部も動けないまま、夜明けの日光を浴びて死を迎えた。
炭治郎が鬼殺隊の入隊資格を得るために挑んだ最終選別で遭遇した大型の鬼。炭治郎の師である鱗滝左近次によって江戸時代に捕らえられ、それから47年にわたって選別の地である藤襲山に封じられていた。最終選別が行われる場所で生き延びる中で異形と化しており、弱点である首を多数の腕ががっちりと守るような姿をしている。
最終選別では鱗滝の弟子を目の敵にし、鱗滝が最終選別に向かう若者に贈る狐の面をつけた隊員候補を執拗に狙っており、同じ面を持っていた炭治郎もまた標的となった。驚異的な再生能力と、弱点である首の守りの頑丈さに苦しめられる炭治郎だが、地中からの奇襲をかわして間合いに入り、鱗滝から学んだ「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り」で一閃。多くの兄弟子の敵を取り、鬼殺隊の一員となる。
試練を生き延び、鬼殺隊の一員となった炭治郎が初の指令を与えられて対決した鬼で、正式な名前は不明。1本角、2本角、3本角の鬼3体が意識を共有しており、それぞれが壁や地面に沼を作り出してその中を自由に移動できる力を操る。16歳を迎えた少女を喰らうことを好み、町で少女たちを沼に引きずり込んでは殺害し、その子が身につけていた髪飾りなどの装身具をコレクションしていた。
恋人を失った青年から鬼の行動を嗅ぎ付けた炭治郎は、新たな獲物を捕らえたばかりのこの鬼の居場所を突き止め、戦いを挑んだ。3体によるコンビネーションと、沼を使って縦横無尽に襲い掛かる鬼に炭治郎は苦戦するが、禰豆子が戦いに加勢したことで優位を取り戻し、引きずり込まれた沼の中で2体を仕留める。残る1体を追い詰め、鬼を生み出す無惨のことを聞き出そうとした炭治郎だが、無惨への恐怖に支配された鬼は反抗し、情報を与えることなく炭治郎に首を斬られた。
無惨の命令で炭治郎を狙った2人組の鬼が、矢琶羽(やはば)と朱紗丸(すさまる)だ。瞳の中に矢印が描かれた目玉を持つ矢琶羽は「紅潔の矢」と名付けられた矢印を操り、朱紗丸は6本の腕から建物の壁を軽々と破壊する手毬を投げつけ、相手を攻撃する。矢琶羽の矢印は、触れたものを矢印の示す方向に吹き飛ばしたり敵の攻撃をそらしたりできる不思議な力があり、朱紗丸が投げた手毬を矢琶羽が矢印でコントロールして、相手が予想もできない方向から強力な攻撃を当てるなどのコンビ殺法も得意とする。
炭治郎は、禰豆子、そして鬼でありながら無惨に反抗する珠世(たまよ)、愈史郎(ゆしろう)と共にこの2人と対決した。最初は、不自然な軌道を描いて襲い掛かる朱紗丸の手毬に翻弄されていた炭治郎だったが、愈史郎が視覚を貸したことによって矢琶羽の矢印が見えるようになったところから反撃を開始。修行によって身につけた「水の呼吸」から繰り出される剣技を駆使して矢印の向きを変え、矢琶羽の首を断つことに成功する。一人残された朱紗丸は徹底抗戦の構えを見せたが、珠世の力「白日の魔香」によって無惨の名を口に出したとたん、正体の発覚を嫌う無惨によって体内の細胞を操られ、始末されてしまう。
響凱(きょうがい)は、過去に「十二鬼月」として「下弦の陸(六)」の座に就いていたものの、その座から転落した鬼。舌の鬼、角の鬼と共にとある屋敷を巣にしており、肩、腹、足など、体の各所から生えた鼓を打つことによって、部屋を回転させたり、獣の爪痕のような斬撃を放ったりできる。炭治郎と我妻善逸(あがつま ぜんいつ)は産屋敷(うぶやしき)家の指令で3人の鬼が住む家を訪れ、兄を鬼にさらわれた子どもたちを保護。彼らの兄を助けるために炭治郎は屋敷の中へと足を踏み入れ、鬼殺隊の一員である嘴平伊之助(はしびら いのすけ)と出会い、共に響凱と遭遇する。
家の外で子どもを守っていた善逸は舌の鬼の襲撃を受けるが、「眠ると強くなる」彼ならではの力を発揮して舌の鬼を撃破。さらに伊之助も角の鬼と遭遇し、一撃で相手の首を刈り取って脅威を退けた。残る炭治郎は、家の中で子どもたちの兄を発見。彼は鬼の力を増す「稀血」と呼ばれる特別な血を持ち、それを嗅ぎ付けた鬼たちにさらわれたのだった。彼らを危険から遠ざけるために、怪我をおして1対1の戦いに挑む炭治郎。響凱は鼓を連打して部屋を回転させながら多数の斬撃を放ち、炭治郎を追い詰めようとする。しかし、炭治郎は自らを鼓舞しつつ戦いの中で「呼吸」のコツをつかみ、わずかなスキをついて響凱の首を断つことに成功した。
「下弦の伍(五)」の座を与えられていた累(るい)は、細く頑丈な蜘蛛の糸を繰り出して自在に操る、蜘蛛の鬼だ。那田蜘蛛山を縄張りにする累は「家族」という関係に強いこだわりを持ち、彼が認めた配下の蜘蛛の鬼たちに父、母、兄、姉の役割を与えて操り、自分はその家族の末っ子として近隣の人々に恐怖を振りまいていた。操る糸は、捕らえた者をその意思とは関係なく思うままに操ることができ、さらに糸を自分の血液と組み合わせることで硬化させ、人体を切り裂く鋭さを持たせることも可能だ。
産屋敷家の命を受けた炭治郎、善逸、伊之助は、那田蜘蛛山に向かって累と対決する。炭治郎は持ち前の鋭い嗅覚で、伊之助は野生が培った感知力で見えにくい糸の存在を察知し、同士討ちを避けながら進むが、累の家族たちと遭遇して苦しい戦いを強いられる。後から合流した善逸も兄役の鬼の毒にやられ、3人それぞれが窮地に陥る中、義勇と、「蟲柱」の胡蝶(こちょう)しのぶが現れて伊之助と善逸を救助。一方、炭治郎、禰豆子と対峙した累は、兄妹の絆を目にして禰豆子を新たに妹役にしようとするが、当然のように彼らに拒否される。激怒して2人を殺害しようとした累だが、その場に駆け付けた義勇によって一刀のもとに首を落とされて死亡した。
6人が存在する下弦の月。その中でトップの「下弦の壱(一)」の座を手にしていたのが、眠り鬼の魘夢(えんむ)だ。無惨に絶対の忠誠を誓う魘夢は、不幸に苦しむ他者のゆがんだ表情を眺めることが大好きと語る陰湿な性格。目玉と口を備えた手を使い、強制的に人を眠らせて夢の世界に閉じ込める血鬼術を操り、無惨から血を分けられたことでその力をさらに増していた。
200人もの乗客が乗った蒸気機関車をまるごと乗っ取った魘夢は、炭治郎、善逸、伊之助、そして鬼殺隊の中でもトップクラスの実力を備える「炎柱」煉󠄁獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)を車内に誘い込み、圧倒的に有利な状況をつくり出して一行と対決。首尾よく4人を夢の世界に閉じ込め、幸せな夢を餌に従わせた無辜(むこ)の人々を使って炭治郎たちの精神の核を破壊し、廃人にしようとする。しかし、夢に違和感を覚えた炭治郎が、夢の中で自ら命を絶つことで強制的に覚醒し、敵の存在を看破。同じく目を覚ました伊之助と共に魘夢と対峙する。汽車全体を自らの体と化し、乗客を喰らって力を得ようとした魘夢だが、禰豆子、善逸、煉獄の奮闘でそのもくろみも失敗。協力した炭治郎と伊之助により、列車の一部となっていた首を切断されて死を迎える。