親が再婚したことにより、突然姉妹となった女子高生ふたりの日常を描く、ほのぼのメシ漫画。父親が再婚したことにより、突然同じ年の妹ができてしまったサチ。しかし、両親は世界一周の旅行に出てしまい、姉妹だけが家に残されてしまう。あやりは無口で視線が鋭く、何を考えているのかよくわからない。突然の同居生活に戸惑い、あやりとうまく接することができないサチ。ふたりの距離は広がるばかりと思いきや、突如両親から大きな荷物が届く。中に入っていたのは、生ハムの原木だった。
男女が結婚して夫婦になる。順に子どもが生まれればそれが兄弟となり、生まれた時から一緒にいた関係が生まれる。しかし、サチとあやりのように、突然兄弟関係になるというのも少なくはない。ある日突然、知らない人が同じ屋根の下に住み、親密に生活していく。そう考えると、サチの緊張や不安も共感できるだろう。特にあやりは緊張すると表情が硬くなってしまうので、初対面から打ち解けるのは難しい。そんな新米姉妹の距離を急激に近づけたのが料理である。サチは料理ができないが食べることが大好き。あやりは料理が趣味で、知識も豊富だ。何か気まずいことがあっても、話しにくいことがあっても、食事をしながらなら口にすることができる。ずっとひとりだったあやりと、お姉さんとして張り切るサチは、会話ができるようになっても、お互いのことを考えてか少しだけズレている。少しずつ姉妹らしくなっていくふたりの関係が可愛らしく、癒される。
同じ名前を持つ2人の男が、耐久二輪レースで世界の頂点を目指していくバイクレーシング漫画。沢渡鷹と東条鷹は、同日同病院で誕生し、同じ名前を持っている。成長した沢渡はバイクにのめり込み、奥多摩でストリートライダーをしていた。ある日、沢渡のヘルメットを被ったバイク仲間が事故で命を落としてしまう。遺体を発見し、病院に連絡したのは東条だった。サーキットレーサーをしている東条との出会いをきっかけに、沢渡はレースの世界へ飛び込んでいく。1984年9月から1985年7月までテレビアニメが放送された。
沢渡鷹と東条鷹、同じ名前を持ったふたりの物語だ。同日に同じ病院で生まれた、同じ名前の男の子だが、家庭環境は大きく違っている。沢渡家は母子家庭で、親子仲はとても良い。対する東条家は、東亜自動車を経営する社長一家。実母を失くしており、父と妹と一緒に暮らしている。明るく、仲間が多い沢渡と、知的でクールな魅力のある東条は対極の存在だ。性格だけではなくバイクに対するスタンスも大きく違っている。互いを意識するライバル関係になるとはいえ、水と油ほど相いれない存在というわけではない。お互いの実力を認めているからこそ、そこには確かな友情が芽生えるのだ。とはいえ、ふたりの関係はレースでのライバルであり友人、という簡単なものでは終わらない。沢渡と東条には出生にまつわる大きな秘密があるのだ。名前だけでなく、何かと共通点の多いふたりの鷹。成長し、バイク好きになったのも、もはや運命だったのだと思わされる。
戦国時代に活躍した7組の武将夫婦の恋物語を描く、オムニバス短編集。ウェブに投稿した漫画が注目を集め書籍化された。2014年3月にドラマCDが発売されている。後に勇名を轟かせることになる、織田信長が大うつけと呼ばれていたころのこと。美濃の斎藤家と織田家は婚姻を結ぶことになる。やってきたのは、斎藤道三の娘、帰蝶。彼女は信長に嫁ぎ、濃姫と呼ばれることになる。ある日、物見やぐらにいた夫の下にやってきた濃。帰れと突き放す信長に対し「妻は夫のがわにいるもの」と説き、心を通わせるようになる。
戦国時代の結婚というものは、お家同士のつながりを深めるもので、政略が主だった。とはいえ、当事者たちが相手を好ましく思ったり、夫婦らしくならなかったというわけではない。本作には7組の戦国武将夫婦が登場する。織田信長と濃姫、明智光秀と照子、柴田勝家とお市、細川忠興とガラシャ、立花宗茂と誾千代、前田利家とまつ、豊臣秀吉とねねという、戦国好きならば知っている名の多い夫婦ばかりだ。夫がどういう人物か、妻がどういう家柄で、何をした人なのか。歴史上起こった出来事を知っている人は多いが、その夫婦の実際の関係や、どんな会話をしたのかは誰にもわからない。表題作である織田信長と濃夫婦もすれ違いが起こる。そんなところは、現代と少しも変わらないが、お互いの感情だけで事が済まないのが戦国時代の男女関係。だからこそ義務や打算ではない相手を想う感情が見えた時、より一層ときめいてしまうのだろう。武将たちの初々しい一面も見られ、思わずにやりとしてしまう。
超一流の腕を持つイケメン肛門外科医と、彼の下に押し掛けた女性医師との同居生活を描くラブコメディ。掲載誌休刊に伴い2008年に完結。『おしり愛—診察中—』とタイトルを改め、連載された。雨城麻子は大学病院に勤める医師だったが、超一流の肛門外科医である久楽武童(くらくぶどう)の元で腕を磨くべく、久楽病院へとやってくる。しかし、日々の業務は病気入院中の看護師の代理作業に加え、久楽の日常生活の世話と、医師の腕とは関係のないことばかり。私生活ではダメ男である久楽に、麻子はいら立ちを募らせていた。
患者の心に花を咲かせる、イケメン肛門外科医がヒーローである。イケメンに肛門を覗かれて嬉しいか否かはさておき、腕は超一流なので、顔とは関係なく患者の信頼も厚い。麻子は医師としての久楽を尊敬しているが、私生活では何もせず、麻子に任せっきりという態度にイライラとしている。麻子は思い込んだら一直線というような猪突猛進型で、素直な性格をしている。腹立たしく思っているとはいえ、指示された仕事をしっかりとこなしているところからも、真面目な性格であることが窺える。ごみの分別もきっちり一つずつ確認するような麻子と、肛門のこと以外はまったくダメな久楽。お互いに足りないところを補える、よい関係だ。麻子は久楽を尊敬しているのだが、物語当初は尊敬と憧れが強く、恋愛までは至っていない。久楽医院の医師コンビ、近所にあったら通ってみたくなる。
同棲生活8年になるカップルの日常を、男女両方の視点で交互に描いていく恋愛ザッピングストーリー。町田りつ子と野々山修一は高校三年生の冬に交際を始めて10年、同棲を始めて8年になるカップル。結婚してもおかしくない時間を一緒に過ごしていて、お互いの性格や好みもわかっているが、結婚には踏み切れない。同棲生活の長さに疑問を持たれることが多いりつ子は、説明が面倒だと結婚してしまおうかと考える。しかし、些細なことですれ違いが起きると、本当に結婚できるのだろうかと、足踏みをしてしまうのだった。
結婚とは、新しい家庭を築いていくものだ。男女が一緒に生活していれば、いつ結婚するの、などと言われるものだし、当事者も意識することだろう。しかし、何事もタイミングである。りつ子と修一は決定的なタイミングを逃しており、恋人のまま8年一緒に生活している。機嫌が良いとき、悪いときの距離の取り方や仲直り方法、遠慮のなさから、夫婦よりも夫婦らしいと感じるだろう。しかし、夫婦と恋人とではまとっている空気が違う。やはり、りつ子と修一は夫婦ではなく長く一緒に暮らしている、仲の良い恋人なのだ。男性目線で見るか、女性目線で見るか。目線の違いで物語の印象は変わってくるだろう。互いの考えがわかるからこそ、関係を一歩進める結婚という壁が、簡単なようで乗り越えるには意外と高い壁であることが窺い知れる。内心では色々と考えているものの、ふたりの関係は穏やかで、のんびりとしていて心地よい。急がなくてもいい、迷いながらも一緒にくらすふたりを見守りたい。