闘牛士を目指すひとりの少女の成長を描くヒューマンドラマ漫画。スペインの少女チカは同性の恋人、マリアが妊娠したことでその裏切りを知り、自暴自棄となって死を選ぼうとする。そんな時、チカは闘牛士のマネージャーをしているアントニオと出会い、闘牛士になることを決意。それは自分が闘牛士として華々しく死ぬ姿を、マリアに見せつけたいと願ったためだった。だがチカは闘牛士の過酷な世界で、自分を見つめ直していく。
女性闘牛士という、日本人にはあまり知られていない世界を描いた物語。伝統的興行で死の危険もある催しの「闘牛」。チカは元恋人に自分の死を見せつけるため、危険な闘牛士の道を進むことに。彼女は育った家庭環境のため承認欲求が強く、失恋のショックで破滅願望を抱いてしまっていた。だが、チカはアントニオの指導の元で闘牛士の厳しい世界を知り、やがて「Golondrina(スペイン語で「つばめ」の意)」の名で闘牛士としてデビューする。最初は散々な成績であったが、経験を積んで徐々に名を上げていくチカ。だが彼女はライバルの闘牛士が負傷し、死ぬことも闘牛を続けることもできなくなった姿を目の当たりにして苦しむ。その中でチカは、闘牛士としての自分を見つめ直していく。
伝説のイキモノ「ケンタウロス」が人間世界で生きる姿を描いた、オムニバス形式のファンタジーギャグ漫画。第1話は、馬具メーカーの営業で働くケンタウロス「健太郎」の物語。田舎から都会へ就職した健太郎は、慣れないことも多く、先輩に注意されることも多い。だが風邪をひいた時にお見舞いに来てくれたりする先輩を見て、健太郎は彼のような営業マンになろうと奮闘していく。
本作は「働くケンタウロス」がテーマの短編集。サラリーマンから、蕎麦職人、靴職人、ファッションモデルなどさまざまな職に携わっているケンタウロスと人間の織りなす物語を描いている。本作に登場するケンタウロスは神話と同じように、上半身が人間で腰から下が馬になっている半人半獣の生き物だ。彼らは人間に近い性質で、馬刺しも食べるし寝る時は藁ではなく布団を使用する。だが人間より遥かに長い寿命を持っているため、人間との時間感覚がずれていることが多く、意思疎通に齟齬が出ることも。コメディタッチな物語が大半だが、上半身だけ「人間」として使われることに悩むモデルのケンタウロスのエピソードではそのままの姿の美しさについて触れられるなど、半人半獣の魅力に溢れた物語になっている。
バツイチの妙齢女性と男子大学生の微妙な距離感から始まる歳の差ラブストーリ漫画。村田チカは大学の食堂で働いている35歳バツイチだが、ビジュアルにはそれなりの自信があった。そんなチカは自分が担当するうどんを毎日のように食べにくる学生、木野が気になっていた。一方、木野もチカを意識していたが、彼女が担任である田中真臣の元妻であることを知る。
タイトルの読み方は「うどんのひと」で、「学食のオバちゃん」と「学生」の恋物語。チカは結婚前に美術モデルをしていた美女。それがきっかけで大学の油絵科で教鞭を取る真臣と知り合い結婚した。だが真臣の飄々とした性格についていけず離婚。しかしその後も友人として付き合いがあり、真臣の紹介で大学の学食で働くことに。そこで自分の担当するうどんを毎日のように食べにくる油絵科の学生の木野と出会った。お互いに意識するものの、チカは35歳と21歳の年齢差に、木野はチカが真臣と今でも繋がりがあることに戸惑い近づけずにいた。そんな中、木野はチカを意識したようなうどんをモチーフにした絵を描いていく。やがてふたりの関係を心配した真臣がそれぞれに気持ちを問いかけ、ふたりの関係は進展する。
若きオーダーメイド靴職人と彼の店を訪れる客の物語を描いたヒューマンドラマ漫画。東京にあるオーダーメイド靴店「IPPO(いっぽ)」。まだ22歳の若者である店主、一条歩(いちじょうあゆむ)は、名の知れた靴職人の祖父の元で12歳の頃から修行を積んだ一流の職人であった。一足30万円からという高級店にも関わらず、人生の「新たな一歩」のために、彼の靴を求める者たちが店を訪れる。
オーダーメイド靴職人を題材にした物語。主人公の歩は12歳の時に両親が離婚し、イタリアにいる祖父フィリッポ・ジェルリーニの元へ。祖父はイタリアの靴ブランド「ジェルリーニ」の創始者で腕利きの職人であった。歩自身の希望もあり、歩はジェルリーニで靴職人の修業をすることとなった。その後、一人前の職人となった歩は祖父との約束で東京に「IPPO」という自分自身の店を構えた。本作ではオーダーメイド靴の魅力やこだわりを描きつつ、それを求める人の人生について描かれる。のちに歩にとって特別な存在になる足立結(あだちゆい)も、新たな人生の「一歩」のために店を訪れた。結はモデルだったが事故で片足を失い、デザイナーとしての再出発を目指していた。
北条司の大ヒットアクション漫画『シティーハンター』のスピンオフ漫画。名物キャラである「海坊主」こと伊集院隼人を主人公にした人間ドラマ。スキンヘッドのいかつい外見で海坊主というあだ名で呼ばれている男、伊集院隼人。元傭兵である海坊主の表の顔は喫茶店のマスターであった。そんな彼の店に悩み相談から猫探しまでさまざまな依頼が舞い込む。
海坊主こと伊集院隼人は原作『シティーハンター』の主人公である裏社会のスイーパー(始末屋)冴羽獠の同業者で、悪友でもある。原作の裏社会を舞台にしたアクション作品ではなく、表家業である喫茶店を舞台に描かれる人情物である。時代設定は現代となっていて、連載当時だったバブル期は遠くなり、SNSなども登場する。今も相棒の美樹と共に喫茶店を切り盛りする海坊主。スキンヘッドにサングラス、大柄マッチョの強面な外見に反し、人情に厚く店を訪れる者たちに親しまれている。本作ではそんな海坊主が町を歩くお年寄りの荷物を持ってあげたり、店の常連の愚痴や悩み相談を受けたりする日常が描かれている。また子どもに頼まれた猫探しのために薬莢ホルダーに煮干しをさして歩いたり、変装で怪しげな銅像になったりとコミカルなシーンも多い。