F1レーサーを目指す主人公と、国政進出を目論む父の対立を描いたレース漫画。主人公の赤木軍馬は、いわゆる庶子であり、財閥の総帥である父に反発し、無軌道な暴走行為を繰り返していた。やがて勘当同然に赤木家を追われた軍馬は、偶然出逢った自動車教習所の教官である小森純子と、幼馴染みである大石タモツの協力の下、レーサーへの道を歩み始める。
主人公の赤木軍馬は、まさに本能型のレーサーの典型ともいえる人物だ。短気で喧嘩っ早く、自分勝手な性格の彼は、周囲と衝突を繰り返すトラブルメーカー。その一方で、走る電車の窓から広告の文字を全て読み取れるなど、類い希な動体視力の持ち主だ。免許取得前から改造トラクターで暴走してきた軍馬は、飛び入りで参加した草レースで、ドライバーとしての才能の片鱗を見せる。やがてその才能を開花させた彼は、モータースポーツの頂点であるF1にまで登りつめる。本作のもうひとつの軸となるのは、赤木財閥の総帥で国政進出を目指す父・総一郎と軍馬の対立。似た者同士故、激しくやり合う親子関係の行方も本作の大きな見所だ。
イギリス国籍の日本人レーサーが、モータースポーツの最高峰であるF1グランプリで活躍するレース漫画。主人公のケンこと赤馬研は、レース中に観客を巻きこむ死亡事故を起こしてレーサーを引退し、メカニックに転身していた。そんな彼を、F1の日本のチームがレーサーに抜擢する。オーナーである会田の奇策により、走りへの情熱を思いだしたケンはレース復帰を決断する。
本作は1970年代を舞台に、当時のF1界とフィクションを巧みに融合させたユニークなレース漫画だ。主人公や彼が所属するサンダーボルト・エンジニアリングは架空の存在だが、それ以外のF1チームやレーサーの多くは実在のもの。ニキ・ラウダやマリオ・アンドレティなど、伝説的なドライバーたちが実名で登場する。彼らが駆るフェラーリやロータスに戦いを挑むというストーリーは、まるで未来のF1事情を予兆したかのようだ。また、輸血用の血液を届けるため、F1マシンで公道を疾走するといったフィクションならではの展開も楽しめる。
レシプロ飛行機によるエア・レースを舞台に、突然チームを託された青年の奮闘と成長描いたレース漫画。主人公のツグオ・クロガネは、半年前から何度も猛スピードで舞う飛行機の夢を見ていた。そんな彼に、夢で見た飛行機の写真と共にアメリカ行きのチケットが届く。アメリカに向ったツグオを待ち受けていたのは、思い掛けない祖父の遺言と全く未知のエア・レースの世界だった。
本作で描かれるレーサーは、レシプロ機でスピードを競うエア・レーサー。第二次大戦時のレシプロ機がアメリカでは現役で飛んでおり、愛好家たちによるレースが盛んに行われている。物語で描かれるリノ・エア・レースは、1964年から始まった実在する大会で、現存するエア・レースの中でも最古の歴史を誇る一大イベントだ。主人公の祖父であるジュード・スウィフトは、この大会に参加するべく、30年をかけてサイドワインダーというレシプロ機を再生してきた。この機体こそ、ツグオが何度も夢で見た飛行機だ。ツグオは、志半ばで急逝した祖父の遺志を継ぎ、エア・レースチーム「スウィフト」と共に、未知の世界に挑んでいく。
ドリフトと走りの魅力に目覚めた女性の活躍を描くカーレース漫画。主人公の志濃涼子は、高校時代は陸上部に所属していたスポーツ少女だったが、アキレス腱を断裂し、陸上競技を断念せざるを得なくなる。そんな時、車を手足のように操り、華麗にドリフトを決める女性を目撃し、その姿に心を奪われる。やがて走りの魅力に取り憑かれた涼子は、モータースポーツにのめり込んでいく。
モータースポーツの世界では、女性レーサーは珍しくない。かつてF1に女性ドライバーが参戦したこともあり、アメリカのモータースポーツの最高峰である、インディカー・シリーズで優勝した女性もいる。彼女たちのように男顔負けの走りを見せる志濃涼子は、プロではないが、公道の峠で腕を競い合う走り屋となり、やがて「音速の美少女」の名をはせる。そして涼子は、走り屋の日本一決定戦「THE TAIMAN BATTLE」に参加し、様々なライバルたちと鎬を削る。また、レースの模様もさることながら、車に情熱を燃やす個性豊かな人物が織りなすドラマも必見だ。
競艇レーサーの道を選んだ少年の成長を描いた熱血レース漫画。主人公の波多野憲二は、プロ野球選手を目指し高校まで野球に打ち込んできたが、小柄な体格ゆえ挫折をしてしまう。そんな彼が見つけた新たな夢は、競艇選手になること。見事入所試験に合格した波多野は、競艇界の頂点を目指す。
動力を用いるレース競技は、男女の差が出にくいこともあり、男性と女性が競い合うケースも少なくない。中でも競艇は女性の進出が目覚ましく、年間数千万円もの賞金を稼ぐ女性レーサーも実在する。物語においても、主人公の波多野憲二の同期に青島優子という女性選手がいる。そのため、選手同士の恋模様が描かれており、これも面白い要素のひとつだ。また本作は、実際の競艇事情ともリンクしていている。例えば、選手それぞれが自分でボートのプロペラを管理し、改造を認める「持ちペラ制」のエピソードが描かれている。選手が抱える細かい問題にも鋭く切り込んだ物語は、読み応え十分だ。