読むとお腹が空く料理男子漫画37 Pt.

本作の料理男子は、元・極道の龍。かつては、その筋では知らぬ者がいない、武闘派の極道だった。しかし、龍は突然、極道の世界から姿を消してしまう。龍の部下だった男・雅は、専業主夫として生きる龍の、あまりにも変わった姿に落胆。龍は、暴力では世界は変えられないと雅を諭す。しかし直後、龍が作ったコロッケを怒りに任せて叩き落とした雅に、鉄拳制裁を下す。読みながら、「暴力反対じゃなかったのか」とツッコミを入れずにはいられないシーンだ。龍が、肉屋の前でトンカツの調理法を話しているだけのシーンも、なぜか物騒に見える。可愛らしいキャラ弁当を作って写メをする。そして猫と戯れる。極道然とした見た目と、主夫らしい行動のギャップがキュートな、龍の「主夫」っぷりが楽しめる作品だ。

本作の料理男子は、クッキングパパこと荒岩一味。彼が料理をするようになったきっかけは、妹・荒岩味知を喜ばせるため。荒岩兄妹は幼い頃に父を亡くし、母は女手ひとつで2人の子どもを育てていた。そのため、食事はいつも出来合いの惣菜。それを嫌がった味知のため、一味は料理をするようになったのだ。味知は、兄の作る料理に歓喜し、それが一味のやる気にも繋がった。連載開始当時は、現在よりも、男性が家事をすることが少ない時代であった。そのような時代背景の中で、いかつい見た目に反して料理が得意で家庭的な一味は、意外性のある男性キャラだったといえる。当初は、一味が料理をしていることを義理の両親にさえ伏せている場面もある。しかし、現在は家族みんなで料理をするシーンも多い。

本作の料理男子は、それぞれの事情でシングルファザーとなった、千石哲と晴海昌弘。千石は、家事こそできるものの、短気で、子どもから泣かれてしまうことも多い。晴海は、優しく温厚だが、多忙過ぎて家庭を疎かにしてしまったことが原因で、妻に逃げられた。それゆえ、2人はこれまで家事をしたことがほとんどない。また、晴海はかつて、担当していた漫画家の自殺を止めようとして逆に傷つけてしまったことが原因で、刃物が怖い。料理もできないため、出来合いの総菜ばかりで息子に申し訳ないと、罪悪感を覚えていた。そんな2人が、協力して家事や育児をすることに。特に、料理を一手に引き受ける千石は、子どもたちが苦手なものでも食べられるように様々な工夫をする。食卓を囲む大切さと、親としての成長物語が盛り込まれた作品だ。

本作の料理男子は、料理をこよなく愛する極道・紺田照。組事務所にカチコミが来ても、敵対する極道の持つ銃を見てレンコンを連想する。何事も料理に繋げて考えるという、独自の感性の持ち主だ。紺田は、常に料理のことを考えているため、非常事態においても冷静さを失わない。そのクールさで、周囲の者を救ったことは数知れず。組長の命を、カスタードクリームの特性を利用して護るエピソードもある。若輩者ながら着々と組での株を上げている紺田。実は18歳の少年で、身分を隠して高校に通っているという一面を持つ。また、本作に登場した料理は、実在のレシピ投稿サイトに「紺田照」の名義でアップされている。プロフィール欄には18歳高校生、趣味は料理と書かれている。探してみるのも一興だ。

本作の料理男子は、大学で生徒たちを食育する結城玄米。彼が生徒たちに最初に教えたのは、歴史ある日本食「ぬか漬け」だ。ぬか床は手入れが必要で、手間もかかる。丁寧に造ることで、素晴らしいぬか漬けが完成する。さらに玄米は、農学部の畑を開拓し、野菜作りにも精を出す。料理だけにとどまらず、その素材を作るところから始め、生徒たちに食べ物の大切さを教えていく。また、農環境を取り巻く問題についても言及している。食べることは喜びであり、美味しいものに出会えることは「口福（こうふく）」であると説く。その経緯があって、玄米の作るシンプルなお弁当も、とても美味しそうに見えるのだ。