超エリート高校を舞台に、両片思いの男女の恋愛頭脳戦を描いたラブコメディ。富豪が集うエリート高校・私立秀知院学園。学園を統率する生徒会副会長の四宮かぐやは、財閥の令嬢だ。彼女を支える生徒会長・白銀御行(しろがねみゆき)は一般階層でありながら全国の猛者と勉学で渡り合う頭脳の持ち主である。他の生徒たちから交際を噂され二人ともまんざらではない様子だが、お互い素直になれずにいた。2019年にテレビアニメ化、2019年に実写映画化。
恋愛に疎い素振りを見せるかぐやと、色恋は愚かと考える白銀。お互いに「付き合ってあげてもいい」と思いながら何もせず半年が経過し、その思考は「いかに相手に告白されるか」というフェーズに移行していた。ある日、書記の藤原千花が持ってきた映画のペアチケットを巡り、誰を誘うかで二人の争いは勃発する。「告白した方が負け」と考える二人は、当日偶然を装い映画館で出会い、無事にデートをすることに成功する。その後も、事あるたびに二人は告白するかしないかの頭脳戦を繰り広げるのであった。短いセリフの背後に隠される膨大な心理描写が面白く、ついつい空回りしてしまう二人が滑稽である。また、全く無意識ながら二人の恋路に影響を与える千花のキャラクターにも要注目だ。
推しアイドルの子どもとして転生した男女が、芸能界の荒波に揉まれるさまを描いたミステリーファンタジー。田舎の産婦人科医・ゴローは、患者の少女・さりなの影響で女性アイドルグループ「B小町」に夢中だった。ある日、ゴローの元にB小町のメンバー・星野アイが妊娠した状態で現れる。図らずも極秘出産に協力することになったゴローだったが、アイを付け狙うストーカーに殺害されてしまう。次に彼が目覚めると、なんと赤ん坊に転生していた。
ゴローは、アイの子どもである双子の片割れ、星野愛久愛海(あくあまりん)に転生していた。そして、双子の妹・星野瑠美衣(るびい)もまた、さりなが転生した姿であった。前世の記憶を持ち生まれてきた二人は、お互いの正体を知らないままアイの子供として幸せな赤ちゃん時代を過ごす。しかし、そんな日々は長くは続かず、アイはストーカーらしき男に刺殺される。十数年の時が経ち、二人は「星野アクア」「星野ルビー」と名乗り、それぞれの目的のために芸能界に飛び込んでゆく。推しアイドルの子どもに転生するファンタジーな側面だけでなく、ミステリー要素も多分に含まれているのが特徴だ。芸能界の裏事情もリアルに描かれており、その深淵を垣間見ることができるだろう。
音楽をきっかけに出会った男女のふれあいを描いた、杉井光原作の人気ラノベを赤坂アカがコミカライズ。主人公・桧山ナオは音楽評論家を父に持つ平凡な高校生だ。父の趣味であるオーディオ機器を直しているうちに機械いじりが得意となり、とあるガラクタ置き場を「心からの願いの百貨店」と名付け、時々訪れていた。この日もナオはガラクタ置き場でパーツを漁っていると、とある旋律を耳にする。音のする方へ向かうと、そこには古ぼけたピアノを弾く少女の姿があった。
少女はナオを見るなり拒絶反応を示す。だが、録音に使っていたカセットレコーダーが壊れてしまい、ナオに直してもらったことから心を開くように。別れ際、ナオは彼女がかつて天才ピアニストの名声をほしいままにし、突如姿を消した蛯沢真冬(えびさわまふゆ)であることに気づく。時は流れ、真冬が彼の高校に転入したことで再会を果たす。しかし、ナオが音楽鑑賞のために使用していた空き教室をなぜか真冬に占拠されてしまい、彼は教室を奪還すべくある方法で「勝負」を挑もうとする。本作は音楽の専門用語が多く使用されているが知識がなくとも読み進めることができ、知識を広げることができる。ラストの演奏シーンは圧巻で、音楽の魅力を肌で感じることができるだろう。
「世界の破壊」をテーマに、特殊な能力を身につけた男女が織りなすファンタジー。周囲から疎まれ厭世の道を歩む少年・深瀬クロは、かつて失った幼なじみの幻想と共に孤独に生きていた。とあるクリスマスイブの日、一人街を歩いていた彼は、同じく独りぼっちの少女・セラこと姫浦瀬良と出会う。その瞬間、目の前のクリスマスツリーから黒い謎の「獣」が現れ彼女を襲おうとする。すんでのところで彼女を救ったクロだが、セラは意外な反応を見せるのであった。
兼ねてよりヒーロー願望を抱えていたセラは、武器である爆弾を携えて「世界を救うために獣を追う」と言う。しかし、その正体はクロの破壊衝動が具現化したものであった。その事実を秘めつつクロは彼女と行動を共にするが、二人の前に「魔女」を名乗る少女・古砂夢(ふるすなゆめ)が現れる。夢は、二人は「ib(インスタントバレット)」なる能力者であること、世界に同じ能力者がいること、その中の誰かが街に核を積んだ人工衛星を落とそうとしていると告げる。二人は夢に導かれ、大きな運命の波に飲み込まれてゆく。二転三転するストーリー展開に、世界の破壊と少年少女の孤独というテーマが見事にマッチしている。黒幕は誰なのか、彼らを阻む敵の存在など、見どころたっぷりだ。