人の生血を吸う吸血鬼(バンパネラ)の兄妹を描いた、萩尾望都の代表作のひとつ。とある海辺の町に、ロンドンからやってきたというポーツネル男爵一家が訪れる。男爵夫妻にはエドガーとメリーベルという兄妹がいた。ポーツネル男爵一家は永遠を生きる吸血鬼、「バンパネラ」と呼ばれる存在だった。主人公のエドガーが、18世紀初頭から21世紀までの長い長い時間を、哀しみをたたえつつ渡り歩く姿が描かれている。
物語の始まりの舞台は1880年ごろのイギリスにある、古い港町。その地にやってきたポーツネル男爵一家は、抜きんでた上品さで話題になる。だがその一家は、実は人の生血を吸う吸血鬼(バンパネラ)、「ポーの一族」だった。家族を装っている彼らだが、ポーツネル男爵夫妻と、その子どもを名乗るエドガーとメリーベルの兄妹には、血のつながりがない。もともと人間だったエドガーとメリーベルは、森の中に捨てられていたところ一族の者に拾われ、子どもの姿のままバンパネラとなった存在だったのだ。容姿が変わらぬことから一つの場所に長く滞在できず、各地を転々としていた一家だが、バンパネラの正体を見破った医師の手により男爵夫妻とメリーベルは消滅させられ、エドガーだけが生き残ってしまう。エドガーは孤独を抱えながらも、悲しみとともに一人長い時間を生き続け、様々な人々や、同族の者たちと出会っていく。
フランス革命前夜のベルサイユを舞台に描かれるドラマティックな歴史ラブロマンス。主人公のオスカルは、男性として幼い頃から育てられてきた男装の麗人。彼女が仕えることになったのが、フランス国王ルイ16世の妃であるマリー・アントワネットだった。史実を基に、フランスの歴史に残る革命の騒乱と、宮廷を舞台に描かれる恋物語などがドラマティックに展開していく。そして革命の波は確実に彼女たちの元へも忍び寄っていく。
男装の麗人オスカルは、フランスの名門貴族ジャルジェ家の六女として誕生した。軍人の家系であるジャルジェ家には跡取りとなる男子が産まれず、男子を望む父によってオスカルは男として育てられてきた。軍服に身を包み、軍人として生きるオスカルを気に入ったマリー・アントワネットは、自らの近衛隊の隊長としての役目を与える。マリー・アントワネットに仕えながらも、彼女の浪費癖に進言するオスカル。民衆の怒りはやがて渦となり、ベルサイユへと押し寄せる。オスカルの幼馴染であり親友のアンドレとの恋、マリー・アントワネットとフェルゼンの許されぬ恋など、フランス革命をベースに絡み合う恋心も描かれている。
古代エジプトにタイムスリップしたアメリカ人の少女と、若きエジプト王との歴史ラブロマン。アメリカ人の少女キャロル・リードは、大富豪の父親を持つ16歳の少女。考古学を学ぶためのエジプト留学中、彼女は父が事業の一環として発掘していた王家の谷で新たに見つかった王墓の調査に立ちあうことになる。墓を暴いたことによりアイシスの呪いを受けたキャロルは、3000年前の古代エジプト王国へとタイムスリップ。そこから古代史をベースにした壮大な物語が展開する。
王墓の発掘に立ちあったアメリカ人少女キャロルは、アイシスの呪いを受けて古代エジプトへと飛ばされてしまう。キャロルが飛ばされた先は3000年前のエジプトで、発掘に立ちあった18歳の若き王メンフィスが統治する時代だった。金の髪に白い肌、青い瞳を持つキャロルに興味を持つメンフィス。キャロルの知識によって命を救われたことをきっかけに、ふたりは恋に落ちて行く。現代の知識と学んだ考古学によって、キャロルは「ナイルの娘」と崇められるようになる。他国の王国など、多数の人物がナイルの娘キャロルの能力を欲しがり、様々な人物に狙われることになる。様々な困難を乗り越えながらもメンフィスと結ばれたキャロルは、古代でメンフィス王と共に生きる覚悟を決めるのだった。
大正時代を舞台に、おてんばな大正乙女のヒロインとその許嫁が結ばれるまでを描いたロマンチックコメディ。主人公の花村紅緒(はなむらべにお)は跡無女学館に通う17歳のジャジャ馬娘。新しもの好きのはいからさんで、竹刀を握れば向かうところ敵なし。そんな彼女に突然紹介されたのが、許嫁だという伊集院忍(いじゅういんしのぶ)少尉だった。この縁談に納得のいかない紅緒は様々な騒動を引き起こすが、徐々に彼と心を通わせていく。
17歳の紅緒は跡無女学館に通うジャジャ馬娘。先祖は由緒正しく徳川家に使えた旗本で、竹刀を握らせれば向かうところ敵なしだった。美人とは呼べないものの、優しくおおらかな人柄で周りの人々から愛され、楽しい女学生生活を送っていた彼女に、ある日婚約者として陸軍の歩兵少尉である伊集院忍が紹介される。突然のことに戸惑い、縁談に納得のいかない紅緒は、状況を変えようと様々な騒動を引き起こすが、ハンサムで紳士な少尉と少しずつ心を通わせ、お互いに惹かれ合っていく。しかし激動の時代はそんなふたりを飲み込んでいき、紅緒と伊集院の恋は第一次世界大戦や関東大震災などの様々な歴史的事件に翻弄されていく。
現代から紀元前14世紀のヒッタイト帝国に連れ去られたヒロインと、ヒッタイトの第3皇子との恋を主軸に描いた歴史ロマンス。女子中学生の鈴木夕梨(すずきゆうり)は恋人とのデート中に、水溜りから突如現れた謎の手によって水の中に引きずりこまれてしまう。夕梨が引きずり込まれた場所は紀元前14世紀のヒッタイト帝国だった。呪いの儀式の生贄として殺されそうになった夕梨を助けたのは、第3皇子カイル・ムルシリだった。
呪いの力により現代の日本から紀元前14世紀のヒッタイト帝国へと連れ去られた女子中学生の鈴木夕梨は、時代を超えて彼女をさらった皇妃ナキアの手により儀式の生贄として首をはねられそうになる。だが、その寸前で彼女はヒッタイトの第3皇子カイル・ムルシリによって助けられ、日本に戻れるまでの間ユーリという名前でカイルの側室として身分を偽って過ごすことに。カイルの協力を得て日本に戻る方法を探す中、ユーリは王族間の陰謀や戦いに巻き込まれ、ナキアのたくらみによってカイルが戦場へと送り込まれてしまう。しかしカイルは、ユーリこそ戦いの女神イシュタルの化身だと称して彼女を戦へと連れ出し、その才覚で実際に戦功をあげていく。やがて様々な困難を乗り越えたユーリはカイルと結ばれ、ヒッタイト帝国の皇妃として生きることを選択する。