IT企業アップル社の創業者であり、その両輪として活躍したふたりのスティーブがいる。スティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアックを中心に、アップル社の成長とシリコンバレー企業の勃興を史実に基づきつつ、脚色を交えながら描いた革命と熱狂のITコミック。物語は1984年、世界に衝撃を与えたMacintoshの発表から1975年に遡り、ジョブスのガレージから始まったアプル社の軌跡を紐解いている。
本作に登場する著名人は、カリスマ経営者のスティーブ・ジョブスと、天才エンジニアであるスティーブ・ウォズニアックの2人だ。ジョブズは無謀とも思われるプランに周囲を巻きこみ、己の理念を達成する、ずば抜けた実行力の持ち主。しかし、彼の強引さは時に様々な軋轢や衝突も生んでしまう。一方のウォズニアックは、ソフトとハードの両面で類い希な設計センスを持つコンピューターエンジニアで、その技量から「ウォズの魔法使い」と称えられる。ウォズは温和な性格ながら悪戯好きでもあり、周囲から愛される好人物だ。対照的な性格の2人が、互いを掛け替えのない相棒と認めあっている。スティーブを中心とするアップル社は、多彩な人材を集めながら大きく成長していく。
実戦空手流派「極真会館」の創設者、“マス大山”こと大山倍達(おおやまますたつ)の波乱に満ちた半生を描いた格闘アクション劇画。物語は全六部に分れており、第一部から第三部までの作画をつのだじろう、第四部から第六部までの作画を影丸譲也が務めている。実話をベースにしたノンフィクションを謳っているものの、フィクション要素も数多く盛り込まれている。1973年にテレビアニメ化。
本作の物語は、終戦直後の日本から幕開く。自暴自棄になっていた大山は、愚連隊の用心棒として無為な日々を過ごしていた。そんな彼の人生は、吉川英治の著書「宮本武蔵」との出会いによって一変する。伝説の剣聖の生き様に感銘を受けた大山は、剣に生涯を捧げた武蔵のように、空手道を追求しようと決意。1年半に及ぶ山籠もり修行の末、空手の極意の一端に開眼した大山は下山し、戦後初の全日本空手道選手権に参加する。この大会で見事優勝を飾った大山だが、彼の心には空しさと大きな疑問が渦巻いていた。当時の空手は攻撃を当てない「寸止め」が基本。それでは本当の強さは磨けないと実感した彼は、より実践的な空手の形を模索していく。
増田俊也のノンフィクション小説「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」のコミカライズ作品。「鬼の木村」の異名で恐れられた伝説の柔道家、木村政彦の半生を描いたノンフィクションドラマ。物語は昭和29年(1954年)12月22日に東京蔵前国技館で行われた世紀の一戦、木村政彦対力道山の顛末と、それにまつわる謎をプロローグとして、木村政彦の波乱に満ちた人生を追いかけていく。
本作の主人公である木村政彦は、日本柔道選士権大会を3連覇した伝説の柔道家。第二次大戦による兵役のブランクを経ても、彼の強さはいささかも衰えず、戦後に開催された全日本選手権でも優勝し、13年連続制覇という大記録を達成する。その圧倒的な実力から、「木村の前に木村なし、木村の後に木村なし」と謳われた。そんな木村は苛烈な武士道精神の持ち主で、「負けたら腹を切る」と公言し、決死の覚悟で試合に臨んでいたことでも知られている。だが、その木村が力道山との決戦で、卑怯な裏切り行為によって惨敗を喫するという事件が起きた。本作はその事件に関わる謎を紐解きながら、木村の生涯を振り返っていく。
分野を問わず、荒木飛呂彦が興味を抱いた変人や偏屈な人の生涯を描いた人間賛歌コミック。扱う人物の選考にあたり、荒木は3つの基準を設けている。まず第一に、その人物が行ったことが人々に希望と安心を与える魅力があること。第二に、その行為を一生やり続けたこと。そして第三に、解釈はともかく、その人物が敵に勝利していること。本作には、この基準を満たした6人の人物の、風変わりだが魅力に満ちた物語が綴られている。
一般常識から外れた行動を取る人や、社会の規範とは相容れない人。いわゆる変人、偏屈な人は身近にいると厄介だが、その一方で興味をそそる対象ともなる。本書に取り上げられているのは、そんな変人たちの中でも極めつきの人物ばかり。彼らは単に突飛な行動をしただけではなく、社会的に大きな影響を及ぼしている。打撃王としてメジャーリーグ史上でも並ぶ者がないほどの実績を残しながら、激しい気性から一番の嫌われ者でもあったタイ・カッブ。革新的な天才術者であり、電流の規格争いで発明王エジソンに勝利したものの、偏屈が昂じたせいもあって不遇の晩年を過ごしたニコラ・テスラ。他4名もいずれ劣らぬ「変人」たちだが、それ故に彼らの物語は魅力的だ。
少女漫画の黎明期に活躍した女性漫画家、上田トシコの生涯を描いたノンフィクションコミック。昭和33年、女流漫画家の上田トシコは代表作である『フイチンさん』をはじめ9本もの連載を抱える上に、テレビ出演や雑誌のモデルまでこなすトップスターだった。物語はそんなトシコの活躍ぶりと平行して、彼女の過去の思い出を振り返りながら展開していく。
上田トシコは、小学校卒業までをハルピンで過ごす。そこは様々な民族が入り乱れる「東洋のパリ」と呼ばれた国際都市。裕福な彼女の家には、ロシア人の御者に中国人のコック、日本人の女中を雇っており、トシコの幼少期は国際色豊かなものだった。この経験が存分に活かされたのが、トシコの代表作『フイチンさん』だ。ハルピンで暮らす中国人の少女、フイチンを主人公とするユーモラスな作品だ。お転婆でおっちょこちょいだが、正義感が強くて素直なフイチンさんは、幼少期のトシコそのもの。物語は、そんなトシコが漫画家として成長していく様子をつぶさに描いていく。手塚治虫や長谷川町子なども実名で登場し、漫画史を振り返るという意味でも貴重な作品だ。