中学3年生の女の子・鈴木夕梨が、20世紀の日本から紀元前14世紀のヒッタイト帝国に、呪術の生贄としてさらわれたことから始まる王朝ロマンス漫画。ヒッタイト帝国の皇子、カイル・ムルシリにたまたま助けられた夕梨は、ユーリという名前で側室になる。そんなユーリが、幾多の困難を乗り越えてカイルと結ばれ、ヒッタイト帝国の皇妃になるまでを描く。1997年にドラマCD化。2007年に、作者・篠原千絵の手で番外編が小説化された他、2018年には宝塚歌劇団によってミュージカル化された。
本作の舞台となるヒッタイト帝国は、青銅器時代に先進的な製鉄技術を持っていたことで知られており、クズル・ウルマック川の周辺の地域を制して栄えていた。クズル・ウルマックとは、赤土が川の水に溶け込んでいるため赤く染まったように見えることから、トルコ語で「赤」を意味する“クズル”と、「河」という意味の“ウルマック”から名付けられた。本作のタイトル『天は赤い河のほとり』が示す「赤い河」とは、このクズル・ウルマックのことだ。作中には、紀元前14世紀のこの川の色にユーリが驚く描写も登場する。今日までトルコ共和国を流れる最も長い河として存在し続けているクズル・ウルマックのほとりで、時空を超えて結ばれるユーリとカイルの愛の物語をその目で見届けてほしい。
主人公のキャロル・リードが、現代のエジプトから古代エジプト王国へ、不思議な力でタイムスリップするヒストリカルロマン少女漫画。長きにわたって連載が続く、細川智栄子あんど芙〜みんの代表作品だ。若きエジプト王・メンフィスと、3000年もの時を超えて古代にタイムスリップして来たキャロルの恋愛模様を中心に、壮大なストーリーが展開される。
キャロルは、アメリカの大富豪の娘で、考古学を学ぶためにエジプト・カイロの高校に留学していた。物語が動き出すきっかけは、父親が出資して発掘していた王家の谷で、新たにメンフィス王の墓が発見されたこと。呪いにより目覚めたメンフィス王の姉・アイシスが、キャロルを、古代エジプト王国に連れ去ってしまう。さまざまな困難を共に乗り越えるうちにメンフィスと恋に落ちていくキャロルだが、彼女が持つ21世紀の叡智や、メンフィスの王位などを狙う敵から、次々とその身を狙われることとなる。古代エジプトを中心に、ヒッタイトやメソポタミア、ミノア文明やインダス文明なども多数登場。異国情緒に富んだ舞台で紡がれる2人の愛の行方に注目だ。
オスマン帝国に全てを奪われてしまった、亡国の王子の復讐劇を描く歴史創作漫画。16世紀初頭、コーカサス地方にあった小さな国・ミュチャイトレルの王に双子の子どもが生まれたところから物語は幕を開ける。姉のグルジアは賢く活発な姫として、弟のアゼルは気弱ながらも国民に愛される王子として、仲睦まじく育っていた。しかし、その幸せな日々は、敵軍の奇襲によって突然の終わりを迎える。生き残ったアゼルは、仇を滅ぼすため復讐の鬼と化す。
本作の舞台は、広大な地域を支配下に置き、多民族国家として大きな勢力を誇っていたことで知られるオスマン帝国。その強国に、ミュチャイトレルという架空の小国に生まれ育った主人公・アゼルが立ち向かっていく物語だ。ミュチャイトレルの民は、幼い頃から武に親しんで戦法を学び、「戦士の民」の異名を持っていた。しかし、オスマン帝国最強の軍と言われる「イェニチェリ」が奇襲をかけ、王も民も地も、全てを焼き尽くしてしまう。父や双子の姉、友たちの仇を討つため、気弱な王子から一転、復讐の鬼と化したアゼルは、祖国を滅ぼした帝国に復讐するため、憎き「イェニチェリ」の新兵として潜り込む。グルジアの命を奪った男・スレイマンが、オスマン帝国の若き新皇帝となった時、アゼルの反撃が始まる。
約3500年前の古代エジプトが舞台のヒストリカルロマン。古代エジプトの王「ファラオ」の座には男性が就いていた時代に、ハトシェプストは、王の“娘”として生まれた自分の運命を呪っていた。彼女が、「男装の女王」として、古代エジプト第18王朝第5代目ファラオの王座に就任するまでや、就任してからどのように国を発展させていったのかが描かれる。
幼い頃から男性に勝るほど活発だったハトシェプストは、王の子として、将来「ファラオ」になることを夢見ていた。しかし、女性はその座には就けない現実が立ちはだかり、泣く泣く王の妃となる。だが、敵を味方につけながら「ファラオ」の座に近づき、ようやく王座に就く。戦ではなく貿易によって国を発展させていくという目標を掲げ、古代エジプトの常識と運命と歴史を変えていく。紀元前15世紀の古代エジプト文明の描写の素晴らしさが大きな特徴となっている本作。背景や装飾品などの細部に至るまでが丁寧に表現されており、1コマ1コマに広がる鮮やかな古代エジプトの様子は必見だ。
古代エジプトのヘリオポリスで、最高神の地位に君臨していた太陽神・ラーを主人公に描いたシュールな世界観の4コマギャグ漫画。ラーの主な仕事は、頭の上にある太陽円盤でいつも世界を明るく照らすこと。よくわがままを言い、側近のトトやヘジュウル、専属の神官団たちを振り回しては気ままに過ごしている。王朝が滅びて信仰が減ったことで最高神の地位から陥落したり、太陽神なのに警察に捕まったりと、時には災難にも見舞われる。
本作の舞台・ヘリオポリスは、「太陽の都市」とも呼ばれた古代エジプトの宗教都市。現代のエジプトの首都・カイロの中心部にほど近い場所に存在していたとされ、巨大な神殿などの宗教施設やピラミッドの建設が盛んだった場所として知られている。主人公・ラーは、このヘリオポリスの空の上を飛行する聖なる船に乗って世界を照らしている太陽神。頭上に掲げている太陽円盤が電池切れしたり、光源を白熱灯からLEDに変えてみたりと、毎日にぎやかだ。ラーの他にも、エジプトの神々の神話や、葬祭殿などの現存する古代文化、人間がミイラにされて弔われるまでの過程など、古代エジプト民の生活に関する情報や豆知識も、コメディタッチで紹介されている。古代エジプトの文化や神話、神様の神々しい世界観が好きな人に、気軽に楽しんでほしい一作だ。